とりがら時事放談『コラム新喜劇』

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A380は売れるのか?

2005年09月03日 21時12分16秒 | 経済
先々週、CS放送(我が家はCATV)のディスカバリーチャンネルで「巨大旅客機A380の建造」という番組が三夜に渡って放送された。
史上最大の旅客機エアバス社のA380がヨーロッパ各地の工場で製作されフランスの工場でアセンブリされていく過程が克明に取材されていたのだ。
ラストは今年三月に行なわれた試作機の飛行場面で終了した。

ところで、この番組で私の目を引いたのは、豪華ラウンジ付きの客室でもなければシャワー室でもなかった。また最大搭乗乗客数800人でも総2階建て構造でも、なんでもなかった。
ではどういうシーンが一番目を引いたのかと言うと、セールスの責任者がインドへ出張り航空会社のオーナーにこのA380を売り込むシーンが一番印象に残ったのだ。

半月ほど前に、ちょうど同じ題材をテレビ東京のドキュメンタリー番組「ガイアの夜明け」が採上げていた。
「日本では一機も受注できていない」
というのがトピックで、日本担当のセールスが各社を売り込みにまわる姿を密着取材していた。
売れない理由は政治なのか、ビジネスなのか、はっきりとした結論はでなかった。
B787をまとめて発注した全日空もA380には興味をまったく示さないというのだ。

結局、800人もの乗客を乗せる飛行機は日本には必要ない、というのが真実らしい。
まず国内線に目を向けると、一番旅客数の多い大阪東京、東京札幌便でさえ、この大型機を導入するメリットがないのは素人の私が見ても明らかだ。
搭乗するのに30分、飛行時間に一時間、飛行機から降りるのに20分。いずれも都心と空港はバスや鉄道で30分以上必要とする。つまり合計3時間。
大阪東京は新幹線が速そうだ。
そして数年後には新幹線も函館まで走ることになるし、札幌乗り入れも時間の問題。だから大量輸送は新幹線。

国際線は昔「ハブ空港が必要だ」などとよく言われていたものだが、結局、成田も関空もハブ空港にはならず、日本人は主要な観光地や近隣都市へは近場の空港からダイレクトで飛べるようになってしまった。
そうなると多くの人が一度に乗っかる大型機よりも、小型観光バスのような中型機が経済的だ。

件の番組では、セールスの責任者がインド人オーナーに盛んに売り込みを図るが、どうも煮え切らない。
A380の売りである、豪華ラウンジやシャワーなどには目向けてくれないのだ。
「そんなのいらないよ」
とインド人オーナーのそっけない返事。
「そんな飛行機を駐機できる空港がインドにあると思っているの?」
「空港を改装できる予算がインドでとれると思っているの?」
こういうのをケンモホロロというのだと思った。

A380。
販売目標の250機まであと100機。
どうもこれは21世紀最初のマーケティング失敗例になりそうだ。