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人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

ピアニスト・中川優芽花インタビュー ~ 朝日新聞の記事から / 鴻上尚史著「人生にがっかりしないための16の物語」を読む ~ 新しい古典としてこれから先も存在し続けるであろう不朽の名作を紹介

2025年05月23日 00時01分02秒 | 日記

23日(金)。昨日はトリフォニーホールで新日本フィル「第663回定期演奏会」の公開リハーサル(指揮=ハインツ・ホリガー)があったのですが、今日から5日連続コンサートが控えているので、腰痛悪化防止のため見学を諦めました 無理をすると5回のコンサートがオジャンになるので、ここが我慢のしどころです

さて、昨日の朝日新聞夕刊にピアニスト・中川優芽花さんのインタビュー記事が載っていました インタビュアーは朝日編集委員・吉田純子さんです 超略すると以下の通りです

「2001年、デュッセルドルフ生まれ。同地のロベルト・シューマン音楽大学、ロンドンのパーセル音楽院を経て、21年からドイツ・ワイマールのフランツ・リスト音大に在籍中 日常的に話すのは英語とドイツ語である。2021年に19歳で受けたクララ・ハスキル国際ピアノコンクールで優勝した 河村尚子や藤田真央に続く快挙だった しかし、『周囲からの期待が重く、好きだからやっていたはずの音楽が”仕事”になっていく感覚もつらかった コンクールの後、半年間くらいの記憶があまりないんです』。何を信じていいか分からなくなった。答えをくれたのは、やはり音楽だった 『モーツアルトやシューベルトの音のはしばしに、同じ苦しみのかけらを感じとれることがあった 時代や国がどれほど違っても、人間は人間なんだって』。そんな日々を『自分と徹底的に向き合う貴重な時間だった』と今は思える 『今、人生で初めて、練習がとっても好きです』と笑顔がはじける 現在開催中のエリザベート王妃国際音楽コンクールはセミファイナルまでの進出となった。秋にはショパン国際ピアノコンクールに出場する。何のためにコンクールを受けるのか、今ならはっきり答えられる。音楽と生きていくため。音楽を決して手放さない。揺るぎない自分をつくるため。勝っても負けても私は変わらない。結果のその先の、未来を見据える

中川さんがエリザベート王妃国際音楽コンクールでセミファイナルに進んだ24名(うち日本人は6名全員)に入った時、私は6人の中では中川さんを推していたので、ファイナルに進めなかったのはとても残念に思っていました コンクールの功罪は様々あるでしょうが、個人的には若い演奏家が世界的なコンクールにチャレンジするのは素晴らしいことだと思います インタビューによると、中川さんはショパンコンクールにチャレンジするとのことなので、また応援したいと思います

ということで、わが家に来てから今日で3783日目を迎え、イスラエル軍は21日、パレスチナ自治区のヨルダン側西岸ジェニンを訪問していた外交視察団に警告射撃を行ったと発表した  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

後ろ盾のアメリカが放任しているのをいいことに 殺人優先のネタニヤフ政権はやりたい放題だな

         

昨日、夕食に「鶏のから揚げ」を作りました いつもは隔週金曜日のローテになっているのですが、今週はコンサートの関係で1日繰り上げました 

         

鴻上尚史著「人生にがっかりしないための16の物語」(ちくま文庫)を読み終わりました 鴻上尚史(こうかみ しょうじ)は作家・演出家。1958年愛媛県生まれ。早稲田大学卒。在学中に劇団「第三舞台」を旗揚げし、1987年「朝日のような夕日をつれて’87」で第22回紀伊國屋演劇賞団体賞、95年「スナフキンの手紙」で岸田國士戯曲賞、2010年「グローブ・ジャングル」で読売文学賞戯曲・シナリオ賞を受賞 著書に本ブログでもご紹介した「鴻上尚史のほがらか人生相談」はじめ多数

本書は、2008年に「人生に希望をくれる12の物語」として講談社より刊行された単行本を改題・加筆し、文庫化したものです

本書で取り上げられている作品は次の通りですが、⑬以降があらたに書き下ろされたものです

①ダニエル・キイス「アルジャーノンに花束を」

②G.ガルシア・マルケス「百年の孤独」

③浜田廣介「泣いた赤おに」

④阿部公房「友達」

⑤太宰治「人間失格」

⑥柴田翔「贈る言葉」

⑦藤子・F・不二雄「劇画・オバQ」

⑧筒井康隆「大いなる助走」

⑨フランツ・カフカ「変身」

⑩葉山嘉樹「セメント樽の中の手紙」

⑪ジョン・アーヴィング「ガーブの世界」

⑫村上春樹「羊をめぐる冒険」

⑬村田沙耶香「コンビニ人間」

⑭ディーリア・オーエンズ「ザリガニの鳴くところ」

⑮田中未知「寺山修司と生きて」ほか3冊

⑯辻村深月「傲慢と善良」

著者は「はじめに」の中で概要次のように書いています

「この本は、自分が20代の頃に読んで感動し『生きる希望』を感じることができた物語について書いている いわば、新しい古典としてこれから先も存在し続けるであろう作品である

そして、「文庫本まえがき」の中では次のように書いています

「自分の人生が一度しかないからこそ、いろんな物語を読み、知り、自分の人生の可能性を考えるだけで、なんだか自分の人生が豊かになったような気がします そして、物語から発見することがあります それは、評論や実用書から教えられる価値とは違います。物語を味わうことは、人生そのものを体験することです ビジネス書や新書のような『大切な知識』だけを得るのではなく、『たいして重要でないノイズ』も経験します それを含めて物語で、それが人生そのもので、だからこそ、物語から得た価値は読者の実人生にしみ込むのだと僕は思っています

本書の特徴は、単なる作品の内容紹介だけではなく、鴻上氏がどういう時代にどういうシチュエーションでその本に出合ったか、そして読んでどう感じたかを、自分に引き寄せて書いているところです

著者は小学校の教科書に載っていたという浜田廣介「泣いた赤おに」についても取り上げていますが、何年経っても感動する物語だとして紹介しています 物語を簡単に説明すれば、友達が出来ない赤オニに、青オニが「自分が悪者になって村を襲うから、君が途中で登場して自分を殴ってくれ。そうすれば村人たちは君を信用して友達になってくれる」と話す その通りにすると、赤オニは人間の友達が出来るようになった しかし、青オニのことが気になった赤オニが遠い住処に住む青オニを訪ねると「人間の友達と仲良くやっていってくれ。我々がまた会うと人間は君を疑う。だから僕はしばらく君と会わない。さようなら」という張り紙が貼ってあった それを見た赤おには何度も読み返し涙を流して泣いた・・・という内容です

歳を重ねると「どうして青オニは去ったのか?」という疑問が湧いてきたといいます 中学生のある時、鴻上氏はこの作品の「解説」に「無償の友情」という表現を見つけます これについて、「理解はできても、納得はできなかった」と言います 大人になるまで疑問を抱き続けてきた鴻上氏は、これを「ハルシオン・デイズ」という戯曲にします。さまざまな登場人物に「なぜ、青オニは去って行ったのか」を語らせるというものです 本書の中で様々な解釈が語られていますが、「プロは読みが深い どんな小さな物語でも戯曲に仕立て上げるんだな」と大いに感心しました

辻村深月著「傲慢と善良」は私も読みましたが、2024年10月時点で100万部を突破したそうです この作品は簡単に言えば「婚活途中で突然失踪してしまった女性」を巡る物語ですが、鴻上氏の指摘している通り、「婚活真っ只中」だったり、「恋愛中」の人が読むと、衝撃を受けると思います

結婚相談所の所長の次の言葉が、現代の婚活中の人たちの実情をよく表しています

「皆さん、謙虚だし、自己評価が低い一方で、自己愛の方はとても強いんです 傷つきたくない、変わりたくない。(中略)親に言われるがまま婚活したのであっても、恋愛の好みだけは従順になれない

「現代の日本は、目に見える身分差別はもうないですけど、一人一人が自分の価値観に重きを置き過ぎていて、皆さん傲慢です その一方で、善良に生きている人ほど、親の言いつけを守り、誰かに決めてもらうことが多すぎて、”自分がない”ということになってしまう 傲慢さと善良さが、矛盾なく同じ人の中に存在してしまう、不思議な時代なのだと思います

作家・辻村深月は鋭いです

すべての作品を紹介するわけにもいきませんが、小説や演劇の賞を選ぶ選考委員について不満を述べる筒井康隆著「大いなる助走」の解説も面白かったし、プロレタリア文学の葉山嘉樹著「セメント樽の中の手紙」も原文で読んでみたいと思いました

人生に絶望している人、人生にかすかな希望を抱いている人・・・幅広い読者にお薦めします

         

今夜は すみだトリフォニーホールで新日本フィル「第663回定期演奏会」を聴きます


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