前夜の残りの鮨(「ちよだ鮨」という店のもので、味が好いということを宣伝しておきたい)を、娘と2人で食べようとしていると、家人が、ジャムを塗ったトーストとコーヒーを持ってテーブルにつき、「朝はこれじゃないと」と言い、鮨の皿には見向きもしなかった。 家人も鮨は好物だが、やはり朝はパンなのだ。 結婚したばかりの頃は(家人は大の甘党なので)ジャムトーストは菓子みたいなものと考えていたが、どうも、そうではないらしく、パンはパンであるようだとわかった。私の祖父も同じで、糖尿の心配のない体質だったので、いちごジャムの粒々をいかにもおいしそうに食べていた。 最近は旅先の宿でも、朝食は和洋両方が用意されていることが多く、家人の報告によると、圧倒的にパン党が多いそうだが、それはたぶん、幼い頃から、朝食=パンに慣らされているからだろう。 私の朝は、週に5回は雑炊で、パンを口にするのは、昼食にときどきサンドウィッチをもらう程度で、端的に言うと、私の舌は1斤200円のパンと1斤1,000円のパンの味を区別することはできない。 午前2時か2時半か、神戸市の或るベーカリーでパンが焼き上がる。それはすぐに車で大阪の空港に運ばれ、羽田に送られ、また快速の車で大磯へ向かい、吉田茂氏の朝食に間に合わせる。 有名な話だが、これを最高の贅沢と言うのかもしれない。 パン好きも、上には上がいる。
「売国人間 鳩山由紀夫を日本から追放せよ!」とは、数週間前の週刊誌の見出しであって、これは鳩山氏が、尖閣諸島は日本のものではないと、どこかで発言したのを糾弾したものだが、この「追放せよ!」が、いかにも週刊誌らしい。 氏は、あの「最低でも県外(沖縄基地問題)」をはじめ、軽々な発言が多く、実弟の邦夫氏が「兄は、朝言ったことと夕方語ることが異なる」と証言するほどだから、マスコミにとっては、おいしいネタもとであるのだろう。日経新聞には、毎週水曜日か木曜日の朝刊に、『週刊新潮』と『週刊文春』の2つのウィークリー誌の発売広告が並び、刺激的な見出しの文字が列を作る。 ま、食事で言えば、オードブル的なものと言えるが、それだけで(コース料理を待つまでもなく)腹八分目ぐらいにはなるから、我が家では購読していない。 それにしても、あのキャッチフレーズの短文は巧い。特に、不安を煽るというか「あなたの○○は本当に大丈夫か?」的な作文には頭が下がる。 先日、地方の小さなで5人連続殺人放火事件が報じられた翌朝、起きて来た娘が「八ツ墓村じゃん」と言い、すると、数日後の週刊誌のトップ記事が、「平成の八ツ墓村事件」だった。娘は百貨店の広報部にいるが、その部署の大事な仕事に「報道(世に伝えること)」があり、そういうことを担っていると、やはりすぐに「八ツ墓村」が思い浮かぶのだろうと思った。確かに、「恐怖の○○」よりは、見出し効果がある。