鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

五丈原図小柄 Kozuka

2013-06-05 | 小柄
五丈原図小柄


五丈原図小柄

 舟上で前方を見やる孔明の姿を描いた鐔を先に紹介した。その着物の袖には龍の文様が描かれている。そうしたちょっとした演出にも龍が図として採られるように、孔明が龍に擬えられることが多い。そもそも劉備に見出されるまでは伏龍、すなわち未だ力を発揮しない眠れる龍であると呼ばれていたことも影響していよう。孔明の最期も龍で装われることとなった。五丈原の場面には、必ず戦車を守っているかのように龍が描かれる。龍に変化した孔明が、自軍を守るという捉え方は、ごく日本的な発想と言えよう。後藤家の龍図金具を拵に用いるのも、刀身に龍の彫刻を施すというのもこれに通じる。