鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

卯花に郭公図小柄 堀江興成 Okinari Kozuka

2014-04-09 | 小柄
卯花に郭公図小柄 銘堀江興成



卯花に郭公

花…卯花
白妙の衣ほすてふ夏のきて
 かきねもたわにさける卯花

鳥…郭公
郭公しのぶの里にさとなれよ
 まだ卯の花のさ月待つ比

 卯花は桜や山吹のあとに咲くウツギのこと。木陰に独特の白っぽい花を咲かせる。郭公は時鳥のことで、装剣小道具には比較的多く採られている。季節の妙を示す組合せである。時鳥は凄絶な印象を持つ鳥である。この場面は夕暮れ時であろう、声を枯らせて鳴きわたる時鳥の背後に、暮れてもなお木陰に存在感を示す卯花が印象的。

燕図目貫 渡辺一誠 Issei Menuki

2014-04-08 | 目貫
燕図目貫 渡辺一誠



燕図目貫 銘渡辺一誠作

 これも飛翔する燕のみを捉えた作。先に紹介した小柄と同様に赤銅地高彫で、金銀素銅を色絵で加えている。一誠は会津正阿弥派の出であろうか、林正光に学び、後に船田一琴の門人となっている。

燕図小柄 春茂 Harushige Kozuka

2014-04-07 | 小柄
燕図小柄 春茂



燕図小柄 銘春茂(花押)

 燕のみを捉えた作。赤銅魚子地高彫金銀素銅色絵。燕の翼は黒で、背景の赤銅魚子地とは同じ色調だが、高彫の表面に光沢を持たせることにより、翼が光って見え、腹の銀、頬の素銅、目玉の金と、いずれも色絵が活かされている。風を切って飛翔する燕の特質が良く示されている。春茂は柳川派と思われる。


藤に燕図鐔 柳明子一英 Kazuteru Tsuba

2014-04-05 | 
藤に燕図鐔 柳明子一英


藤に燕図鐔 銘柳明子一英

 一英は石黒(加藤)英明の門人。石黒派は赤銅魚子地に高彫金銀朧銀素銅などを用いた色彩の構成を得意とし、花鳥を題に得て華やかな空間を創出した。その流れを汲み、赤銅石目地に後藤一乗一門からも学んだものか、造り込みに江戸後期という時代観があるも、一乗一門とは異なる風をみせ、構成は大胆で華やか。大きく描いているところに個性があるのであろうか。色の組み合わせが巧みでしかも美しい。

藤に燕図鐔 Tsuba

2014-04-04 | 
藤に燕図鐔


藤に燕図鐔

藤棚の下をすり抜けてゆく燕。季節感を良く示した作。素銅地に平象嵌と毛彫を用い、各々の特徴を良く捉えている。殊に、目の前をすうっと過ぎゆく燕の流れるような翼の様子が巧みである。印象は文様化された風景。

藤に雲雀図小柄 堀江興成 Okinari Kozuka

2014-04-03 | 小柄
藤に雲雀図小柄 堀江興成


藤に雲雀図小柄 銘堀江興成

花…藤
ゆく春のかたみとやさく藤の花
 そをだに後の色のゆかりに

鳥…雲雀
すみれさくひばりの床にやどかりて
 野をなつかしみくらす春かな

 堀江興成の花鳥十二ヶ月図揃小柄から、三月の花鳥。縒り合した綱のように太く成長した藤の蔓。その先端に柔らかな緑の葉が繁り、独特の上品な色合いの花房が明るい空間を生み出す。桜のあとに藤が咲くともう春は終わり。過ぎゆく月日の早いことを想わずにいられない。

親子鶏図目貫 長常 Nagatsune Menuki

2014-04-02 | 目貫
親子鶏図目貫 長常


親子鶏図目貫 銘 長常(花押)

 攻撃的な雄、恐れる雛、これを守ろうとしている雌鶏。この様子は、かつての我が国の農村では普通に見られた光景。動物の世界を借り、強弱の隙間に親子の姿を示すという関係性を表現している。似たような虎の親子を描いたもの、獅子の親子を描いたものなどがあるも、それらとは少々意味しているところが異なるようだ。朧銀地を肉感豊かに立体的に彫り出し、平象嵌、色絵を駆使し、まさに生きているように描き出している。長常の名作である。

柳に鶯図小柄 堀江興成 Okinari Kozuka

2014-04-01 | 小柄
柳に鶯図小柄 堀江興成


柳に鶯図小柄 銘堀江興成

花…柳
うちなびき春くるかぜの色なれや
 日を経てそむる青柳のいと

鳥…鶯
春きてはきう夜も過ぎぬ朝といでに
 鶯なきゐる里の村田竹

阿波蜂須賀家に伝えられた十二点の揃い小柄から。題材は藤原定家の和歌「花鳥十二ヶ月」。正月の図で、春の近づきつつある様子が表現されている。この小柄十二点は、揃いのまま、徳島市の徳島城博物館が所蔵している。