観測にまつわる問題

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中央構造線活断層系にまつわる誤解(伊方原発問題なし)

2018-03-16 14:25:18 | 政策関連メモ
最強の経済対策は原発再稼働だと訴えてきましたが、関電以外は中々再稼働が進みません。いろいろ考えていたのですが、まずは地元愛媛伊方原子力発電所の再稼働に取り組もうと考えました。再稼働が経済的に重要は明らかですが、やはり危険だと判断されるなら止めねばなりません。そうでないなら、お金の無駄もいいところですから、早めに再稼働するべきです。

伊方原発と言えば、中央構造線をイメージしますよね。危険ではないのかという印象があるのも無理はありません。「伊方原発 断層」で検索したら、こんな記事が出てきました。

600メートル沖に活断層か 愛媛大元学長らが見解 伊方原発(大分合同新聞 2017/09/06 03:01)

>四国電力伊方原発(愛媛県)のわずか600メートル沖に活断層がある―。小松正幸・愛媛大学元学長(地質学)らの研究者グループがこんな見解を発表している。四国電は地震対策で原発から約8キロ沖の「中央構造線断層帯」を重視するが、小松氏らは「沿岸の活断層が動き、付随してできた断層にすぎない」と指摘。四国電の地震想定は不十分だとして一帯の詳細な調査を求めている。

>一方、四国電は「発電所周辺の詳細な地質調査をしており、指摘された海域に活断層がないのを確認している。地震動の評価は新規制基準適合性審査で妥当性が確認されており、影響を与えるものではない」とコメント。小松氏らの見解は誤りだとする主張書面を同支部に提出している。

小松正幸・愛媛大学元学長(地質学)の言い分が本当ならこれは大変なことです。この記事は半年前の記事ですが、放置していい案件ではありませんね。ただ、四電は詳細な地質調査を行ったとしています。小松氏の言い分がもし正しいのであれば、四電はお取り潰しにしていいぐらいの不祥事です。詳細な地質調査で活断層も見つけられず、活断層でないものを活断層と言い張るような会社に原子力発電所を運営させる訳にはいきません。小松氏も思い切った見解を示したものです。

事の真偽を確かめるために「地質境界」で検索をかけてみました。中央構造線や活断層は馴染みの用語ですが、地質境界が良く分かりません(素人丸出しで申し訳ありません)。すると、出てきたのが以下のページです。

九州には中央構造線はない - 地質調査総合センター

>地層境界断層としての中央構造線(断層)は日本列島の長い歴史の中でできた地層の「古傷」であり、活断層群である中央構造線活断層系(四国〜紀伊半島西部)はその一部を使って現在活動している断層のことです(図1)。 専門家でもこれを混同している場合が多々ありますので、厳然と区別して使う必要があります。このため地層境界断層が地表に現れた断層線としての中央構造線と中央構造線活断層系はおおむね同じ位置にありますが、必ずしも一致しているわけではありません。


図1 中央構造線活断層系(産総研地質調査総合センター活断層データベース、基図は国土地理院の白地図)
色の違いは中央構造線活断層系を構成する各断層。地質境界としての中央構造線(断層)とは必ずしも一致しない。

産業技術総合研究所地質調査総合センターによると、やはり四電の言い分の方が妥当なようです。中央構造線活断層系は明らかに伊方原発から離れて存在しています。また、地質境界断層としての中央構造線は活断層群である中央構造線活断層系と混同され易いらしく、ご丁寧にも専門家でも混同している場合が多々あると指摘しています。小松氏はどうやら事実を完全に間逆に取り違えて新聞に出てしまったようです。幾らなんでもそこまで四電も間違えないだろうとは思いましたが、こうして事実を確認するとほっとしますね。

「中央構造線」で検索すると、中央構造線(ウィキペディア)が一番で出てきますが、ここに記載されている出所不明の図にある中央構造線は伊方沖合を通らず伊方原発を通っています。似ている名前ですが、ここを間違ってはならないはずです。また中央構造線が九州を通るような図になっていますが、これも地質調査総合センターによると完全に誤りです。



>1996年、高知大学などの研究グループによる、伊予灘海底にある中央構造線断層帯の調査によって、愛媛県の伊方原子力発電所の間近の海底に活動度の高い活断層2本が発見された。ここでは約2000年おきにM7前後の地震が起きると考えられており、M7.6の規模の地震も起きる可能性がある。

22年前の話ですが、これはどうなったんでしょう?何も無かったんでしょうね。小松氏の見解のニュースの件もそうですが、こんな危ない話があるとしたら、反原発的な情報を鵜呑みにする活動家の皆さんが黙っているはずがありません。去年の12月13日に伊方原発3号機の運転差し止めを命じた広島高裁決定がありましたが、阿蘇のカルデラ噴火などというあるかどうかも分からない地質学的危険を持ち出すまでもなく、四電が見つけられなかった活断層が伊方原発側の海底に存在していたら、伊方原発など再稼働どころではなく、廃炉騒ぎになっていたでしょう。

問題はこうした偽情報(としか思えません)が検索上位で簡単にヒットしてしまうことです。これでは原発に関する風評被害が消える訳がありません。疑いがあるとか可能性があるとかそういうことを考えることを否定するものではありませんが、どう考えても有り得なさそうな情報が、検索上位で何時までも居座り誤解を撒き散らす事態は残念なことです。

活断層が四電の想定通り伊方の沖合にあるのであれば(そうだと思いますが)、伊方原発の敷地や近辺に突然断層が生まれるような事態は基本的には想定しなくていいということになります。

伊方原発の地盤に関して、四電の地盤(敷地周辺の地質・地質構造)についての30pを参照しますと・・・

>敷地近傍には広く堅硬な塩基性片岩が分布し,敷地における深部ボーリング調査によって少なくとも深さ2kmまで堅硬かつ緻密な結晶片岩が連続することを確認しており,審査ガイドにおける「上部に軟岩や火山岩,堆積層が厚く分布する地域」ではない。また,敷地近傍に火山岩の貫入は認められない。

・・・ということですから、やはり当たり前ですが相当安全そうな土地に造ったのだと考えて良さそうです。深さ2キロまで「堅硬かつ緻密な結晶片岩」て何か凄そうな印象です。地震大国日本も広いですから、探せばいろいろな土地があるんでしょう。四国には火山もありませんから、基本的には大地震による津波をどう考えるかということで良さそうです。

伊方原発は佐田岬半島の北側に位置するので、南海大地震が来てもとんでもない大きさの津波は如何にも来なそうです。大体瀬戸内海で巨大津波とは聞いたことがありません。南海トラフ地震による伊方発電所への影響について(四国電力)を見ると、津波高さは3mと想定されており、敷地高さは10mになっています。

土地勘ない人のために書いておきますと、佐田岬半島は細長い半島に見えますが、海抜は200mほどあるそうですから(四国最西端!佐田岬へ美しい夕陽に会いに行こう♡ Travel.jp)、大津波が南側から襲ってくるということはまずありそうにありません。

なお、伊方原発と同じく瀬戸内海沿岸の地元松前町の津波到達シミュレーションを見ましたが、4.2メートルの津波が来る(大潮での満潮時の平均潮位1.8m+最大津波波高2.4m)ことになっていますが、2時間経って1メートル浸水するとかいうシミュレーションになっており、南海トラフ地震が起こったと想定しても、筆者が津波で死ぬことは万に一つもありそうにはありません。浸水は一大事ではあるんですが。


松前町 津波HZM 津波到達シミュレーション 7-8p

困ったことに「南海トラフ 伊方」で検索すると、あたかも伊方原発がソッコーで津波に呑み込まれるとでも言いたげな偽情報が上位でヒットします。サイテーですね。

さて津波に戻りますが、当然伊方原発沖合の断層が動いた場合を検討しなければなりません。

トピックス:1596年に発生した地震の伊方発電所周辺への影響について(四国電力)

>別府湾での断層は縦ずれ断層であるのに対し、伊方発電所に近い伊予灘の活断層(中央構造線断層帯)は横ずれ断層であり、この横ずれ断層の地震により、伊方発電所には海抜4.3mの津波の可能性があると評価しております。



本当に信用して良いのでしょうか?国土地理院のページを参照してみます。

活断層とは何か?(国土地理院)

>(2)いつも同じ向きにずれる
 活断層にかかる力のもとはプレート運動で、その運動の向きや速さは長期的には変化しないので、活断層にかかる力も長期的には変わりません。このため、活断層の活動は基本的には同じ動きが繰り返されます。活断層周辺の地形は、このように繰り返された動きの累積により形成されたもので、地形を見ることで活断層の動きの特徴を把握することができます。

>(4)活動間隔は極めて長い
 私たちが住んでいる日本は、しばしば直下型の大地震に見舞われるため、活断層が頻繁に動く印象を与えていますが、これは日本に活断層の数が多いためで、実は1つの活断層による大地震発生間隔は1000年から数万年と非常に長いのが特徴です。一方、海溝型地震の発生間隔はこれよりずっと短く、例えば南海トラフを震源とする地震の発生間隔は100年程度で、歴史時代に巨大地震(南海地震、東南海地震)を何回も発生させてきています。

伊方発電所 地震動評価 中央構造線断層帯(四国電力)も参考にしましたが、右横ずれの断層は間違いなく、急に違う方向に動くというようなことは想定しなくていいようです。4.3mの津波に10mの敷地の高さなら大丈夫そうですよね。

ここまで調べてきて感じるのは、広島高裁の決定とは、よほど他にやることが無かったのだなということです。原発を止めたいなら、もっとマシな理由はありそうなものです。また、過去に垂れ流しまくったデマを誤魔化すためには、何か新しいネタが必要だったのかもしれません。脱原発左翼の皆さんも大変ですね。なるべく自分で訂正しておいてください。筆者も他に書きたいこともありましたし、可能性があるとか疑いがあるとか報道されると、疑いを払しょくするのは大変そうだなとしり込みしてしまったのかもしれません。いずれにせよ、もっと早く調べておけば良かったと反省しています。

で、阿蘇の破局噴火自体は、現時点では分からないとせざるを得ません。マグマ溜まりの研究は中々進んでいないようですね。この辺の話題は興味もありますが、今回はさておきます。ただ、阿蘇の一番大きかった破局噴火も含めて、火山噴火の伊方原発への影響は調査されており、全く問題なしと断定していいようです。

伊方発電所火山影響評価について(四国電力)

まず火砕流堆積物が見つかっていません。そして大分での火砕流堆積物を調査結果で、佐賀関半島で火砕流が分断されるプロセスが明らかになります(18p)。

広島高裁やってくれましたね・・・。これはド素人によるボンクラ決定じゃないですか?あるいはド左翼の確信犯的策略です。


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