暇つぶし日記

思いつくままに記してみよう

抗がん剤治療第三期3日目;青空マーケットに行った

2017年04月15日 18時21分46秒 | 日常

 

2017年 4月 15日 (土)

外気10℃ 晴れ

前二期に比べて服毒期3日目にしては気力があるので外に出ることにした。 前回までは4日目頃までは副作用の微熱が効いて気分が優れず家にいて寝たり起きたりの日々だったのが第三期目となると同じことをやってもそこには慣れがでるのか目の周りが微熱で軽く酔ったような気分がするものの気力はあって、だから別段用もないのに青空マーケットを歩こうと外に出た。 この間まで20℃を越すこともあったのにこの週末から1週間は10℃を越すぐらいだと天気予報は言っているのでその準備をして自転車に乗った。 当然手袋はつけるけれど走り始めるとハンチング帽のつばの両端から二本の冷気が両頬に当たり頬に沿って流れそれが徐々に痺れから痛みに変わるのを知覚した。 こんな経験は生まれて初めてだ。 慌ててマフラーを巻いて顔の下半分を隠して何とかことを得た。 これは毎回第一日目に点滴で抗癌剤を注入してその後病院から外に出るときにしたことと同じで多分外気20℃ほどであればこんな反応はなかったのだろうが外気10℃だと自転車に乗ると皮膚感覚では2度ほどは下がるからそれがこのような反応となったのだろう。

マーケットの端で自転車を駐めマフラーをはずして手袋のまま本屋を覗いたりマーケットの屋台を見て回りムール貝の揚げたのを歩きながら喰い、市立図書館に入って新聞を読んだ。 金日成生誕150年で北朝鮮が核実験を行いそれに対してアメリカが自衛のためにロケットを飛ばすというシナリオの西部劇のにらみ合いが今行われているのだそうだ。 金日成の孫が読めない、急にシリアを爆撃するようなトランプが艦隊をアジアに向ける先が読めないという不確定要素が満載のにらみ合いであるから緊張が走り、その間で中国が北朝鮮を弄びあぐねながらもこのカードを使って優位に立つなかで北朝鮮のもつロケット攻撃可能射程距離にはきっちり日本は入っている。 それだけなら周知のことでアメリカもどうということもないのだが北朝鮮のロケットの射程がカリフォルニアまで伸びるとペンタゴンの将軍は、ことが起こったらこちらの攻撃で北朝鮮の大部分は破壊できるけれどロケットのすべては掃討できるわけではないからかなりの数が韓国、日本に向けて発射されるだろうという。 

そんなことを読んでいるともう80を越すかというような老婦人が突然自分の鼻先に来て、あなたは私を存じないかもしれないけれどあなたの奥さんとは読書クラブの仲間で何回かお宅で会を開いているのにその時は大抵あなたは射撃クラブにいて顔を合わすことはないけどあなたのことは奥さんから聞いている、お加減はどうか、と挨拶された。 周りの新聞や雑誌を読んでいる老人たちに悪いのでひそひそ声で経過を話していると、あなたはご存じないかもしれないけれど私はあなたの義弟と一緒の大学病院の胃腸検査室で40年働いていた、という。 あんな男とよく一緒に仕事ができたですね、というと、周りから私たちは仲の悪い夫婦みたいだと言われていたと笑って自分の新聞に戻って行った。 

喫茶部でミント・ティーを求め盆に乗せて上階の開架図書部に行こうとすると隣町に住んでいる自分とほぼ同年配の日本女性に会った。 この人とはもう25年ほど半年に一度あるかないかあちこちで顔を合わせ殆ど立ち話で済ませるのだが昔名前を一度聞いたきりでその後忘れたままでことを済ませている。 近況を尋ねられたので簡単に先ほど老婦人に話したことをまた繰り返すのも何なのでこのブログのアドレスを知らせて読後コメントを呉れるように頼んで別れた。 上階の開架図書部で空いたテーブルを探してコートを脱ぎ椅子の背に掛けて静かな午後読みかけの本を書架から持ってきてミント茶でムール貝の脂を漱ぎつつ読んだ。 イタリアに住むオランダ人の作家のアフリカから押し寄せる避難民の問題をエッセーにしたものでこの間その作家の小説を買ったのだがまだ初めの章しか読まず図書館の短いエッセー集をここに散歩がてらに来るたびに一章づつ読んでいる。 

1時間ほどここにいてスーパーで買い物をする前に図書館の斜め向かいにあるジャズカフェーの土曜ライブを覗こうと陽の陰った少々寒い表に出るとそんな寒さでもカフェーの前のテラスで中年男女が寒そうにワイングラスを傾けている。 ドアの前には二三人の娘がタバコをふかしていてそこを分けて中に入るとかなりの客がいた。 若いギタートリオがスタンダード曲を演っていたのだが音大で訓練されたと思われる技術は持っているけれどフェンダー・ストラスキャスターでエフェクトをかけてロックトーンにした音色は普通元気なら落ち着いて聴くのだろうが今の病人では辛抱が続かないので10分ほどしてそこを出た。 セミ・アコ―スティックでエフェクトなしのストレートな音色ならもう少しいたかもしれない。 家を出る前にYou Tubeでこのバンドのものを何曲か聴いていたので惜しくはなかった。

広場に駐めた自転車に戻るとき青空市場のモロッコ青物屋で50セントのミントの束を一つだけ買った。 スーパーでは朝食のジャムとローストビーフ、セロリのサラダ、日本のオカキにジュースを買いマフラーをまた顔に巻いて自転車を漕いだ。 真冬でもこんな風に顔を覆ったことはないので妙な感じがする。 スーパーを出るとき周りの眼がこちらを一瞬見るのが分かる。 それは病院に入るときに同じようにマフラーを巻いた病人が出てくるのを観た時の反応と同じだ。 すぐに相手が抗癌剤治療中だということが自分には分かるし周りからすると少々異常に映るからだ。

夕食には美味いステーキがハーブや野菜を混ぜたクスクスと一緒に出てステーキを100gほど食べた。 薬の副作用で唯一プラスになっているのが味覚が鋭くなるということだ。 量は減るけれど質が高まるというのは悪くない。 殊に朝食の量を保つのがローストビーフの薄切りとジャム、濃いミルクティーである。 マイナスの副作用がなく喰えるというのは嬉しいことだ。 手術後は胃がなくなって暫くは苦労するのが分かっているからこれも今のうちでしか味わえないものとして心しなければならない。