17日(土)。昨日の朝日朝刊 文化面に「新国立劇場 コロナで打撃 公演中止による収入減6億円」という見出しの記事が載っていました 超訳すると、
「新国立劇場は、新型コロナウイルス感染拡大防止のための公演中止などによる収入減が昨年度は約6億円だったと発表した 自由に使える資産に当たる一般正味財産を取り崩しており、今後の予算編成に影響の出る可能性も示された 運営財団によると、主催公演のうちオペラは5演目17公演、バレエは5演目31公演、演劇は5演目51公演が中止された このため、入場料収入4億4500万円を払い戻ししたほか、貸し劇場収入も1億4300万円減った 昨年度の経常収支は前年度比10億4400万円減の62億3千万円。一般正味財産は今年度末で約1億4400万円と、この2年で8割以上も減る見通し。林田直樹常務理事は『2,3年前から公演の準備を進めているので大きな部分抑制は難しい。施設維持管理費を節約し、各部署には不要不急の支出は控えるよう呼びかけている。芸術監督には”集客力のある作品”の検討をお願いしている』と話した」
これは極めて深刻な状況です とくに林田常務の「芸術監督には『集客力のある作品』の検討をお願いしている」という発言は、収益の改善の面からは一定の理解は出来るものの、観客の一人としては「新演出によるオペラ公演」が期待できなくなるので、上演作品の固定化と演出のマンネリ化が加速するのではないかと心配します
一昨日、新国立劇場から2021/2022シーズンの第1回「チェネレントラ」と第2回「ニュルンベルクのマイスタージンガー」のチケットが送られてきました 例年だと、1年分(全10回)のチケットがまとめて送られてくるはずですが、今シーズンは7回に分けて発送されることになっています これは、2020/2021シーズンでは、年間チケット全10枚を販売のうえチケットをまとめて発送した後、コロナ禍の影響ですべて払い戻しのうえ、その都度チケットを販売する方式に移行したため、二度とこのようなリスクを負わないで済むようにしたためです チケット代の前期5演目分は6月に引き落としされ、後期5演目分は9月以降に引き落とされる予定になっています コロナが収まらない限り、こうした変則的な対応が続き、主催者側も観衆側も不便を強いられることになります 一刻も早くコロナが収まることを祈るばかりです
ということで、わが家に来てから今日で2380日目を迎え、バイデン米大統領は15日、食糧不足や強権的な政府に対する抗議デモが起きた社会主義国キューバについて「残念ながら失敗した国家で、市民を抑圧している」と批判した というニュースを見て感想を述べるモコタロです
バイデン大統領は 食糧やワクチンについて キューバしのぎの支援はしないらしい
昨日、夕食に「チキンステーキ」を作りました もう慣れたもので、今回も美味しく出来ました お酒はやっぱりワインですね
新文芸坐で岨手貴子監督による2021年製作映画「あのこは貴族」(124分)を観ました
樺原華子(門脇麦)は都会に生まれ、箱入り娘として育てられた20代後半の女性。「結婚=幸せ」と信じて疑わない彼女は、結婚を考えていた恋人に振られ、初めて人生の岐路に立たされる あらゆる手段でお相手探しに奔走し、ハンサムで家柄も良い弁護士の幸一郎(高良健吾)との結婚も決まるが・・・ 一方、富山から上京しアルバイトをしながら大学に通ったものの 経済的な理由で中退した美紀(水原希子)は、恋人もおらず 都会にしがみつく意味を見い出せないでした そんな2人の人生が幸一郎を介して交錯したことで、それぞれの思いもよらない世界が開けていく
この作品は、山内マリコの同名小説を原作に、同じ都会に暮らしながら全く異なる生き方をする2人の女性が、それぞれの人生を切り開こうとする姿を描いています
榛原華子の生まれたところは「ショート―」となっていますが、これは言うまでもなく渋谷区松濤で、セレブが住む高級住宅地として知られている地域です
それにしても・・・と思うのは、門脇麦ほど「いいとこのお嬢さん」にぴったりの女優もいないだろうな、ということです 言葉遣いから、歩き方から、佇まいから、すべてが家柄の良い家庭に生まれたお嬢さんそのものです スクリーンの彼女を見て、思わず「このこは貴族」と呟いてしまいました 役柄を演じているという感じがまったくありません
一方、水原希子が演じる美紀は、〇〇〇塾大学に通っていますが、「親は代議士もいれば、歴史上の名士の子孫もいる」という学生同士の会話からも、慶應義塾大学がモデルになっていることが分かります そして、その大学には幸一郎のように幼稚園から大学までエスカレーター式に持ち上がってきた家柄の良い「内部生」と、試験を受けて入学してきた「外部生」とが混在していて、「内部生」が「外部生」の上にいるという階級社会が成立しているとされています 「外部生」の美紀は地方から出てきて、アルバイトをしながらアパート暮らしをして通学していますが、「内部生」たちは親の潤沢な資金援助により、ティータイムに一人5000円近くも使って平然としています それを見た美紀たちは「あの人たちは貴族?」と言います。ひょっとして、現在でもこういう階級社会は続いているのかもしれません
大学の中に「内部生」と「外部生」のヒエラルキーがあるということでは、天皇家をはじめとする皇室が通う学習院も同じような傾向にあると思います 初等科からエスカレーター式に大学まで上がってくる「内部生」と、大学入試試験で入ってくる「外部生」が混在し、「天皇家 ー その他の内部生 ー 外部生」というヒエラルキーが出来上がっているように見えます
さて、大学の中に「内部生」と「外部生」のヒエラルキーがあるとしても、問題は卒業してからどうするかです 華子は幸一郎と結婚しますが、結局 子供は授からず、「家と家との結婚」に疲れて離婚してしまい、ヴァイオリニストになった学友のマネージャーをすることで社会デビューします 一方、美紀は大学時代の親友に誘われて一緒に起業することになります 大学を卒業した彼らは「同じ階級」に収まり、新しい道を切り開くことになります
どんな階級に生まれても、それは親や先祖の功績であって本人の力ではありません いま音楽大学に通っている若者たちに問いたいのは、「確かに試験を通って入学したかもしれないけれど、いったい誰が授業料を払うのか? 高価な楽器は誰が買うのか?」ということです 中にはアルバイトをしながら学費を払うという高邁な学生もいるかもしれませんが、多くの学生は親がかりで大学に通っているのでしょう その意味では、音大生は「上の階層」にいると思われます。そこで再び問いたいと思います。大学を卒業してどうしますか? 競争相手は掃いて捨てるほどいます。引き続き 親を頼りに「上の階層」で安住しますか? 自分の力で道を切り開いて新しい「上の階層」に飛躍しますか 頑張ってください。陰ながら応援しています
ところで、現代の日本社会では、東大をはじめとする(授業料の安い)国立大学に入学するのは資産のある家庭の子女が圧倒的に多いといいます そういう子供たちが社会に出て資産を築き、結婚して その子供たちに高度な教育を受けさせる・・・・という格差社会の連鎖が続いています 今こそ われわれは、マイケル・サンデルの「実力も運のうち 能力主義は正義か?」(原題:THE TYRANNY OF MERIT)を読まなければならないのかもしれません
新文芸坐でいただいたポストカードです
※コメント投稿者のブログIDはブログ作成者のみに通知されます