観測にまつわる問題

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分かり易い特許明細書の効用とIot時代の特許

2018-04-15 21:50:10 | 政策関連メモ
知的財産権、とりわけその中核である特許権に関する現在の問題点(コラム)(日本アイアール株式会社)

>自社製品(技術)を中国で模倣された場合に、自社の保有する中国特許権の侵害であるとして訴えても解決することが困難である。

>自社(日本企業)製品が、他社(特に米国企業)が保有する特許を侵害しているとして訴えられたとき、その製品に関して自社で基本技術を先に特許出願等していたにもかかわらず、米国企業側に反証できない。

>大学や公的研究機関の法人化に伴い、米国にならって、TLO(Technology Licensing Organization)の設立と展開が進められているが、技術移転、すなわち技術売買の実績は極めて乏しい。

>これら3分野での共通する問題点は、日本語で記述された発明技術、すなわち特許明細書がわかりやすく記述されていないことである。

>研究論文は研究成果の発表であり、当業者は、極めて限定された「当該技術分野」の研究者であり、それ相当の知見のある人たちである。つまり「科学・技術」の限られた特定の範囲内でのみ、理解されれば良い。一方、特許明細書は研究開発の成果と事業が結びついている必要がある。しかも当業者は様々な分野の人たちである。

>曖昧なでわかりにくい日本語特許明細書を、何とか改善しようという取り組みは、一部の公的機関等でも始まっているようです。

知的財産権の問題で検索して出てきたページですが、興味深い内容です。結局のところ、日本の特許明細書は限られた専門家や業界内だけで通じる内容になっており、それが特許権が上手く活用できていない原因になっているようです。日本の問題は技術力というより、説明力にあるという結論は頷けるものがあります。

勿論曖昧にも効用があって、分かる人には分かるというスタイルの方があるいは手間がかからないというメリットはあるかもしれません。ですが、それは中国で訴える時に敗訴する原因になったり、アメリカに訴えられて負ける原因になったり、経営者が読んでも分からないので売れない、例えば自動車業界と通信業界のような業界横断の協力が進まないということになるようです。

中国・アメリカの存在は大きいですし、特許の売買促進、通信と他業界の連携などこれからの課題を考えるに、日本がこれからも技術立国をやっていくならば、分かり易い特許明細書が重要になってくるという訳であり、そういう改善の取り組みは一部の公的機関で始まっているという内容でしょう(現状がどうなのかは知りませんが)。

IoT時代の特許、発明者保護か独占排除か(日経新聞 2018/4/15 17:00)

>和解金目的で特許侵害訴訟をしかける一部事業者の封じ込めを狙った米政府の対策などもあり、「米国の特許の取引総額は5年前の1割以下になった」(一色太郎・外国法事務弁護士)という。

>イノベーションを促進するために守るべきは発明者の権利か、新規参入の機会か。

個人的な感想ですが、方向性としては新規参入の機会を促進した方が良いと考えます。まず、これまで明らかに無駄な訴訟が存在しました。これに対して特許権が守られなかったがゆえにイノベーションのモチベーションが落ちたという事例が見当たらないようです。日本の事例を考えると、寧ろ売買が成立してもいないのに、技術は開発されてきており、特許明細書を分かり易くすることにより、まだまだイノベーションは促進される情勢なのであって、特許料が入らないがゆえにイノベーションが起きないというようなことを心配する必要はないと考えられます。

日本には技術力のある中小企業も多いとされますから、新規参入が進んだ方が良いとも考えられます。基礎研究は並行して進めるべきでしょうが、以前書きましたけどデンソーとか技術が分かる部品メーカーあたりが主導権を握る形の方が良いと思うんですよね(技術が分からないと投資の是非が分かりにくい訳です)。特許は広く使われると当然儲かりますし、逆にあまりに儲かり過ぎると(それだけで食べられる存在は)、逆にイノベーションを阻害する存在にもなりかねません。少なくとも日本のとる道ではないのではないでしょうか。勿論全く特許が儲からないでは、(通常)誰も新しい技術を開発しないだろうと思いますが、日本のみならず世界で強い会社は大体新しい技術を開発してきた会社なのであって、ある程度以上に儲かる状況であれば、技術開発しないというような選択肢を選ばないだろうと思います。

いずれにせよ、イノベーションが最大限に促進されるシステムが良いシステムでしょう。これに対して、そもそもイノベーションが促進されなくていいのではないかという仮定は勿論考慮する必要はないと考えます。停滞でも構わないと考える国は厳しい国際社会の競争の中で脱落する国だと考えられますし、そうした方向性を日本という国が選ぶことはないと考えられるからです。個人の生き方を否定する訳ではありませんが。


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