20代のころ、少しだけ絵を描いていたことがありました。
仕事、というほどではありませんが、結婚式の招待状を手書きで描いたり、プレゼントに添えるカードとか、アルバム(いまはもうアルバムに写真は貼らないかもしれないけれど)に貼った写真にコメントやタイトルを書くカードとか。
もうずうっとそんなこと忘れていたのですが。
きょう古くからの友達に会ったとき、「昔、ちいに描いてもらったカード、いま娘が気にいって使ってるよ」と言われて、ああ、そんなことをしていた時期があったなぁと懐かしく思い出したのでした。
娘さんはいま高校生で、友達にプレゼントする機会が多いそうです。
「これめっちゃ便利っていうてるよ」
「そんなにたくさん描いたっけ??」
「いっぱい描いてもらったよー」
忘れている。
どんなデザインだったか、どんな色を塗ったか、まったく記憶にないのです。
それだけでなく、私が書いた童話のタイトルをつけるときのことまで覚えていて、「あのとき迷っていたけど、夕暮れの道にしてよかったね」といわれて、迷っていたことを忘れていることを知りました。
更地になったら、まえにどんなものがあったかを忘れるように、すっぽりとなくなってしまった私の時間の一部分を覚えていてくれる友達がいて、よかったなぁと思ったのでした。