コロナ感染予防のため、職場に加湿器(大きいの2台)が設置された。
そのうちの1台は私の島に近い場所にあるので、流れ的に私がタンクのチェックをする係になっている。
朝は2本のタンク(たぶん1本2.5リットルくらい水が入る)がからっぽになっているので、新人のI君とふたりで水汲みにいく。I君は普通出勤で8時30分には出社しているけれど、私は時差出勤のため9時からの勤務。だいたい8時45分には会社について、50分には紅茶を淹れて飲んでいる。
9時になると、I君が「朝の水汲みいきましょか」と声をかけてくる。
からっぽのタンクを2本持って、給湯室へ行く。気持ちは毎朝山羊の乳搾りに向かうペーターとハイジ(誰がハイジよ!って声もするけどまぁここは空想だから)。
タンクに水が溜まるまで、世間話をする。10日にIくんは入籍したばかりなので、ほほえましいのろけ話をきいている感じ。家電の話とか、お弁当の話とかいろいろする。そして水が溜まったら歩きだす。1本私が持つといっても、いやいや、僕が持ちますから、といって2本とも持ってくれるので、結局、私の仕事は加湿器のタンクの蓋を開けるだけ。なにもふたりで水汲みに行く必要もないといえばないけれど、まぁ、手伝おうという気持ちが大事。
率先して重いタンクを2本運ぶIくんとあとからついて歩く私は、ハイジを労わるペーターというより、ペーターがおばあさんを労わるという絵に近い気がする。妹的な労りというのとはちがう危なっかしさから守るという空気が漂っている。
私「あのさ、Iくんて、おばあちゃんっこだった?」
Iくん「はい、おばあちゃんっこでしたよ。いまも誕生日には必ずプレゼント買ってます」
私「やっぱり!」
Iくん「なにがやっぱりなんですか」
いたわりかたが自然すぎると思った。