4日(土)。わが家に来てから178日目を迎え、重大な決意でハンストに臨むモコタロです
ゴハンくれるまで ここから一歩も動かないからね!
閑話休題
毎週木曜の朝日夕刊に連載している黒木瞳さんのコラム「ひみつのHちゃん」を楽しみにしています 2日の見出しは「辞書を引くのは、やぶさかではない」でした。ヘアメイクの女性から「監督と話をしている時に(瞳さんは)よく『監督の指示に同意するのはやぶさかではない』と言っているけれど、”やぶさか”ってどんな意味ですか?」と訊かれたそうです
念のため家に帰り中学時代から使っている国語辞典で調べたら「喜んでする」「ためらわずにする」という意味で、自分の解釈は間違っていなかったと安堵しています
さらに「本来の意味でなく、”仕方なく~する”という意味で使っている人の方が多いらしいから驚きだ」と書いています
私も”驚き”の対象者の一人です。てっきり”仕方ないけど~する”という意味かと思っていました それにしても瞳さん、国語辞典を中学の時から使っているとは物持ちの良い人ですね
これを機会に会社の引き出しに入っている岩波国語辞典を見たら昭和54年発行のものでした。ほぼ36年前から使っていることになります
ということで、このコラム、いつも勉強になるのを認めるのにやぶさかではありません
も一度、閑話休題
昨夕、初台の東京オペラシティコンサートホールでバッハ・コレギウム・ジャパン(B.C.J)の第112回定期演奏会を聴きました 新年度第1回目のプログラムはJ.S.バッハの「マタイ受難曲BWV244」です
出演はソプラノ1=ジョアン・ラン、ソプラノⅡ=藤崎美苗、アルト1=オリヴィア・フェアミューレン、アルトⅡ=青木洋也、テノール1/エヴァンゲリスト=ベルンハルト・ベルヒトルト、テノールⅡ=谷口洋介、バス1/イエス=マティアス・ヴィンクラー、バスⅡ=浦野智行、合唱・管弦楽=バッハ・コレギウム・ジャパン、指揮は鈴木雅明です
前日の歌劇「運命の力」同様、午後6時半の開演なので終業時間とともに職場を飛び出し、地下鉄で初台に向かいました 休憩時間がどのくらいあるのか分からないので、コンビニでオニギリとお茶を買って入場しました
6時15分でした。ロビーにはプログラムを求める聴衆が2つの売り場に長い列を作っていました
「当日プログラム 1冊1,600円」の表示にビックリ
B.C.Jのプログラムは充実しているので買わない訳にはいきません
買ったのはいいけれど、開演時間が迫っていてゆっくり読んでいる時間がありません
鈴木雅明氏の巻頭言だけ読んで開演を待ちました
会場はほぼ満席と言っても良いでしょう。しかし、これは毎年のことで、問題は第2回目以降の客の入りなのです 第1回目の「マタイ」が終わると、定期会員以外の人々は「カンタータ」には目もくれなくなってしまうのです。これがB.C.Jの課題です
拍手の中、オーケストラのメンバーが登場します。「マタイ受難曲」の時は、弦楽器、管楽器とも左右対称に分かれます 向かって左サイドが第Ⅰ群、右サイドが第Ⅱ群です。そして、真ん中にチェロ、ヴィオローネ、オルガンなどの通奏低音がスタンバイします
第Ⅰ群のコンマスは若松夏美、第Ⅱ群のコンマスは高田あずみです。管楽器群は、第Ⅰ群にB.C.Jレギュラーの菅きよみ、前田りり子(以上フラウト・トラヴェルソ)、三宮正満(オーボエ、オーボエ・ダ・カッチャ)が控えています
通奏低音には読響のコントラバス首席の西澤誠治、新日本フィルのチェロ首席の武澤秀平、オルガンの今井奈緒子の顔が見えます
今回はチェロの鈴木秀美、オルガンの鈴木優人は出演しないようです
大きな拍手の中、ソリスト達を交えて合唱団が入場します。次いで指揮の鈴木雅明が白髪をなびかせて颯爽と登場します 例によって彼はタクトを使いません。鈴木雅明の両手が上がり、合唱により「来たれ、娘たちよ、嘆き悲しむ我をば支えよ」と歌われ「マタイ受難曲」が始まります
B.C.Jの定期会員になった10年程前から、毎年4月の第1回公演は「マタイ受難曲」か「ヨハネ受難曲」を聴いてきました この10年を振り返ると感慨深いものがあります。正味3時間に及ぶ”地味な”「受難曲」を毎年の今ごろ聴き続けてきたことになります
はっきり言って、3時間は長いな、と思ったことは2度や3度ではありません
バッハはよくもこれほどの長大な曲を作曲したものだ、と感動さえ覚えます
B.C.Jの「マタイ」のエヴァンゲリスト(福音史家)と言えばゲルト・テュルクというのが定番ですが、この日はベルンハルト・ベルヒトルトという人が歌います。名前からしてドイツ・オーストリア系の人でしょうか。この人が、テュルクに勝るとも劣らない福音史家を演じました この役柄は最初から最後までほぼ出ずっぱりですが、それを物ともせず立派に役割を務めました
それと同じくらい驚いたのはイエスを歌ったマティアス・ヴィンクラーです。プログラムに載ったプロフィールを見てビックリしたのですが、1990年ミュンヘンの生まれとのこと。ということは若干25歳ということですが、その風貌といい歌いっぷりといい、もはや中堅と言っても良いほど立派なイエスを歌っていました
女性陣では、B.C.Jのレギュラー的存在であるソプラノのジョアン・ランの存在が飛び抜けていました よくコントロールされたノンビブラートの美しい声が、会場の隅々まで響き渡ります
アルトのオリヴィア・フェアミューレンも美しい歌声でアリアを歌い上げていました。日本人歌手では藤崎美苗が光っていました
終演時間は午後9時55分でした。正直言って、連日10時前後の終演はキツイですね
休憩時間に読んだ「プログラム・ノート」に「鈴木雅明にきく≪マタイ受難曲≫」という記事がインタビュー形式で載っていました。最後に「来場者の皆さまにメッセージをお願いします」と言われて、鈴木は
「3時間にも及ぶ大曲ですから、様々な鑑賞の仕方があると思います。ストーリーを追っていくのも良いですし、印象的なアリアを楽しむのも良いでしょう。本当に長丁場なので、終わるのを待つのではなく、『この曲は永遠に続くのだ』と開き直って、音楽に身を委ねていただければと思います オペラの場合は、現実とかけ離れていればいるほど、楽しい物語になるのでしょうが、バッハの音楽は、その逆に非常にリアルなものが、心の深いところに入ってきます
それがバッハの音楽の素晴らしさでもあり、怖さでもあるのです。だから、『ああ、もう我慢できない!』と思ったら、いつ逃げ出してもいいですよ。ちゃんと非常口は開かれていますから、安心してください
」
と答えています。これを読んで救われた想いがしました 今までは、3時間の間、一音でも聴き逃すまいと終始緊張して耳を傾けていました。これこそ”受難”ではないか、と思ったりしましたが、休憩後は福音史家をあまり気にしないで、歌手が歌う「アリア」を中心に楽しむことにしました
すると、肩の力が抜けたのか、良い意味で気楽に「受難曲」が聴けるようになりました
繰り返されるカーテンコールの間、一人でも多くの人が6月以降の定期公演も聴きに来てくれるといいな、と思っていました。バッハ・コレギウム・ジャパンは世界が認める数少ない日本の音楽集団ですから
昨日もご一緒でしたね。
Tora san, haben Sie gestern abend ein Lamm gegessen?
おにぎりでしたね。
Nr.54のChoralも素晴らしかったですね。とくに後半部は、凄みが感じられました。プログラムに書かずに、ルター500プロジェクトに向けてで、コメントしていますね。本当に聴き方は人それぞれで良いと思いますが、こちらにも注目して欲しいと思いました。今年度から始まるコラールカンタータシリーズへの期待が高まりました。
また、よろしくお願いします。