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「今月は あなた帰ると 楽しみに 大きな舟に 乗るように 信頼をして そわそわと わたし待てれば もみち葉が 散って行くころ 玉づさの 使いが言うに 蛍なす ほのかに聞いて 天地に 乞ひ祈ノみ嘆き 立って居て 行方判らず 朝霧に 思い迷って 杖もなく 八尺ヤサカの嘆き 嘆いても 足取りもなく いづこにか あなたいるかと 天雲が 流れるままに 射る鹿猪シシの のたれ死ぬかと 思っても 道がわからず 独り居て あなたを思い 泣いてばかりだ(#13.3344)」
「この月は 君来まさむと 大舟の 思ひ頼みて いつしかと 吾アが待ち居れば もみち葉の 過ぎて行きぬと 玉づさの 使の言へば 蛍なす ほのかに聞きて 天地を 乞ひ祈ノみ嘆き 立ちて居て 行方も知らに 朝霧の 思ひ惑ひて 杖足らず 八尺ヤサカの嘆き 嘆けども 験シルシを無みと いづくにか 君がまさむと 天雲の 行きのまにまに 射ゆ鹿猪シシの 行きも死なむと 思へども 道の知らねば 独り居て 君に恋ふるに 哭ネのみし泣かゆ(#13.3344)」
「葦辺行く雁の翼を見るごとに君が帯ばしし投矢ナグヤし思ほゆ(反し歌 #13.3345右二首)」
「葦辺いく雁の翼を見るたびにあなたつけてた投げ矢を偲ぶ()」
「返し歌防人の妻読める故長歌も併せ妻の歌だと(但シ或ヒト云ク、此ノ,短歌ハ防人ノ妻ガ作メル也。然レバ長歌モ亦此ノ同作ナリト知ルベシ。)」