鐔鑑賞記 by Zenzai

鍔や小柄など刀装小道具の作風・デザインを鑑賞記録

地引網漁図小柄 後藤程乗 Teijo Kozuka

2013-03-07 | 小柄
地引網漁図小柄 後藤程乗


地引網漁図小柄 無銘後藤程乗

 浜辺の風景と言えば地引網。後藤程乗作と極められた小柄。横長の画面を活かし、海上の作業、浜辺の人の動き、さらには漁村の家並みなどを一つの画面に採り入れている。説明的ではあるが頗る面白い。網の中では魚介類が飛び跳ねている。そんな様子も描いているのである。銀魚子地高彫金色絵。金の色味を微妙に違えている。江戸時代前期のごくごく当たり前の景色を捉えて絵画表現しているわけだが、この時代、町彫り金工はまだ活躍しているわけではなく、少し後に京都の細野惣左衛門政守が市井の人物風景を題に採り、さらに後に江戸の奈良派が台頭、さらに後に人物描写を得意とした京都の一宮長常が登場する。程乗は、長常のように特定の人物に焦点を当てているわけではないが、市井に生きる人々を題材に得ているという点で、歴史的な面から金家などに連なる意識を持つ金工の一人であったと言えよう。