人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

シューベルト「八重奏曲」、クロンマー「クラリネット四重奏曲」を聴く ~ 新日本フィル室内楽シリーズ:重松希巳江、河村幹子、藤田麻理絵、吉村知子ほか

2021年06月24日 08時04分17秒 | 日記

24日(木)その2.よい子は「その1」も見てね モコタロはそちらに出演しています

昨夕、すみだトリフォニーホール(小ホール)で新日本フィル「室内楽シリーズ 第141回・重松希巳江プロデュース編」公演を聴きました プログラムは①クロンマー「クラリネット四重奏曲 ニ長調 作品82」、②シューベルト「八重奏曲 ヘ長調 作品166.D803」です 出演はクラリネット=重松希巳江、ヴァイオリン=吉村知子、竹中勇人、ヴィオラ=脇屋冴子、チェロ=飯島哲蔵、コントラバス=菅沼希望、ファゴット=河村幹子、ホルン=藤田麻理絵です

 

     

 

1曲目はクロンマー「クラリネット四重奏曲 ニ長調 作品82」です この曲はモーツアルトとほぼ同じ時代に活躍したチェコの作曲家フランツ・クロンマー(1759‐1831)が1816年頃に出版した作品です 彼の総作品数は何と300曲を超えるそうです 第1楽章「アレグロ・モデラート」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「メヌエット:アレグレット」、第4楽章「ロンド」の4楽章から成ります

左から吉村、脇屋、重松、飯島という並びでスタンバイします ところで、開演30分前に行われた「プレトーク」で今回の仕掛け人・重松さんが次のように話をしていました

「1年前に新日本フィルを退団された吉村さんは 現役時代”ボス”と呼ばれていました    言いにくいことをビシバシと指摘して恐れられていました    今回も久しぶりに現役組とリハーサルに当たりましたが、相変わらず鋭い指摘をしていました     ボスには必ず”裏ボス”がつきものです。現在、”裏ボス”はヴィオラを弾いている脇屋さんです     リハーサルでは若手の男性陣に鋭い指示を飛ばしていました

吉村さんのボスは知っていましたが、あの大人しそうな脇屋さんが裏ボスだとは予想外でした 人は見かけによらないものです でも、実力がない人はボスや裏ボスにはなれませんから、本当は頼りになる存在なのだと思います(ナイス・フォロー

4人の演奏で曲全体を聴いた印象は、ニ長調の曲なので明るく愉悦感に満ちた曲想ですが、重松のクラリネットを中心にシンプルながら味わいのある演奏が聴けました とくに第3楽章は冒頭でクラリネットがカッコウの鳴き声のようなフレーズを吹くのが印象的でした

 

     

 

プログラム後半はシューベルト「八重奏曲 ヘ長調 作品166.D803」です この曲はフランツ・シューベルト(1797‐1828)がクラリネットの愛好者トロイア伯フェルディナントの依頼により1824年に作曲したクラリネット、ホルン、ファゴット、ヴァイオリン(2)、ヴィオラ、チェロ、コントラバスのための作品です 第1楽章「アダージョ ~ アレグロ」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ ~ トリオ」、第4楽章「アンダンテ・ウイズ・ヴァリエーション」、第5楽章「メヌエット:アレグレット」、第6楽章「アンダンテ・モルト ~ アレグロ」の6楽章から成ります

前に左から吉村、竹中、脇屋、飯島、後列に左から藤田、河村、重松、そして菅沼という並びでスタンバイします 「七重奏曲」だったらブーメラン型に一列で配置するのでしょうが、楽器が一つ増えるとそうもいかないようです 第1楽章では、ホルンの音が若干大きすぎるきらいがありましたが、第2楽章以降はまったく気にならなくなりました むしろ、一番 安定した音が出しにくいホルンを藤田麻理絵は良く制御して演奏したと思います 第2楽章では重松の抒情的な演奏が素晴らしい 私はこの楽章が一番好きです。第3楽章はシューベルト特有のスケルツォです 小気味の良い演奏が聴けました 第4楽章で感心したのは、ベートーヴェンは変奏曲が得意でしたが、シューベルトも負けず劣らず歌心に満ちた変奏曲を書いたということです 第5楽章では河村のファゴット、重松のクラリネットの演奏が冴えわたりました 第6楽章では冒頭のアンダンテ・モルトから、一転してアレグロに移るところで、ベートーヴェンの「七重奏曲」にソックリだなと思いました それを言うなら、この曲全体が「ベートーヴェンの『七重奏曲』のような作品を書いて欲しい」という依頼に応じて書いたものなので、曲の作り方全体がベートーヴェン風なのです

最後の音が鳴り終わって、会場いっぱいの拍手がステージ上の8人に送られ、カーテンコールが繰り返されました 実は、NAXOSのCDでこの曲を予習してきたのですが、生で聴いた8人の演奏の方がよっぽど素晴らしかったです CDと違って、生演奏は演奏者の熱が伝わってきます

 

     

 

実は、この日午前は 池袋での「芸劇ブランチコンサート」と 新日本フィルの「トパーズ公演 公開リハーサル」が同じ時間帯で重なってしまったので、チケットを買ってあるブランチコンサートを聴いたのですが、唯一の心残りは新日本フィル・パトロネージュ部の登原さんとお話しできないことでした ひょっとして夜の「室内楽シリーズ」でお会いできるかもしれないと淡い期待を抱いて出かけました 会場では、登原さんらしき人がお客さんと話をしていたのですが、間違えては失礼だと思い声をかけませんでした すると、登原さんの方で気がついて 声をかけてくれました。彼女は普段フェイスシールドとマスクを着用しているのですが、この日はフェイスシールドを付けておらず いつもと雰囲気が違ったので声をかけるのをためらったところもありました

登原さんの所属するパトロネージュ部は、新日本フィルの経営を支えてくれる賛助会員や維持会員を担当する部門ですが、話を聞くと、昨年から今年にかけては、コロナ禍の影響で経営環境が厳しく、新シーズンの定期会員も例年ほどは見込めないようです 一般企業を回ってオーケストラを支援してくれるようお願いしているが、コロナ禍の影響で企業も厳しい経営状況にあるので、特にクラシック音楽に直接関心を持たない企業の担当者の理解を得て、財政面での支援をしてもらうところまでもっていくのが非常に困難なようです 一番望ましいのは定期演奏会を中心に集客力を高めることです 登原さんから「先日の読響のコンサートは満席になったと聞きました」という話が出ましたが、読響の土曜・日曜マチネ―シリーズ(ヴァィグレの指揮で反田恭平がシューマンのピアノ協奏曲を弾いた公演)のことです 人気のあるソリストや指揮者を呼べば集客力を高めることはできますが、それには相当のコストがかかります 年間シリーズの中で何度かそういうコンサートを開くことは出来るかも知れませんが、毎回やっていたらオケが破産します 読響(読売新聞社などが母体)、N響(NHKが母体)、都響(東京都が母体)などは経営基盤がしっかりしているので まだ良いですが、新日本フィルをはじめ自主運営オーケストラは経営的に厳しいものがあります さらに、東京だけでもプロのオーケストラは新日本フィルをはじめ、N響、読響、東響、東京フィル、東京シティ・フィル、日本フィル、都響、東京ニュー・シティ管と9つもあり、客の争奪戦が続いているのが現状です

こうした厳しい状況の中で 各オーケストラは それぞれの特色を出して他のオケとの差別化を図らなければ生き残れません 登原さんには、集客の一つの方法として、将来有望な若手の指揮者を起用して育て、時間をかけて集客につなげることを提案しましたが、すぐに採算が取れる方法ではありません いま、オーケストラはいかにして集客力を高めるか、いかにして経営基盤の安定化を図るかについて悩んでいます 人気の指揮者やソリストを呼ぶのか、プログラム編成に工夫を凝らすのか(大曲主義でいくか、毎回 協奏曲を入れるか、チクルス制を採用するか等)、料金設定を見直して より多くの人が聴けるようにするのか、聴衆の高齢化を踏まえて 将来の聴衆を育てるため 学校へのアウトリーチを充実させたり 子供の入場料を無料にするのか、賛助会員・維持会員制度を充実させてオケのファンを増やす努力をするのか、室内楽シリーズのような演奏家と聴衆が身近で向き合うことが出来るコンサートの充実を図るのか・・・アプローチの方法はいくつもありそうな気がします さらに新日本フィル特有の課題としては、上岡敏之氏の後任の音楽監督を出来るだけ早く選任することです それには集客力が期待できる音楽監督でなければなりません 直面する課題が山積するなか、新日本フィルは楽団員はもちろんのこと、登原さんをはじめ事務局の皆さんも毎日、オケの方向性を模索しながら懸命に頑張っています 私も微力ながら出来るだけの支援はしようと思っています

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伊藤亮太郎 ✕ 佐々木亮 ✕ 香月麗 ✕ 清水和音でモーツアルト「ピアノ四重奏曲第2番」、ハイドン「ピアノ三重奏曲第25番”ジプシー・ロンド”」他を聴く ~ 芸劇ブランチコンサート

2021年06月24日 06時55分14秒 | 日記

24日(木)その1.わが家に来てから今日で2357日目を迎え、東京都は23日、妊娠の可能性があるとしていた上野動物園のジャイアントパンダ「シンシン」が同日未明に2頭を出産したが、名前は一般公募にするかを含め まだ決まっていない  というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     暗い話題ばかりの世の中に生まれたから「シェイシェイ」と「ペイペイ」はどうよ

 

         

 

昨日、夕食に「トンテキ」「生野菜サラダ」「卵スープ」を作りました   これまで塩コショウの味付けによる「豚肉のソテー」を作ったことはありますが、砂糖、醤油、味醂、オイスターソース、生姜、ニンニクのタレで焼いた「トンテキ」は今回が初挑戦です レシピ通りに作れば何とか美味しく出来るものです

 

     

 

         

 

昨日、午前11時から芸劇で「ブランチコンサート」を、午後7時から「新日本フィル室内楽シリーズ」を聴きました ここでは東京芸術劇場コンサートホールで開かれた「第30回 芸劇ブランチコンサート ~ 古典派こそクラシック」公演について書きます

プログラムは①ハイドン「ピアノ三重奏曲第25番 ト長調 ”ジプシー・ロンド” 」、②ベートーヴェン「弦楽三重奏曲第4番 ハ短調 作品9-3」、③モーツアルト「ピアノ四重奏曲第2番 変ホ長調 K.493」です 演奏はヴァイオリン=伊藤亮太郎(N響コンマス)、ヴィオラ=佐々木亮(N響首席)、チェロ=香月麗、ピアノ=清水和音です

 

     

 

会場は通常配置ですが7割くらい入っていると思われます 確かに1時間強のコンサートで2,400円は魅力です

1曲目はハイドン「ピアノ三重奏曲第25番 ト長調 ”ジプシー・ロンド” 」です この曲はフランツ・ヨーゼフ・ハイドン(1732‐1800)がロンドン滞在中の1794~95年に書かれたと見られています 「ジプシー・ロンド」の愛称は、第3楽章「ハンガリー風ロンド」に基づいています 第1楽章「アンダンテ」、第2楽章「ポーコ・アダージョ」、第3楽章「ハンガリー風ロンド:プレスト」の3楽章から成ります

伊藤のヴァイオリン、香月のチェロ、清水のピアノによる演奏です。本シリーズ初登場の香月麗(かつき・うらら)は愛知県出身、桐朋学園大学ソリスト・ディプロマコースを修了。2017年第86回日本音楽コンクール第1位を受賞 現在ローザンヌ高等音楽院大学院で研鑽を積んでいます

全楽章を通じて聴いた印象は、3つの楽器が良く溶け合って美しく響いていたということです 伊藤のヴァイオリンが抜群に巧いのは言うまでもありませんが、香月のチェロが控えめながらもしっかりと存在感を示していました

演奏後、進行役兼任の清水氏が香月さんにインタビューしましたが、清水氏はいつものようにモゴモゴトと早口で喋るので半分以上は聴きとれません それでも何とか聴きとれたのは、香月さんに対して「現在は男性の若手チェリストは結構いるけれど、女性の若手はあまりいないので、売り出すチャンスかもしれない」と話していたことです 伊東裕、伊藤悠貴、佐藤晴真・・・と挙げていくと確かにその通りだと思います きっと売れると思います

2曲目はベートーヴェン「弦楽三重奏曲第4番 ハ短調 作品9-3」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770‐1827)が1797年から翌98年にかけて作曲した3つの弦楽三重奏曲のひとつです 第1楽章「アレグロ・コン・スピーリト」、第2楽章「アダージョ・コン・エスプレッシオーネ」、第3楽章「スケルツォ:アレグロ・モルト・エ・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「フィナーレ:プレスト」の4楽章から成ります

伊藤、佐々木、香月の3人による演奏ですが、ベートーヴェンの宿命の調性「ハ短調」を反映したシリアスで悲劇的な性格が良く表れていました 弦楽だけの三重奏ということで、あまり面白みがないかな・・・と思いましたが、そんなことはなく起伏に富んだ魅力的な曲でした 演奏した3人に共通しているのは「われが われが・・」という自己主張の強さがなく、お互いの立場を尊重しながらアンサンブルを重視する姿勢が見られる点だと思います

 

     

 

最後の曲はモーツアルト「ピアノ四重奏曲第2番 変ホ長調 K.493」です この曲はウォルフガング・アマデウス・モーツァルト(1756‐1791)が出版商のホフマイスターの依頼で1786年にヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、ピアノのために作曲した作品です 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「ラルゲット」、第3楽章「アレグレット」の3楽章から成ります 

4人の演奏で第1楽章に入りますが、愉悦感に満ちた明朗な音楽が奏でられます 4人とも肩の力が抜けた柔軟な演奏で、アンサンブルが見事に揃っています 第2楽章は穏やかでとても良い演奏です 第3楽章は愉悦感に満ちたピアノから入りますが、終始ピアノが活躍します。弦楽器対ピアノの饗宴が楽しめました

 

     

 

演奏終了後、帰りがけに10月以降の「ブランチコンサート」のチケットを3回分購入しました。下のフライヤーにある通り、どの回も充実のプログラムです

 

     

     

 

この後、一旦自宅に戻り一休みしてから夕食を作って食べ、次の会場、すみだトリフォニーホール(小ホール)に向かいました 「新日本フィル室内楽シリーズ」については「その2」をご覧ください

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