このあいだ、知り合いに男の子が生まれて、姉妹で育った彼女は「自分から男の子が生まれたなんて信じられない。男の子の育て方のコツがあったら教えて」と戸惑っていたようだったので、ふうむ、としばらく考えた。
私も姉妹で育ったので、身近な男というのは父しかいなかったから、小さい男の子ってどうやって育てたらいいかわからなかった。彼女と同様、自分から男の子が生まれたことが不思議だった。それで、父（当時５０代）に
「男の子ってどうやって育てたらいいかわからんねん」と言ったら、
「そんなもん、父親といっしょに育てるんやからわからんかったらつれあいに訊けばええねん」
そりゃあそうだろうけど。父からのアドバイスはなんにもなかった。
それで、もうひとつひとつを経験して積み重ねていくだけだった。私は男の子をひとりしか育てたことはないけれど、しかも「おとなしいから育てやすかったでしょ」とか言われるけれど、驚きの連続だった。息子や息子の男の子の友達をみていて、少しずつ男の子というのは女の子とは別の生き物なんだなということがだんだんわかっていった。
まず、エネルギーをいっぺんに使いがち。計画的に使わない。駅から家まで歩くのにも、無駄にぐるぐる回ったり、ジャンプしてみたり、高いところにのぼってみたり。それで、いきなり電池が切れたように「もう歩けない」となる。え、あんなにエネルギーあったんなら最後まで歩ける分残しておけばいいのに。と、毎回あきれる。
あとは、気持ちがうまく口で言えなくて、あふれるものを抑えられないことがある。「事件」がおこったあと、しばらくして事情をきくと、なんだ、ちゃんと話してくれたらよかったのに、ということがよくあった。
自分のときとは違う。体重と秒速みたいに測るものさしがそもそも違うのだ。このあいだ、妹の教室（学習塾）に大雨警報がでているときに傘をささずにずぶぬれになってやってきた男の子がいて、「なんで傘ささんときたん？」って訊いたら、「どれだけぬれるかやってみたかった」と言ったらしい･･･
おもしろいなぁ。夫にその話をしたら、「気持ちはわかる」と言ったのでさらに驚いた。わかるんか････
「男の子って単純で繊細でおもしろいよ。コツは自分とは違ってもおもしろいなって興味持ってなんでも一緒にやることかな。知らなかった世界をみせてくれる扉だと思って楽しみながら一緒にとびこんでみたら世界が広がるよ」 と、件の彼女にエールのメッセージを贈った。
でもこれは子育てが終わって振り返っているから言えることで、そのときはそんな余裕はなかった。
実際、育てながら、男の子の繊細さに驚いたこともたくさんあった。ああ、こんなふうに育っていくんだな、と初めて知ることも多かった。自分の小学生時代を振り返ってみても、当時は「アホちゃう」とか言いながら友達と笑っていたことも、男の子はなにか伝えようとしてとった行動だったのかもしれない。いまから小学生からやり直せるなら、もう少し男の子に優しくできるのに、と思う。
