最少不幸

国民の、あるいは世界の人々の不幸を、できるだけ少なくすることが政治の役目と、菅直人首相が所信表明演説で述べ、この最少不幸も流行語大賞の候補になるかも知れぬ。　　「腰痛がいちばん困りますね」とペインクリニックの待合室で、やはり腰の治療に来ている老婦人に話しかけられた。「いやぁ、内蔵よりはマシでしょう」と応えたが、本当にそう思う。たとえば腰の代わりに胃や腸が痛ければ、食事ももちろんアルコールも喉を通らないし、すぐに精神（気持ち）がダメになってしまうだろう。　腰痛は胃痛には勝るというのは、最少不幸論とは少し違うかも知れぬが・・・。　　家人が１泊の旅で強羅に行っている。私たちは昔から箱根が好きで、強羅も何度も訪れた。まだ子供が生まれる前、強羅に行き、帰り際に宿の前で家人が転んだ。「大丈夫か？」と訊く私に、家人は「ああ、よかった」と言った。あとできいてみると、雨になると思って安い方のスカートを穿いてきたそうで、これは不幸中の幸なのか、最少不幸だったのか。いま、午後７時、強羅の夕方も情緒的な暮れ方だろう。