人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

茂木大輔「拍手のルール~秘伝クラシック鑑賞術」を読む

2011年10月29日 09時06分09秒 | 日記

29日(土).昨日,ビルの防災訓練を実施しました.大地震が発生,6階の事務所から火災が出たという想定で,通報連絡,消化,避難,救護の総合的な訓練です.当然のことですが約1時間の間に6回ほど非常放送が全館に流れます.これについては前日に,「会議があって,講師から話を聞く時間帯なので,その会議室だけ音が出ないようにできないか,それが出来なければせめて音を小さくするが出来ないか」という”要望”が出されました.また,当日は,最初の放送を流した段階で”音を小さく出来ないか”といった電話がきました.非常時の全館放送は法律で決められているので,特定の部屋だけ流さないとか,音を小さくすることはできないとお答えしました.本当に緊急事態が起きたことを考えれば,そんなのんびりしたことを言っている場合ではないでしょう

避難が終わった方たちを対象に「煙ハウス」を体験してもらったり,消火器の操作をしてもらったり,AEDや油圧式ジャッキの体験をしてもらったりしました.これには準備が大変で,防災センターのメンバーに丸の内消防署本省と有楽町出張所に煙ハウスと消火器50本を借りに行ってもらったり,われわれも含めて,煙ハウスを広場に組み立てたりしなければなりません.この煙ハウスの組み立てが大変なのです.なにせトリセツ(取り扱い説明書)がないのです 骨組みを組み立てて,8本の支柱にそれぞれ一人ずつ付いて「せーの」で持ち上げなければなりません.そして,内部にカーテンで迷路を作り,外を覆うカバーをかぶせます.そのうえで煙を中に充満させるのです.終わったら終わったで,それを元通りに収めるのが大変です.防災センターのメンバーにはそれを消防署まで返してもらわなければなりません.

夕方,地下の焼き鳥Rで要員の反省会(打ち上げ)をやりました.その場で防災の皆さんに言ったのは「自分が入社した一昨年ははしご車,昨年は起震車を体験してもらったので,今年は煙ハウスにしてみたが,準備も撤収もいかに大変かがわかった.今後しばらくは見合わせることにしたい.来年は別のイベントを考えよう」ということです.防災センターの皆さんをはじめ,ビルメンテナンスの皆さん,清掃の皆さんには準備段階から大変お世話になりました.ありがとうございました そして訓練に参加されたテナント従業員の皆さん,管理事務所の皆さん,お疲れさまでした .......それにしても身体中が痛い,”頭痛も痛い”,今日はおとなしく過ごすことにしよう

 閑話休題 

最近読んだ本から。吉本隆明「真贋」、川上弘美「どこから行っても遠い町」、茂木大輔「拍手のルール」,伊坂幸太郎「モダンタイムス・上巻」の4冊。今回はNHK交響楽団の首席オーボエ奏者・茂木大輔さんが書いた「拍手のルール,秘伝クラシック鑑賞術」(中公文庫)を紹介します.クラシック音楽好きには,たまらなく面白い本です.音楽鑑賞のキホンのキだけでなく,ためになる話の宝庫です

「古典コン(クラシックコンサート)に行きましょう」「古典コンの聴き方」「拍手のルール」「指揮者式手記」「名曲の個人情報」などの章からなっています.読者としては,やっぱり「拍手のルール」のタイトルに惹かれます.ちょっと紹介してみます

〇拍手のタイミング・・・まず重要なのは「いつ,するべきであり,いつ,してはいけないのか?」という「拍手適正運用機会規正法」である.

1.オケの登場の前(舞台無人)・・・・しない.

2.オケの登場・・・・・定期公演:拍手,基本的になし.

3.コンマスの登場・・・・・全楽団員が着席したあと登場する場合,拍手.すぐに止め,静粛.チューニングをするからである.

4.指揮者の登場・・・・・・大拍手.

5.楽章の間,あるいは,楽章の最中・・・・・基本的になし.いくつの楽章があるのか調べておくこと.ただし,咳払いなどはヨシ.

楽章間で拍手が起きてしまうことにはいくつか原因がある.~曲が終わったと勘違い,~あまりの興奮,感動を抑えきれない,~すべての音の区切りには拍手をすべきだという起源不明の刷り込みの結果~

いずれの理由にしても楽章間拍手が起きやすい作品は,何とすべてチャイコフスキーに集中している

交響曲第5番・・・・フィナーレの最後の方に,一旦非常に堂々と終わるが,まだ「オチ」の行進曲があるから注意.

交響曲第6番・・・・第3楽章の終わりに拍手来やすい.

ヴァイオリン協奏曲,ピアノ協奏曲・・・・・いずれも第1楽章が長く,あまりにも堂々と終わるので思わず拍手したくなる場所.

よく分かります とくに交響曲第6番「悲愴」の第3楽章が終わった直後,拍手どころか大きな声のブラボーまで聞いた経験があります.それはそれは悲壮でした

茂木さんは「実は演奏者としては,楽章間の拍手は決して不愉快ではない.嬉しかったからやってくれたのだろうし」と言います.そういうものですかね

6.曲の終わり・・・・・・もちろん,感動に応じて拍手していただければ.お気持ちおココロザシで結構でございます.ただし,拍手が早すぎで曲の終わりの味わいを壊すケースがあまりにも多いこと.絶対にやめていただきたい

そうそう,同感です.いるんですよ,そういう人が 曲が終わるや否や間髪いれずに拍手,ブラボーを叫ぶヤカラが オペラの場合は時にフライング気味に拍手をするケースはありますが,許される範囲内のこともあります.ただ,普通のコンサートで1時間以上の曲を堪能してきて,最後の瞬間を味わっていたいのに,空気が読めずにぶち壊してくれるヤカラがいるのです・・・・・・絶対やめて欲しいです 私の場合は,だれかが拍手を始めるまでは控えるようにしています.あせって拍手をしても何のメリットもありませんので.

「古典コンの聴き方」の章では,コンサートに行って集中・感動するにはどうしたらよいかについて述べています.茂木さんは「まず,知らない曲をライブでイキナリ!は,ちょっと危険がある.そのためには「予習する」とコメントしています.まったく同感です.私の場合はとくにオペラなど,長い曲を中心にCDを聴いて”予習”してからコンサートに望むことにしています

また,「指揮者的手記」の章では,「テンポ,強弱,バランス」この3つが演奏を大きく左右する大きなポイントである.ほかに,「音の繋がり方」「長さ」「立ち上がりの固さ,柔らかさ」「音色」などを指示して変化させることもある,と述べています.このようなポイントを頭に入れて演奏を聴くと,以前に聴いた指揮者とどこが違うのかがわかります.茂木さんはオーボエを吹く他に指揮もされるので,こうしたことにも造詣が深いようです 

この本の中で,個人的に茂木さんと共通する点が2つあることに気がつきました.一つはコンサートに行って座る席は「通路側」であるという点です(彼の場合は”居眠りする危険があるため”としていますが,私の場合は”奥の席に入っていくのが嫌い,何かあった場合にすぐに抜け出せるように”という違いがありますが).もう一つは指揮者チョン・ミュンフンを大きく評価している点です 茂木さんの言葉をそのまま引用します.

「この原稿を書いている日々,チョン・ミュンフンさんが8年ぶりに客演していた.マーラー9番をご一緒した.もう,いかなる指揮者よりもくっきりと,美しく,優しく,力強く描く指揮棒を見ているだけでも,生涯こうしていたい,と思えてくるほどの夢のような時期であり,音楽の美しく深いイメージは手に取るよう.だが,それで満足することなく,ゆっくりと,低い声で語りだすのは”もっと,どこまでも・・・・・つながっていくように・・・・ひとつ,おわり,ひとつ(手の動作もやってみて),じゃなく・・・・・ずっと,ずっと,遠くに繋がっていくように・・・・”という,抽象的でありながら具体的な指示をする」

情景が目に浮かぶようです.チョン・ミュンフンは素晴らしい指揮者です.正直に言いますが,私は彼の指揮したCDは1枚も持っていません.が,彼の指揮するコンサートは日程が許す限り必ず聴きに行っています.彼の本当の良さはライブにあります.これからも彼のコンサートに通い続けます

 

        

コメント
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