2015年1月1日(木・元日)その1。皆さま 明けましておめでとうございます。わが家に来てから96日目となり、初めての新年を迎えたモコタロです
あけまして おめでとうございます ことしも よろしくね!
閑話休題
昨年、もとい昨日、上野の東京文化会館小ホールでベートーヴェン弦楽四重奏曲≪8曲≫演奏会を聴きました 弦楽四重奏曲7番~9番(ラズモフスキー第1番~第3番)をクァルテット・エクセルシオが、第12番、第13番(大フーガ付き)を古典四重奏団が、第14番、第15番、第16番をルートヴィヒ弦楽四重奏団が演奏します
公演チラシによると、終演は午後9時半となっていたので、古典四重奏団まで聴いて帰宅することにしました。大晦日の夜は年越しそばを食べることになっているのです
自席はG27番、中央右ブロック右通路側です。会場は9割方埋まっている感じです。1年の最後の日に、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を聴くために約600名ほどの人達が集まってくるのですから驚きです すぐ隣の大ホールではコバケンによるベートーヴェンの交響曲全曲演奏会が一足早く午後1時半から始まっています。こちらもチケットは完売と聞いています。ベートーヴェンの人気はすごいものがあります
小ホール午後2時からのトップバッターはクァルテット・エクセルシオです。「ラズモフスキー第1番~第3番」を演奏します メンバーは第1ヴァイオリン=西野ゆか、第2ヴァイオリン=山田百子、ヴィオラ=吉田有紀子、チェロ=大友肇です
4人のメンバーが登場します。女性陣は赤系統の衣装で統一しています 左から第1ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、第2ヴァイオりンという態勢をとります。このあと演奏する古典四重奏団とは異なる態勢です
この日演奏されるのはラズモフスキー第1番から第3番ですが、ラズモフスキーというのはロシアの貴族で、長い間ウィーンの駐在大使を務めた伯爵で、この3曲はラズモフスキー伯爵の依頼によって作曲されました。ベートーヴェンの”中期”を代表する充実した作品です
大友肇のチェロによりラズモフスキー第1番の第1楽章「アレグロ」が始まります 聴いていると、同じ時期に作曲された英雄交響曲のような”勇壮な”音楽を感じます
音楽が前へ前へグングン進められていきます。一転、第3楽章「アダージョ・モルト・エ・メスト」に入ると”悲しみの世界”に浸ります。これはアダージョの傑作です
第2番は3曲の中で唯一短調(ホ短調)で書かれた曲です。短調特有の魅力を湛えた曲想です。最後の第3番は、第1番と第2番を合わせた集大成とでもいうべきベートーヴェンの不屈の精神に満ちた音楽です とくに最終楽章「アレグロ・モルト」のフィナーレは壮大なフーガで、圧倒的な迫力で迫ってきます
結成20年を迎えたクァルテット・エクセルシオの演奏は全体的にソフトというか、がなり立てないというか、落ち着いたアンサンブルが心地よく響きます
「ラズモフスキー」と言えば、小林秀雄のエッセイを思い出します。タイトルは忘れましたが、彼が銀座の楽器店(多分ヤマハ)に行ってレコードを注文する時のことを書いたものです。こんな風でした
小林「ラズモフスキーをくれ」
店員「何番にしましょうか?」
小林「全部くれ」
それだけのものですが、忘れられずに覚えています
かくしてエクセルシオの演奏は午後4時半頃に終了し、4人はロビーの片隅で花束やらプレゼントやらに囲まれていました。超人気者
休憩後に登場するのは古典四重奏団です。第12番作品127と第13番作品130番(大フーガ付き)を演奏します。メンバーは第1ヴァイオリン=川原千真、第2ヴァイオリン=花崎淳生、ヴィオラ=三輪真樹、チェロ=田崎瑞博です
4人のメンバーが登場しますが、女性陣はエンジと黒を基調とする衣装で統一しています 左から第1ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、第2ヴァイオリンという態勢をとります。エクセルシオと比べるとヴィオラとチェロの位置が逆になっています。もう一つの特徴は、かれらの前には譜面台がないということです。つまりどんな大曲でも暗譜で弾き切るということです
1曲目の第12番作品127の演奏に入ります。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲は作曲年代から前期(第1番~第6番)、中期(第7番~第11番)、後期(第12番~第16番)に分けられますが、この12番は後期の最初を飾る曲です。年齢で言えばベートーヴェンが54歳の時に完成しました
古典四重奏団のメンバーは楽譜を見ないで演奏している訳ですが、第12番を聴きながら、いったいどういう風にお互いの間合いをとったりしているのか、と気にかかります。約30分の曲を記憶を頼りに弾くわけで、他のメンバーとのコミュニケーションどころか自分のことで精一杯だと思うのですが、実際彼らの演奏を聴く限りではアンサンブルの乱れはほとんどありません それどころか非の打ちどころのない見事なアンサンブルです
結成から28年、同じメンバーで演奏してきたことからくる”阿吽の呼吸”というのがあるのでしょう
さて、最後の第13番作品130です。6楽章形式で、当初は終曲に巨大なフーガを置いた形式で完成され、初演もされましたが、一部の不評を買い、フーガの代わりに新たな終曲を書いています この日の演奏は、最初にベートーヴェンが作曲したとおり終曲に「大フーガ」を置くスタイルで演奏されます
この曲はそれぞれの楽章に魅力がありますが、特に印象的なのは第5楽章の「カヴァティーナ」でしょう これはベートーヴェンの神への祈りの音楽です。このカヴァティーナを含めて、ベートーヴェンは緩徐楽章(アダージョ)が最も素晴らしいと思うのは私一人ではないでしょう
古典四重奏団はこの「カヴァティーナ」の後、間を置かず「大フーガ」を衝撃的に開始しますこの楽章は作曲当時から極めて難解で、演奏も困難を極めた難曲だったと言われています
今でこそ演奏技術は進んでいますが、そこに魂を込めるのは困難なことでしょう。その意味で、古典四重奏団は渾身の演奏を展開しました
目の前に楽譜があるなしに関係なく、ベートーヴェンの核心に触れる演奏だったと思います
ルートヴィヒ弦楽四重奏団の演奏を聴けなかったのは残念ですが、今年聴いてきた179回のコンサートの最後に古典四重奏団の「大フーガ」が聴けて本当に良かったと思っています
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