2021/12/14
「秋の蜂柘榴をめぐり鋼鉄の匂ひを含むけさの空なり[橙黄-21/σ][短歌]」
「鋼鉄の匂いを含む空というそれと柘榴と如何な関わり[][]」
「十月の地軸しづかに枝撓タワむ露の柘榴の実を牽ヒきてあり[橙黄-22/σ][短歌]」
「柘榴もぐ撓タワむも採れず苦労せり地軸その場で回り続けり[][]」
「ひややかにざくろの伝ふる透徹をたなそこに惜しめこころゆくまで[橙黄-23/σ][短歌]」
「ざくろの実ひややかな赤透きとおりいまそのことをただただ思え[][] 」
「菊枯るるまぎはを支那の書籍云ふ、死臭すなはち四方ヨモに薫ず、と[橙黄-24/σ][短歌]」
「菊作りする人ならば知りもせん枯れる間際は死臭のするを[][]」
「兇マガつ影走り去りたり透かしみる枇杷の一樹は黒く立ちたり[橙黄-25/σ][短歌]」
「うすき幕に Fin の出づるたのしけれ人の死にたる映画なれども[橙黄-26/σ][短歌]」
「よくわかる昔ばなしの『おしまーい』を聞いたうれしさ安堵に似るか[][]」
「早春のレモンに深くナイフ立つるをとめよ素晴しき人生を得よ[橙黄-27/σ][短歌]」
「ピチピチの檸檬にナイフさす乙女酸っぱく清し人生歩め[][]」
「むかひゐる尼僧はひとり透きとほる硝子にあまたの鴉とび交ふ[橙黄-28/σ][短歌]」
「出家した尼僧はひとり透きとおる鴉はここでも悪者である[][]」
「いづこにもをらざるわれがひとりゐる黒き梁ウツバリの下なるわれが[橙黄-29/σ][短歌]」
「脱け殻の存在として吾あるもこの梁のした生きてはいるが[][]」
「白綿のごとき夜雲を追ひゆける足元あらず山川あらず[橙黄-30/σ][短歌]」
「月夜かな雲がきれいで追い行ける足元もなく山川もなく[][]」