鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

蟷螂図鐔 赤文 Sekibun Tsuba

2018-11-01 | 鍔の歴史
蟷螂図鐔 赤文


蟷螂図鐔 赤文

 赤文は度々紹介している。多彩な図柄に挑んで成功した、優れた感性と技術を備えた金工である。置かれている牛車の車輪に夕顔が絡みついている。これだけを捉えれば、『源氏物語』の『夕顔』になる。この鐔では蟷螂を添え描いている。「蟷螂の斧」の謂いがあるように、蟷螂は自ら抗えないような巨大な存在にも鎌を振り上げる。その勇ましい気質から、装剣小道具に好んで採られることがある。ちょっとした添景の違いで意味が異なってくる。櫃穴に車を陰に表現しているのがいい。源氏物語図のような古典的で文学的、雅な風景というわけではないが、構成に引き込まれてしまう。下の鐔は庄内金工の、同じ意味を持つ図で、より武骨な印象がある。