gooブログはじめました!

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

独身貴族

2016-10-07 23:02:32 | 日記
「俺は一生結婚はしない。生涯独身、生涯恋愛だ」と、A男は口癖のように言っていた。高校生の頃から言っていた。「そうすると、好きな女性を他の男にとられちゃうぞ」と誰かがからかうと、「そのときは仕方ない。いや、それでいいんだ。女にだって自由がある。大事なのは自由ってことなんだ」、A男は金持ちの次男坊だった。小遣い銭も潤沢で、私たち仲間にコーヒーやラーメンをよくおごってくれた。生涯独身には金がかかるような気がした。所帯じみたところから離れるためにはブルジョアであることが必要条件であるような気がした。だからA男は、その適格者かもしれなかった。妻も娶らず子も持たず…そこにはたしかに自由がありそうだった。私は大学を途中でやめているのでA男のその後については知らない。ただ、別の友人から、女房と2人の子供を連れたA男を見たという話を10年後に聞いたことがある。

家人の下の方の妹であるK子は、生涯独身だった。恋愛もあったが、相手は妻子持ちだった。最後の恋の相手は癌の発見が遅れて亡くなった。K子もまた、同じように癌がみつかったときには、すでに手遅れだった。このことは、以前に書いた。

独身である。会社の仕事もうまくいっている。男遊びはしない。そんなことは面白くもない。面倒なだけである。両親と3人で暮らしている。料理が上手な母親の手料理があるので、台所には立たずに済む。趣味は海外旅行である。ハワイは、国内の観光地より多く訪ねている。オシャレには熱心でない。大金を持っているわけではないが、経済的な不自由はない。酒好きの父親には高級酒をプレゼントする。母親には和洋の菓子だ。まだ大病をしていない。マンションのベランダで花を育てている。不自由があるとすれば、好きな猫を飼えないことぐらいか。これが私の娘である。独身貴族である。昔、A男が望んでいた独身貴族である。

コメントを投稿