鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

菖蒲花束図鐔 Tsuba

2013-02-07 | 
菖蒲花束図鐔


菖蒲花束図鐔 

 薬種として描く菖蒲の季節は五月。この鐔では秋を代表する菊を併せて描いており、対比の妙を示しているが、いずれも薬種に関わる題材。薬玉が病魔退散を目的に端午節句に飾るのものであることは度々紹介してきた。同様に菊節句とも呼ばれる九月の重陽節句には、菊など秋の植物を中心とした薬種を袋などに入れて飾り、厄除けとし、あるいはその香りを楽しんだ。ぐみ袋である。この鐔ではそこまでは描かないものの、同様に薬種として見られている植物に焦点を当てている。

端午節句図小柄 塚田秀鏡 Hideaki Kozuka

2013-02-06 | 小柄
日本東都市中年中行事図十二ヶ月揃小柄 塚田秀鏡作から


五月 端午節句

 端午節句は武家の行事として大きな節目。鎧兜を飾り、薬となる蓬を屋根に投げ上げたり軒下に吊り下げる。菖蒲湯に浸かるのも、薬玉と呼ばれる薬種を飾りとするのも関連する。鍾馗様、鯉幟、競馬、舟による競争、石打、菖蒲打ち、柏餅などもある。成長した子供が大人の仲間入りをするための通過儀礼もこの頃に行われることがある。この小柄には、鍾馗の旗指物、風車、吹き流しなどで飾っている武家の様子が描き出されている。

千社札貼り 古川常珍 Tsunetaka Kozuka

2013-02-05 | 小柄
千社札貼り 古川常珍


千社札貼り 銘 古川常珍(花押)

 桜の咲きかかる神社、その鳥居に千社札を貼ろうとしている人物、あるいは直接筆で書き記そうとしているのかもしれない、長い棹の先端には筆か刷毛のようなものが付けてある。過去に紹介したことがあるも、何度見ても面白い場面である。少しでも高いところに書こうとしているのか、あるいは千社札を貼るために糊をつけているのであろうか。建物が汚れることから、江戸時代後期には既に千社札お断りという寺社が多かったようだ。それでも貼ろうとしている、容易には取れないところに。また、直接書くのであれば、消すのは容易ではなかろうと。


野遊び図鐔 細野政守 Masamori Tsuba

2013-02-04 | 
野遊び図鐔 細野政守


野遊び図鐔 銘 細野惣左衛門政守(花押)

 陽気が暖かくなると、自然の中での野遊びが盛んに行われるようになる。この鐔に描かれている時節が花見の頃であろうか不明だが、萌え出た下草を踏み、野に遊ぶ風情が良く表わされている。細野政守は本作のような俯瞰やパノラマのような広い視野を採り、状況描写を主体に人物は毛彫平象嵌で簡潔に、しかも素描風に動きのある図とするなど、活きいきとした空間表現を得意とした。この鐔にも野歩きを楽しむ人々が鮮明に描かれている。

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潅仏会(花祭り)図小柄 Hideaki Kozuka

2013-02-02 | 小柄
日本東都市中年中行事図十二ヶ月揃小柄 塚田秀鏡作から


四月 潅仏会(花祭り)

 四月八日、潅仏会とも呼ばれる、お釈迦様の誕生を祝う花祭り。お釈迦様の天地を指差す像を花で飾り、甘茶をかけて清める。子供の頃には、幼稚園の行事としてあったように思う。甘酒がふるまわれた記憶があるが、甘茶の記憶違いか。

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雛祭図鐔 吉岡因幡介 Inabanosuke

2013-02-01 | 
雛祭図鐔 吉岡因幡介


雛祭図鐔 銘 吉岡因幡介

 雛祭りと関わりのある行事の一つが潮干狩り。大地には花が咲き始め、海の生き物も同様に動きはじめており、周りを海に囲まれている我が国では、それを自然の恵みとして意識し、大切にしている。陽も暖かくなり、野遊びと同時に磯遊びも盛んに行われるようになる。そのような要素をも採り入れた作。極上質の赤銅地を磨地に仕上げ、金銀朧銀の平象嵌と毛彫の手法を用いて洒落た、しかも洗練味のある描法で、風雅な世界観を表現している。