17日(土)。わが家に来てから今日で3777日目を迎え、米アップルによる「iPhone」の生産を中国からインドに移管する計画に対しトランプ大統領は15日、アップルのティム・クック最高責任者に対し「君が中国で建てた工場を何年も我慢してきたんだ。今こそ、米国に工場を建ててくれ」と伝えた というニュースを見て感想を述べるモコタロです
独裁者トランプは 民間企業の経営に口出しするのは大統領の特権だと勘違いしてないか?
昨日は諸般の事情により 夕食作りはお休みしました
昨夜、サントリーホールで東京都交響楽団「第1021回 定期演奏会 Bシリーズ」を聴きました プログラムは①ペンデレツキ「広島の犠牲者に捧げる哀歌」、②ショスタコーヴィチ「ピアノ協奏曲第2番 ヘ長調 作品102」、③同「交響曲第5番 ニ短調 作品47」です
演奏は②のピアノ独奏=アンナ・ツィブレヴァ 、指揮=クシシュトフ・ウルバンスキです
クシシュトフ・ウルバンスキは1982年 ポーランド生まれ インディアナポリス交響楽団音楽監督、トロンハイム交響楽団首席指揮者兼芸術監督、NDRエルプフィル首席客演指揮者などを歴任
現在、ワルシャワ・フィル音楽・芸術監督、ベルン交響楽団首席指揮者、スイス・イタリアーナ交響楽団の首席客演指揮者を務める。私には2012年~16年に東京交響楽団首席客演指揮者を務めたウルバンスキの演奏に思い出深いものがあります
1曲目はペンデレツキ「広島の犠牲者に捧げる哀歌」です この曲はクシシュトフ・ペンデレツキ(1933~2020)が1960年に作曲、1961年9月22日にワルシャワで初演されました
この曲は当初、楽譜上に記載された演奏時間をそのままタイトルにした「8分37秒」でした。その後、作曲コンクールに出品する際に「52の弦楽器のための哀歌 8分26秒」と変更され、さらに、作品完成後に観た原爆のドキュメンタリーに心打たれて現行の「広島の犠牲者に捧げる哀歌」に変更された、という経緯があります
オケは14型の弦楽器のみで、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並び コンマスは矢部達哉、その隣は山本友重という2トップ態勢を敷きます
ウルバンスキが登場し指揮台に上がりますが、彼の前には譜面台がありません 彼は暗譜で指揮を執りまます
暗譜ということで思い出すのは、ウルバンスキが初めて東京交響楽団に客演した際のリハーサルで、終始暗譜で指揮を執ったことから、楽団員が度肝を抜かれたというエピソードです
彼の頭には楽譜の全てが入っており、協奏曲を除きリハーサルを含めてすべて暗譜で指揮を執ります
ウルバンスキの指揮で演奏に入りますが、各セクションの最高音が神経質に演奏されていきます 作品全体を統一する曲想は”悲痛”の言葉が相応しい、タイトルの「哀歌」そのものです
演奏中にヴィオラ奏者がめくる譜面が見えるのですが、音符はまったく見えず、幅広い刷毛で墨汁を横に引いたような太い帯が見えるだけでした
よくこれで演奏できるものだと感心します
2曲目はショスタコーヴィチ「ピアノ協奏曲第2番 ヘ長調 作品102」です この曲はドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906-1975)が息子マキシムのために1957年に作曲、同年モスクワで初演されました
第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「アレグロ」の3楽章から成ります
ピアノ独奏の アンナ・ツィブレヴァはロシア連邦の共和国の一つ、カラチャイ・チェルケス共和国出身 2015年にリーズ国際ピアノコンクールで優勝し、一躍国際的な注目を集めた
2012年の浜松国際ピアノコンクール、2013年のギレリス国際ピアノコンクールなどでも入賞を果たしている
弦楽器は14型のままで管楽器と打楽器が加わり、ピアノがステージ中央に置かれます
ウルバンスキの指揮で第1楽章が開始されます ファゴットほか木管楽器による序奏に次いでアンナのピアノが鋭角的に入ってきて、軽妙洒脱な演奏が展開します
第2楽章は一転、まるでショパンのノクターンのようなロマンティックな音楽が奏でられます
アンナのピアノは一音一音の粒立ちがとても綺麗です
あまりショスタコーヴィチの曲を知らない人に、作曲者名を伏せてこの楽章を聴かせたら、ショパンとかラヴェルとか答えそうです
第3楽章はピアノとオケとの丁々発止の軽快な演奏が繰り広げられ、高速演奏でフィナーレを駆け抜けました
満場の拍手とブラボーが飛び交う中、カーテンコールが繰り返され、アンナはショスタコーヴィチ「24の前奏曲 作品34」から「第10番 嬰ハ短調」を軽妙洒脱に演奏、再び会場いっぱいの拍手を浴びました
プログラム後半はショスタコーヴィチ「交響曲第5番 ニ短調 作品47」です この曲は1937年に作曲、1937年11月21日にレニングラードで初演されました
第1楽章「モデラート」、第2楽章「アレグレット」、第3楽章「ラルゴ」、第4楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」の4楽章から成ります
ウルバンスキはプログラム冊子「月刊都響」5-6月号にこの曲についての想いを寄せていますが、次のように語っているのが印象的です
「表面上この交響曲は、オーケストラの華麗な響きに満ち、楽観的で『幸せ』そうに聴こえます しかし私は、この交響曲こそ極めて悲劇的であると感じています
注意深く聴けば、多層的な意味を発見することができるでしょう
」
弦楽器は16型に拡大し、ハープ2台、ピアノ、チェレスタが舞台下手にスタンバイします
ウルバンスキの指揮で第1楽章が開始されます 冒頭のカノンの序奏主題は悲痛な叫びのように聴こえます
オーボエ、フルートの抒情的な演奏が素晴らしい
第2楽章はスケルツォですが、増田良介氏が「プログラム・ノート」に書いている通り、「マーラー風の苦くグロテスクなユーモア」が感じられます
この楽章でも木管楽器群の演奏が冴えています
第3楽章「ラルゴ」では、ハープの演奏に乗せて奏でられるフルートの叙情的な演奏が素晴らしい
また、弦楽器による渾身の演奏は悲痛な叫びのようです
第4楽章は、”普通の指揮者”だと楽観的なイケイケドンドンのどんちゃん騒ぎになりがちですが、ウルバンスキのタクトによる演奏は全く逆です
あくまでも冷静沈着そのもので、ソロモン・ヴォルコフ編「ショスタコーヴィチの証言」(1979年刊行)の内容に沿った「権力に強いられた歓喜」として捉えた演奏となっています
終結部の「輝かしい勝利」はあくまで見せかけで、本当はショスタコーヴィチに圧力をかけた当局への抗議であるかのように鳴り響きました
私は何回この曲をライブで聴いてきたか数え切れませんが、このような演奏を聴いたのは初めてです ウルバンスキのこの曲に対するアプローチは終始一貫していました
満場の拍手とブラボーの嵐がステージに押し寄せ、カーテンコールが繰り返されました 久しぶりに聴いたウルバンスキのショスタコーヴィチ、素晴らしかったです
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます