鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

勝虫図鐔 Tsuba

2019-01-12 | 鍔の歴史
勝虫図鐔


勝虫図鐔

 椀型鐔と呼ばれる特徴の顕著な造り込みがある。名称の通り椀のように一方に膨らんでいる。拵に装着すると、鯉口部分をすっぽりと覆うような状態となり、埃や水滴が入り難いと思われる。実用面からとても理に適った構造だと思うが、意外と少ない。この場合、鐔の表裏は明瞭である。裏があることによって鯉口を覆うという用が完了する。

秋草図鐔 夏雄 Natsuo Tsuba

2019-01-11 | 鍔の歴史
秋草図鐔 夏雄


秋草図鐔 夏雄

 まさに昼と夜の風景図。でもよく見てほしいのだが、昼の風景は草花の生い茂る頃。対して夜の場面は梅の花のまだ蕾がふくらみ始めた頃。季節においても対比の妙を示している。陰陽の意識が風景図の背後に見え隠れしている。

菊牡丹図鐔 元壽 Mototoshi Tsuba

2019-01-09 | 鍔の歴史
菊牡丹図鐔 元壽


菊牡丹図鐔 元壽

 これも美しい昼夜の造り込み。何て優しい図柄だろう。赤銅地に金の菊。朧銀地に金の牡丹。多彩な色金を使っているわけではないが、色彩が感じられる。片切彫も太く細くと使い分け、特に花びらの繊細な様子には、描かれている蝶と同じように引き込まれてしまう。表裏を強く意識した鐔である。漆黒の赤銅が夜、朧銀地が昼か。筆者からすると、牡丹の方が夜に香りを際立たせる花のような印象がある。

法螺貝図鐔 正阿弥盛国 Morikuni Tsuba

2019-01-08 | 鍔の歴史
法螺貝図鐔 正阿弥盛国


法螺貝図鐔 正阿弥盛国

 表裏の素材を違えた作品ということであれば、この鐔の表裏の違いは際立っている。片方は鉄地に金象嵌、もう一方は層状に混ぜ金してその縞模様を浮かび上がらせた異風な地金。法螺貝部分は陰透、輪宝も陰透で、これによって修験者を暗示している。表裏異なる素材からなる表現を昼夜造りと呼ぶ。昼夜は陰陽に通じる。世の中はすべて陰陽のバランスで成り立っているとする考えだ。鐔の表現で、そこまで考える必要はない。単純に表裏を違えて楽しんだのであろう。

雪華文図鐔 後藤一乗 Ichijo Tsuba

2019-01-07 | 鍔の歴史
雪華文図鐔 後藤一乗



雪華文図鐔 後藤一乗

 表裏素材を違えた作を昼夜造りと呼んでいる。その美観を活かした作品。素材の違いによって雪の印象が異なることは間違いない。また、鐔の上方と下方というように、雪華文を散らした位置の違いによっても見え方が違ってくる。巧みな表現だと思う。打返耳のなだらかな様子、地面に施した槌目もまた雪の積もっている風情を感じさせている。高い人気を得たことが理解できよう。

蓬莱図鐔 遊洛斎赤文 Sekibun Tsuba

2019-01-03 | 鍔の歴史
蓬莱図鐔 遊洛斎赤文


蓬莱図鐔 遊洛斎赤文

 お正月ということで、蓬莱図鐔を紹介する。表に長寿の象徴でもある鶴亀。裏に松竹梅。全面がお目出度い図柄。加えて、小柄笄の櫃穴が宝珠形。その赤銅埋め金に施されている片切彫の文様も宝尽。総てがお目出度い要素。蓬莱飾りで意匠しながら、表裏を違えている作品。鉄地高彫象嵌。赤文らしい鏨の利いた彫口で、全面に活力がみなぎっている。
 近年、赤文の人気が高まっている。専ら鉄地を高彫表現、或いは切り込みの鋭い片切彫表現が多く、その素朴さと力強さが魅力の要となっているようだ。