人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

モーツアルト「グラン・パルティータK361」を聴く~トッパンホール11周年バースデーコンサート

2011年10月02日 08時07分39秒 | 日記

2日(日).昨夜11時からEテレで放映された「スコラ 坂本龍一 音楽の学校」第1回目は面白かったですね.「古典派」の1回目でしたが,「古典派とは?」「ソナタ形式とは?」などクラシック音楽の基本的な用語を分かりやすく解説していました.普段は分かっているつもりでいても,いざ言葉で説明しようとすると思うようにできないことをあらためて感じました.来週土曜日が楽しみです

 閑話休題 

昨日,「トッパンホール11周年バースデーコンサート」を聴いてきました このホールはトッパン印刷本社ビルの1階にありますが,3時の開場時間まで若干時間があったので,併設の印刷博物館P&Pギャラリーで「日本のロングセラー商品展」を見学してきました.例えば雪印バターのパッケージは1925年に世に出たとか,カルピスのデザインは1919年に登場したとか,いろいろ勉強になりました後で家に帰ってから”デザイナーのタマゴ”の娘に教えてあげました.

 閑話休題 

さて,この日のプログラムはモーツアルトの①セレナード第12番ハ短調K388”ナハトムジーク”と②セレナード第10番変ロ長調K361"グラン・パルティータ”です.演奏するのはソロイスツ・ヨーロピアンズ・ルクセンブルクのオーボエ主席・渡辺克也を中心にクラリネットの四戸世紀,ホルンの吉永雅人(新日フィル首席),上間善之(東響首席),ファゴットの吉田将(読響首席)など,その道のプロ総勢13人です

18世紀後半から19世紀初頭にかけて,ウィーンをはじめヨーロッパで盛んだったのが管楽合奏の「ハルモニームジーク」でした.オーボエ,クラリネット,ファゴット,ホルン各2本を標準編成とし,低音の補強にコントラバスが加わるケースが多かったといいます.セレナードは野外で演奏される音楽ですが,管楽器は野外でも音が埋もれにくいということで使用されたようです

最初の「セレナード第12番ハ短調K388”ナハトムジーク”」は,リヒテンシュタイン候アロイス1世の主催する音楽会のために書かれました.ハ短調という調性の選択もあり娯楽的というよりシリアスな雰囲気を醸し出しています.

楽器の編成は左からオーボエ2,ホルン2,ファゴット2,クラリネット2という配置です.男性陣は黒一色ですが,オーボエの本間郁子はゴールドのブラウス,ブラックのスラックス,ホルンの藤田麻理絵はグリーンのドレス,ファゴットの佐藤由起はブルーのドレスで登場しました

オーボエの渡辺克也がリードする形で演奏が始まります.最初の和音から,もうモーツアルトの世界です.第1楽章アレグロ,第2楽章アンダンテ,第3楽章メヌエット・イン・カノーネ,第4楽章アレグロという構成です.管楽器のプロ集団による堂々たる演奏です

休憩後の「セレナード第10番変ロ長調K361”グランパルティータ”」は,管楽器8人の編成にバセットホルン(低音クラリネット)とホルンを各2本加え,さらにコントラバスを加えた13人編成で演奏されます.ただ,コントラバスに代えてコントラファゴットで演奏するスタイルは昔から広く行われてきました.今回の演奏もそれに倣っています.13人の管楽器で演奏するため別名「13管楽器のためのセレナード」と呼ばれています.なお,「グランパルティータ」という名称は第3者が楽譜に書き込んだ「グラン・パルティッタ」という言葉に由来すると言われています.モーツアルトの命名ではありません

1曲目の「セレナード第12番」に加えて,ホルン2人,バセットホルン2人,コントラファゴット1人が加わります.例によって男性陣は黒一色ですが,ホルンの松嶋千絵はパープルのドレス,コントラファゴットの岩佐雅美はブラックの上下で登場しました 編成は左からオーボエ2,ホルン4,中央にコントラファゴット1,ファゴット2,バゼットホルン2,クラリネット2という配置です.

第1楽章ラルゴーアレグロ・モルト,第2楽章メヌエット,第3楽章アダージョ,第4楽章アレグレット,第5楽章アダージョ,第6楽章アンダンテ,第7楽章アレグロ・モルトの7楽章から成る,まさにグラン(大規模な)パルティータです.

全楽章の演奏を通じて感じるのは,一人一人の演奏能力の高さです.その上で見事なアンサンブルが達成されています.それを可能にしているのは,言うまでもなくモーツアルトの音楽そのものです.彼はどこでどの楽器を演奏させれば一番効果があるか,あるいはどの楽器とどの楽器を組み合わせて演奏させれば最もいい結果が出るか,すべて見通したうえで作曲しています

第3楽章アダージョは映画「アマデウス」で,サリエリがモーツアルトの天才を認める際に使われた音楽です.まさに天から降ってくるような音楽です.このメロディーを聴くたびにあまりの感動で背筋が寒くなります

第7楽章が終わるや否や大きなが会場を満たしました.それに応えて,出演者を代表してオーボエの渡辺克也があいさつします.

「本日は満席御礼ということで,ありがとうございます.”グランパルティータ”は素晴らしい曲なので,もっと多く演奏する機会があってもいいと思うのですが,残念ながらそういう機会はほとんどありません 今回,この日のために昨日と一昨日の2日間このメンバーでリハーサルをやったのですが,すごく楽しかったです.今,日本は大震災とその後の原発事故などの影響で,生きるとは何か,われわれ音楽家にとっては音楽とは何かをあらためて考えさせられる機会になっています.この”グランパルティータ”は,その答えといっていい曲です.この曲は生きる素晴らしさを教えてくれる,そういう曲です.アンコールに何の曲を演奏したらよいか,いろいろと悩みましたが”グランパルティータ”を演奏した後でレベルの低い曲を演奏することはできません.今日の公演のデザートとして,いま演奏した”グランパルティータ”の最後の楽章を演奏します

拍手に続いてアンコール曲が始まりました.演奏が始まり,一段落すると約1名から拍手が起こりました.すると渡辺が「まだ続きます」と言って(ここで笑いが)演奏に戻りました.実は,彼らは第6楽章のフィナーレから演奏を始め,続いて第7楽章を演奏したのです.その方が演奏効果があるとの判断があったのでしょう.約1名はかなりご年配の男性の方でした.”グランパルティータ”でフライングしたグランパ”ですか・・・・・・山田君,座布団1枚取ってください!

それにしても,渡辺克也の言うとおり,これほどの名曲が演奏される機会が,あまりにも少なすぎます.私も今回を含めて今年2回しか生で聴いていません.機会があれば何回でも聴きたいと思います.お勧めCDはオルフェウス室内管弦楽団による1987年の録音です

 

      

      

 

 

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