鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

月に梅図小柄 河野春明 Haruaki Kozuka

2011-02-15 | 小柄
月に梅図小柄 河野春明


月に梅図小柄 銘 春明法眼刻(金印)

 なんて素敵な構成であろう、三日月を背景にした満開の梅。夕暮れ時の西の空に沈んでゆく三日月は、地球照によっておぼろに丸い様子が窺いとれる。そのような、澄んだ空気のありようを、巧みに表現している。赤銅魚子地は綺麗に揃い、高彫に銀色絵、過ぎることのない金を配して落ち着いた画面を創出している。月は金の平象嵌と色合いの濃い四分一地。まっすぐに天を突く梅の枝。梅の古木は臥龍に擬えられることがある。この辺りから龍と梅が関連付けられたのであろうか。

分銅に梅花図鐔 春明法眼 Haruaki Tsuba

2011-02-14 | 
分銅に梅花図鐔 春明法眼


分銅に梅花図鐔 銘 春明法眼(花押)

飾剣などに用いられる分銅形の鐔を意匠し、地は赤銅魚子地、耳に金を配して優れた構成美を生み出している。さらに梅花を散らしているところは、重義の作に似ている。この鐔は簡潔ながら、澄んだ赤銅地に冴えた金が映える色調構成。春明(はるあき)は江戸時代後期の名工。人物図、風景図、風物図などを得意とし、精密な彫刻を駆使して瀟洒な画面を創出した。

梅花図鐔 梅忠七左衛門橘重義 Umetada-Shigeyoshi Tsuba

2011-02-13 | 
梅花図鐔 梅忠七左衛門橘重義


梅花図鐔 銘 梅忠七左衛門橘重義作

京都に栄えた埋忠派の流れを汲む重義(しげよし)の、同派らしい文様表現になる鐔。扇を意匠したものであろうか、あるいは飾剣などに用いられた分銅鐔を意匠したものであろうか、上品な造り込みになる作。鉄地高彫で梅の花のみを描いている。花弁を巴状に動きのある構成としているところに面白みがある。耳際を金布目象嵌で装い、埋忠派の個性を滲ませている。

初午図小柄 秀鏡 Tsukada-Hideaki Kozuka

2011-02-12 | 小柄
初午図小柄 秀鏡


初午図小柄 銘 行年六十二秀鏡刻(金印)

 我が国の十二ヶ月の行事を題材に得た十二点の揃い小柄の内の二月の作。主題である初午は、二月初午の日に稲荷社で行われた行事。作者は幕末から明治を活躍期とした塚田秀鏡(ひであき)。
 この小柄は、朧銀を磨地に仕上げ、強弱変化のある片切彫と華やかな平象嵌を組み合わせた彫刻手法。殊に線描写が巧みで、苔生したような梅の古木の様子が再現されている。

杉田梅図小柄 後藤光孝 Goto-Mitsutaka Kozuka

2011-02-11 | 小柄
杉田梅図小柄 後藤光孝


杉田梅図小柄 銘 後藤光孝(花押)

後藤宗家十三代光孝(みつたか)の小柄。現在の神奈川県磯子区杉田は梅の産地として有名であった。今ではあまり知られていない杉田梅とは、戦国時代に始まり、江戸時代には数万本も植えられており、実が大きく果肉が多いところに特徴があったそうだ。観梅の名所としても知られていた。
 この小柄は、写実性よりもむしろ鄙びた村落といった風情で梅林の様子を文様風に描き表わしている。夕暮れ時の闇の迫る野に月明かりがかすかに差し込んでおり、白梅の花が闇に静かに溶け込んでゆく。後藤宗家らしさは感じられない、後藤家にあって興味深い作風でもある。

梅に龍図鐔 美濃 Mino Tsuba

2011-02-10 | 
梅に龍図鐔 美濃


梅に龍図鐔 無銘 美濃

 江戸時代中期以降の美濃彫と呼ばれる表現手法の作。赤銅魚子地を深彫りとして、主題である植物や龍などをくっきりと高肉に表現するのが美濃彫の特徴。時代の上がる美濃彫は、主題の高彫の際を削ぐように切り立つ高彫とする。本作はその様式を受け継ぎながらも時代に応じた優しい彫口とされている。美濃彫には秋草などが多くみられるも、梅樹は珍しい。耳のみに龍を構成しているのも美濃にみられる特徴。

梅花図鐔 肥後 Higo Tsuba

2011-02-09 | 
梅花図鐔 肥後


梅花図鐔 無銘 肥後

 甚吾風の表現になる鉄地薄肉彫に金布目象嵌の手法になる作。これも茶室に採られる下地窓を想わせる格子模様を背景に素朴な描法としたもので、耳の円形は窓の枠であろうか。虫食いの様子を枠に施して質朴なる空間を演出している。艶のある鉄地に金線象嵌の花蕊が鮮やか。

梅図縁頭 小田直升 Oda-Naonori Fuchigashira

2011-02-08 | 縁頭
梅図縁頭 小田直升


梅図縁頭 銘 小田直升彫之

 薩摩金工小田直升(なおのり)の縁頭。鍛え強い鉄地を打ち出し、大振りに腰高くがっちりと造り込んでいる。薩摩金工らしい強みの感じられる地鉄。茶室の前に花開く老梅の比較的写実性に富んだ作風で、この作風も薩摩金工の特色。高彫に厚手の金布目象嵌の手法。

銀座長州屋からのお知らせ

2011-02-07 | その他
お知らせ

銀座長州屋のホームページをご覧いただいているお客様から、銀座長州屋のホームページにアクセスしたことにより、ウィルスに感染したとの報告がありました。また、Web検索によってウイルス感染の警告が表示されたこともあり、調査しましたが、ウイルスが検出されておりません。2月4日の午後にはWeb検索による警告の表示が出なくなりましたが、一部のパソコンでは未だに表示されているようです。各個のパソコンに搭載されているセキュリティーソフトの違いによる表示の有無も確認されたことから、銀座長州屋のホームページを構成している機能の特定のコードがウイルスと誤認された可能性があります。銀座長州屋のホームページは、現在安全な状態にありますので、安心してご利用下さい。

雨龍図鐔 甚吾 Jingo Tsuba

2011-02-07 | 
雨龍図鐔 甚吾


雨龍図鐔 無銘 甚吾

 肥後金工志水甚吾には、個性強く表現された龍図鐔が多い。表に草体に表現した龍を大胆に描き、裏には独鈷のみを添え描くことが多い。同様に、鯉図鐔にも裏に独鈷を描いた例があることから、独鈷は不動明王の化身として捉えたものと考えられる。鯉は龍門を溯ることによって龍に変化するといわれており、鯉は龍と同じ意味である。また、龍や鯉の裏面に独鈷の代わりに梅花を描いた例が間々みられることから、梅と独鈷は同じ意味があると推測する。この意味について、筆者は詳しくない。どなたかご存知のかたがおられたら教えてほしい。

梅見月図鐔 古赤坂 Koakasaka Tsuba

2011-02-06 | 
梅見月図鐔 古赤坂


梅見月図鐔 無銘 古赤坂

 咲き始めた老梅に三日月。冬の冷たい空気のありようが感じられる、優れた構図の鐔。揺らぐような耳の構成線は雪を想わせる。鉄色黒くねっとりとした質感で、素材の美しさもこの鐔の大きな魅力。赤坂の初、二、三代の鐔には在銘作がないことからこれらを古赤坂と呼び、江戸初期の時代観を尊んでいる。

文散図鐔 鎌倉 Kamakura Tsuba

2011-02-05 | 
文散図鐔 鎌倉


文散図鐔 無銘 鎌倉

 笹竜胆紋であろうか、波や雲、鳥などの文様を背景に、陰透かしの梅花と共に装飾の要としている。もちろん梅花が主題であるが、鎌倉鐔には主題としては捉えどころのない文様表現された図の作例が多い。そこが鎌倉鐔の魅力なのだ。古甲冑師鐔や古刀匠鐔などにもみられる陰の簡潔な梅花の例である。

お知らせ

2011-02-04 | その他
銀座長州屋からお知らせします。

数日前から、Web検索を通じて銀座長州屋のホームページにアクセスしようとすると、ウイルス感染の『警告』が表示されるようになりました。
銀座長州屋のホームページを管理しているサーバーはもちろん、銀座長州屋のパソコン及び周辺機器などについてはウイルス感染していないことが確認されており、ホームページをご覧いただいても全く問題はないのですが、一時公開を中止し、確認と対策を急いでおります。
申し訳ございませんが、解決次第ホームページを再開いたしますので、しばらくお待ち下さい。

老梅図笄 古金工

2011-02-04 | 
老梅図笄 古金工


老梅図笄 無銘 古金工

 まさに古笄という印象が漂う作。地を這うような幹、枝振り、花などにも精巧味がなく、時代の上がる魅力横溢の作である。戦国時代の実用品といった風情があり、恐らく戦場を経巡った武将の腰に収められていたものであろう。もちろん高位の武将の持ち物には金が多用されて綺麗な例もあるが、多くはこのような質素なものであり、ほとんどが道具として消費されてしまったと考えられる。戦国時代の実用笄で、比較的状態良く残されている例である。□

梅花に千鳥文図笄 古金工 Kokinko Kogai

2011-02-04 | 
梅花に千鳥文図笄 古金工




梅花に千鳥文図笄 無銘 古金工

 南北朝時代まで遡ると推定される古笄。耳の形をご覧いただきたいのだが、逆に造り込まれている。古い笄に間々みられる特徴の一つでもある。この逆耳こそ笄の原点であるとみる研究者もある。素銅地に毛彫で千鳥を描き、八重の白梅を一つだけ添えている。なだらかな姿態、柔らか味のある表面、文様もすべてが簡潔で美しい。箱根神社には、同趣の金具が使用された曽我五郎所持と伝えられる腰刀が伝来している。□