Takepuのブログ

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ザ・コーヴ見た

2010-08-21 11:15:50 | 映画鑑賞

和歌山県太地町で行われているイルカ追い込み漁を批判的に描いた問題作「ザ・コーヴ」を見た。イルカ漁をしていること自体知らなかったが、ボケーっと見ていると、製作者側の意図に乗っかり反捕鯨、イルカ愛護の方向に持っていかれる、きわめて稚拙で危険なプロパガンダ映画だ。

僕らの世代が子供のころテレビ放映されていた米国ドラマ「わんぱくフリッパー」に出演していたイルカ調教師のリック・オリバーをストーリーテラーとして映画は進む。「フリッパー」は賢いイルカが人間と協力して人命救助したり事件を解決する。オリバーはこのドラマの撮影に3頭のイルカがフリッパーとして使われていたこと、イルカは撮影でストレスがたまって胃薬を餌に混ぜて飲ませていたこと、そのはてに自ら呼吸をやめて「自殺」したこと--から、自らが調教師として「フリッパー」を有名にさせたことで、イルカに芸をさせる水族館が爆発的に増えて、イルカの自由が奪われてしまった、と自戒し、その後、調教師を辞め、イルカ愛護活動を行っているという。

シーシェパードや多くの欧米の反捕鯨活動家の主張のように、「鯨、イルカは賢い動物なので家畜にしない、殺して食べない」という彼らの食文化を、伝統的に鯨やイルカを食べる食文化を持つ地域と人々に押し付けている。うんざりだ。

途中で、魚市場にたくさんのマグロが並んでいる競りのシーンが映される。いかにもイルカをたくさん競り落としているかのように、誤解を与える確信犯的なシーンだ。もちろんマグロだが、魚をあまり食べない欧米人はイルカとマグロの区別などつくまい。

ただ、その文化の押し付けでは説得力がないと悟ったのか、映画は徐々にイルカは多くの水銀が含まれていて食用すると人体に害がある、という論理にすりかえてきている。何を食べようが余計なお世話である。

彼らにとっては、イルカが賢かろうが愚かだろうが、水銀を多く含もうが含むまいが、イルカを捕らえる文化を攻撃することに意味があり、前提条件は関係ない。

後半は、オリバーらが活動家たちを世界各地から太地町に呼び寄せ、芸を仕込むために生け捕りされた以外のイルカを殺す場面をなんとかして隠し撮りしようとする行程がドキュメンタリータッチで描かれる。観客はその行方をスリルをもってみていくような演出がなされている。太地町の漁民たちは、イルカを殺すという行為を後ろめたいと感じていて、他人に見せないように、海岸から見えない入り江でイルカを殺す、と映画では説明しているように仕向けている。

イルカを殺すところを見せないための立ち入り禁止の看板のように撮影しているが、実際は「落石注意」だったり、「鳥獣保護区域」の看板であり、イルカとは関係ない。日本語がわからない欧米人をだますのは簡単だ。

実際は無線カメラによる撮影許可のない盗撮であり、ドキュメンタリーとはいえない。たしかにイルカをモリで殺すシーンはショッキングだが、それは現在は行われていない漁で、昔撮影したものを挿入したという。農水省の役人がそのビデオを見て「いつ撮影したものか?」と質問したが、それに答えていない。都合の悪いことは描かない。
自分たちの主張を通すためにたくさんの捏造をしたプロパガンダであり、およそ映画と呼べる代物でもない。これをドキュメンタリーとして、第82回アカデミー賞長編ドキュメンタリー映画賞を贈った米国の審査員たちのレベルの低さにあきれてものも言えない。

見る価値のないものだ。ただ、そう判断するためには一度見なければならない。彼らだけなのかもしれないが、「活動家」と呼ばれる欧米人の知性の低さを感じた。