夢発電所

21世紀の新型燃料では、夢や想像力、開発・企画力、抱腹絶倒力、人間関係力などは新たなエネルギー資源として無尽蔵です。

立ち直りたい

2007-07-12 06:14:31 | 岩木山麓 しらとり農場日記
 3日前に来弘した三重県からの後輩T君は、二度大病を患って、胃も全摘手術をし脳卒中により左側半分に少し違和感を持っている。食事は今ようやく普通食を時間をかけて食べられるようになり、普通の生活を取り戻している。病気療養中にヘルパーの資格を取得し、もう一度社会復帰できないだろうかと自分を試すために、彼はわざわざ三重県からやって来た。
 予想していた以上に白髪も混じり老け込んだなあという最初の印象ではあったが、生来饒舌なのかそれに暗さを感じさせないひょうきんさを持っている。受け入れ側の不安を他所に、彼は彼なりに積極的にあうんのメンバーに接近して、なじみになろうとしている。昨日の朝の散歩では、近所のおばあさんが畑でジャガイモ掘りをしているところに話し掛けたらしく、「どこから来たのか?」と訊ねられて「三重県からあうんにやって来た」と答えて、「あうんに来たのなら新じゃがを一袋もって行け」とお土産を持って帰参した。
 そんな彼を昨日は農場へ誘った。彼は早速写真のようにオーナーに明るく挨拶をして、オーナーの草刈作業をしばらく中断させ、オーナー夫人やウーファーの若者に食らいついて離さず、それでも受け手を「アハハハハ」と大笑いさせているから逞しい。なんとも憎めない人柄だ。しかしその余裕のありそうに見えた饒舌さも、作業に移るとやはりまだまだ彼の体調が普通でないことを明確に示していた。トマトやピーマンに、一輪車につけたボカシ(オカラと米ぬか,土を混ぜたもの)を蒔く作業までは相手の若者を笑い転がせてはいたが、次のネギ畑の畝の除草作業や、肥料を入れる作業になったところ、彼の饒舌さは消失し、「ヒーヒー」という呼吸の息苦しさに変わっていた。「無理しなくてもいいんだよ」というと、「自分を試していますから大丈夫」と言ってはいるが、畑の中で今にも倒れるのではないかと思うような呼吸音が、耳の中に残った。50センチくらいの畝を歩くのも、バランスが悪くてヨタヨタだった。まあ初日だからこのくらいのものだろうと、彼の作業態度を見守っていたのだった。
 この日は天気が思わしくなくて、オーナーがお昼過ぎには雨が降るらしいので、午前中に作業を集中させて午後はゆっくりしようと話していた。あうんのメンバーはスタッフ1名と4名がやって来て、オーナーからにんにく畑の草取りの作業を行なっていた。
 きょうの岩木山の山頂は、雲が重くたれ隠れて見えない。みんなでネギの種を採取する作業を含めて、お昼には予定の作業を終えてハウスに戻った。
 きょうのお昼のメニューはウーファーの青年達も手伝っての「かきあげ風蕎麦」だった。ニンジンを間引いたものをその葉と一緒にかきあげ風に天ぷらにして、蕎麦の上に上げたものだ。それにタコの足のフライが添えられていた。初めこのニンジンの葉が春菊かと思うほどのうまさだった。
 お昼もT君の饒舌さが食卓を笑いの渦にして、ウーファーの若者達は出番がなくそそくさと昼寝タイムとなって二階に消えていった。
 キュウリもピーマンも、もはや出番はまだかと思うほどに日々大きく成長している。しらとり農場は、いよいよ出荷ラッシュも間近となっているのだった。