夢発電所

21世紀の新型燃料では、夢や想像力、開発・企画力、抱腹絶倒力、人間関係力などは新たなエネルギー資源として無尽蔵です。

久しぶりの雨

2007-07-04 05:49:24 | 岩木山麓 しらとり農場日記
 天気予報ではしばらく雨はないことになっていたが、車を農場に向けて走らせていると、雨粒が車のフロントガラスに当たり始めていた。
農場ではオーナーと昨日から農場にやってきた若者、通称・エレキがビニールハウスで土作りの仕事をしていた。昨日までは農場に居るのが当たり前だったキャサリンとウインターの姿がなくて、やっぱりあの二人はこの農場にとって花のような存在だったんだなと思った。オーナーが「今日の雨を見れば、昨日のあうんさんの豆まき作業はタイムリーだったね」ときょうの雨降りを見て声をかけてくれた。空梅雨模様の最近の天気は、外れることが多い。まして山麓の農場では、平地と多少天候も違っているのだった。
 午前中、雨はビニールハウスを叩くように音を立てて降った。外での作業は諦めて、オーナーそして私とエレキはビニールハウスの中で、レタスの苗をポットに植える作業をした。しばらくすると愛犬トーベが吼え初めて、来客を知らせた。前の日に来訪の予告のあった無農薬有機野菜に関心のある夫人達3人が農場の環境調査にやって来たらしい。どれくらい自然に配慮した農業を行なっているのかなどを調査しているのだという。例えば自然農の条件である、無農薬や有機肥料の内容と実際、その他にもその農家の生活実態として、食器や洗濯物を洗剤で洗っているのか、ゴミの処理の仕方などを含めて環境の監視員的な点検項目があるらしい。
 午前中は雨のためにさしたる仕事もなく、お茶の時間にはくだんのおばさん達の話に耳を傾けた。それでもおばさんたちは農場の状態が良かったのか、二人が会員になって野菜を予約し、豆を大量に買い付けていた。
 オーナーとエレキは床のフローリング貼りを行ない始めた。床のフローリングは後50cm幅くらいまで仕上がってきた。金槌の音が雨降りの農場のきょうの主役の音になった。奥さんは日頃なかなか時間もないためか、洗濯をしているらしい。エレキに向かって奥さんが洗濯についてレクチャーしている。「ここの洗濯は洗剤を使わないんだけど、それでも脂汚れ以外は結構落ちるのよ」と語った。
 お昼は奥さんの手料理で、野菜のあんかけ風ザルそばだった。食事が終えるとエレキがみんなの食器を片付け始めたので、私も片づけを始めた。この農場でのみんなの習慣は、食後の食器をトイレットペーパーでふき取ることだった。そうすると、食器洗いが取っても楽になるということだ。洗剤を使わないための裏わざかもしれない。エレキが奥さんに向かって、「前に居た農家では自分の食器は自分で片付け洗うというのがルールだったから、それが身についてしまった」と言いながらみんなの食器を洗っていた。奥さんが「えらいわねえ」と誉めていた。
 食後約1時間半昼寝だといってみんなが部屋に引っ込んだ。私は昼寝の習慣がないので、車の中で小説を読み、座席にしばらく横になってうとうとした後、あうんの畑のトマトの支柱用の棚を作った。作業が終わる頃、みんなが起き出して来た。雨は午後から上がり、お日様も顔を出して少し暑くなってきた。午後はキャベツのポット植えの葉についた幼虫を取り除く作業や、きゅうりの芽を欠く作業を行なった。農薬を使わないためにはこういう作業も重要なことになる。
 オーナー夫人が4羽いた鵜骨鶏に異変があり、メスの姿がこのところ見えないと話していた。そしてしばらくして、また「鵜骨鶏のことだけど、ひょっとして卵を温めているのじゃないかしら…」とオーナーに向かって云うと、オーナーも「俺もそう思う」と簡単に答えを返した。するとオーナー夫人は「本当にそう思ったの?調子いいんだから…」と軽口を言った。
 こうして午後3時にはオーナーの終了宣言で作業を終えた。農場の作業もほぼ落ち着いてきたのか、みんなで温泉に向かう計画の様子で、どこの温泉がよいのかなど、情報を私に聞いていた。こういう一瞬があるごとにあのとてつもなく遠くに思えたゴールが目前に現れたようで、なんだかそれでようやく農業もいいもんだなと思ってしまうから不思議だ。疲れた身体をひなびた温泉の湯船の中に浸して、のんびりと疲れた身体をいたわるのは最高だとふと思っていた。
 あうんの畑の野菜も順調に育ってくれて、6月からでは定植が遅かったかと思っていたジャガイモやトマトの苗も順調に苗が育ち、かぼちゃやズッキーニも緑の葉を伸ばして黄色の花をつけ始めていた。「やはり土が肥えているんだろうなあ」とオーナーも感心していた。何しろこの借りた畑は、農場の中では一等地なのだ。
 明日はトマトの芽を欠く作業を行なえば、しばらくはあうんの畑では草取りだけが当面の課題となる。いや、そうそうもう一つ重大な懸念があった。それはうさぎなどから枝豆の葉を守るための、柵作りが残っていた。今のところは、そういう実害もないが、これから実のつく時期には、以前嶽温泉の畑では散々な目に合ったことがあった。うさぎに葉っぱを食べられてしまったのだ。ここでもうさぎの姿を見たのだから、充分に対策をしなければならないだろう。
 帰り際に、オーナーが畑から瑞々しいレタスとタケノコハクサイという一風変わった白菜をお土産に下さった。今晩のおかずが楽しみになった。