鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

桜花文図鐔 神吉 Kamiyoshi Tsuba

2020-03-12 | 鍔の歴史
桜花文図鐔 神吉


桜花文図鐔 神吉

 このような華やかな表現からなる鐔が肥後に伝統的にある。創始は林又七と考えられている。初期には、下写真のように地面を活かした構成であったが、次第に濃密な透かしを加えるようになった。ここに紹介しているのは、いずれも江戸時代後期の深信や楽寿など神吉派。「霞桜」ともいわれるように、春霞に桜花が滲んで見えているような、そんな視覚的効果を求めたもの。毛彫を加えた桜花を地に陽に活かし、その周りを花弁のように透かし去り、四方に猪目を透かし、さらに糸透で耳際に細い筋を透かしている。金布目象嵌はあるものとないものがあるも、これも霞だろうか。春霞などといえば風情もあるが、春は黄砂、杉花粉が飛散する季節。杉花粉に滲む木漏れ日などは、花粉症の方には申し訳ないがすごく綺麗だ。筆者は、この鐔に施されたすべての処理について、桜が放つ香りを視覚表現したものではないかとも考えている。




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