Takepuのブログ

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香港の行政長官選挙決まり?

2012-03-21 10:33:15 | 時事
今月25日に選出される香港特別行政区のトップ、行政長官はどうやら梁振英・前行政会議召集人に決まったようだ。21日付香港紙「明報」は、「宗主国」の中国共産党中央の前統一戦線工作部長(統戦部長)の劉延東・国務委員(副首相級、中央政治局委員=序列17位)が香港に接する広東省深センを訪れ、高級ホテルの「紫荊山荘」で一部の選挙委員と面談し、梁振英氏への投票を呼びかけた、と報じた。一部の選挙委員が紫荊山荘に入っていくところを写真に撮られた、と報じている。

統戦部長とは、共産党とそれ以外の党外民主諸党派勢力との協調、融和を図る部署のトップで、海外での祖国統一工作なども担当する。国務委員としては教育、科学技術、文化・メディア、体育、香港・マカオ担当で、行政長官選挙の調整にはうってつけの人材だ。中国共産主義青年団中央書記処書記を務めたこともあり、胡錦濤系列の「団派」だ。

当初、大本命と言われていた香港特区政府ナンバー2だった唐英年(ヘンリー・タン)・前政務長官は、夫人の邸宅に違法建築の豪華な地下室があることを指摘され、当初否定していたが最終的に地下室の存在を認め、香港マスコミにたたかれ、世論調査でも梁振英氏に大きく水をあけられている。中国の中央政府も最初は唐英年を支持していたが、それは江沢民派、あるいは太子党の習近平・国家副主席の系列が推していたもので、これだけのバッシングで見放されたようだ。

香港行政長官選挙は、香港を舞台にした太子党と団派の代理戦争だとの話もあり、江沢民派の太子党が推す唐英年氏に対して、団派は梁振英氏を推す構図がささやかれており、梁振英氏側にも不正事案が取りざたされて、両者ともクリーンとは程遠い候補者なのだが、今回の薄熙来解任事件もあり、団派が香港でも優勢となったのかもしれない。

そもそも香港特区政府のトップ、行政長官は2012年からは香港の有権者による直接投票で決められるはずだったが、さまざまな圧力がかかり、今回は1200人の選挙委員による間接選挙で選ばれる。選挙委員も中国当局の息のかかったものが選ばれており、中国中央政府の意向が大きく選挙に反映される。

写真は香港返還前の96年12月に深センで行われた返還後の初代行政長官を決める選挙で、当選してあいさつする董建華氏。97年7月の香港返還以降、行政長官を務めた。当時の選挙委員は中国当局が指名した400人で、上海出身で江沢民・国家主席(当時)と関係のよい董建華氏が選挙前から行政長官になることは確定的だった。あくまでも儀式としての選挙だった。

今回の行政長官選挙では、2氏のほかに、民主党の何俊仁(アルバート・ホー)主席も立候補している。が、あくまでも自分たちが主張する民主化を迫るためのもので、投票するのは中国側によって選ばれた選挙委員であり、香港市民ではない。当選する可能性はない。

中国中央政府は、今回の行政長官選挙で誰も過半数をとれず再選挙になることのないよう、劉延東・国務委員を派遣して梁振英氏への集票活動を進めているようだ。
ただ、次回の行政長官選挙は香港市民による直接民選で行われる。そこで大きな揺り戻しがないように、香港市民にも一定の人気があり、なおかつ親中派の梁振英氏に乗り換えたとの見方が有力だ。