ほよほよさんぽみちNEW

いつでも君のこと好きだったよ

塔10月号 2023

2023-10-10 22:48:45 | 日記
 きょう、塔の10月号が届いた。

 特別作品に出していたので、どうだったかなと思って開いたら、掲載されていた。
ちょうど、妹が来ていたので、「お父さんのことを詠んだ連作が載ったよ」といったら、
「読んで聞かせて」というので読み上げた。

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  燕

 初芝は子供の頃に住んでいた街なり父の搬送先の
 タクシーの窓から見える看板の土地の名前になつかしさあり
 カーテンをゆるく開いて父に会う 落花生のような父なり
 その洞を露わにみせて横たわる古木となりて目をつむりいる
 施設にゆくあの冬の日に父のもとを飛び立っていた透明の燕
 うまいと言い母の分まで食べていた最後に作った煮込みハンバーグ
 どうすればよかったのかドクダミが一面に白く白く咲いている
 この白は病室の白 父だけが飴色に細く息をしていた
 詰ったり励ましたりして晩年の父と過ごした週末ごとに
 寂しくて病院を抜けでてきた父をきつく叱った六年前は
 わたしらと一緒にいれば幸せで嬉しいことを知っていたのに
 ちいちゃんは勉強があるんやろという声を思えば涙こぼれる
 大股で父の時間が過ぎていく走ってももう追いつけないよ
 こんなにも細い道だったか妹と縦に並んで駅まで歩く
 自転車を四台連ねて参拝せし出雲大社大阪分祠
 妹が泣きそうだから見上げている初芝駅に燕飛び交う

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 途中で妹が泣き出して、私も読みながら泣いてしまった。

 どうにもならないことが生きていたらあるね。

コメント
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