人生の目的は音楽だ!toraのブログ

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ジョナサン・ノット指揮東京交響楽団でラヴェル「ダフニスとクロエ」を聴く~第593回定期演奏会から

2011年10月08日 06時28分34秒 | 日記

8日(土).昨夕,サントリーホールで東京交響楽団の第593回定期演奏会を聴いてきました.指揮は1962年イギリス生まれ,2000年にバンベルク交響楽団,アンサンブル・アンテルコンタンポランの首席指揮者に就任したジョナサン・ノット,ピアノは情熱的な演奏で人気のある小菅優,合唱は海外にもその名を轟かせている新国立歌劇場合唱団です

プログラムは①ドビュッシー「夜想曲から”シレーヌ”」,②シェーンベルク「ピアノ協奏曲」,③ラヴェル「ダフニスとクロエ」(全曲)の3曲です.

ドビュッシーの「夜想曲」は「雲」「祭」「シレーヌ」からなりますが,”シレーヌ”は上半身は人間の女,下半身は鳥という怪物で,その美声によって船乗りを誘惑し難破させたと言われています

シレーヌの歌を表現するために女性合唱をオーケストラの右側後方に配置します.ジョナサン・ノットの指揮は流麗というか,滑らかな手さばきです.幻想的とでもいうべき曲想をフルオーケストラで奏でます

シェーンベルクの「ピアノ協奏曲」はナチス・ドイツから逃れてアメリカに渡ったシェーンベルクが1942年に作曲しました.1921年に彼が考え出した十二音技法によって作曲しました.十二音技法というのは,オクターヴに含まれるすべてが1回ずつ登場する音列に基づいて曲を構成していく技法だそうですが,専門外なのでよくわかりません

全体は単一楽章ですが4つの部分からなります.第1部「人生はとても穏やかだった」,第2部「突然,憎しみが沸き起こった」,第3部「深刻な状況が引き起こされた」,第4部「それでも人生は続いてゆく」となっています.シェーンベルクの人生そのものだ,という解説もあります

小菅優は濃いオレンジのドレスで登場,小柄ですが,技巧的に相当難しそうなこの曲に真っ向から立ち向かいます.彼女の演奏を観ていると,ハガネのような,野性的とでも言えるような俊敏な力を感じます 曲自体は,どこが良いのかわからないのですが,集中力のある真摯な演奏態度はこちらに伝わってきます.音が非常にきれいなのも彼女の演奏の特徴でしょう

何度も呼び返されて,アンコールを弾くために座ったので,「お願いだからシェーンベルクは止めてね!」と心で願ったのですが,流れてきたのは,どうもシェーンベルクのような曲想です.シーンとした中でピアノの音だけが響きます

休憩時間にロビーに出て「アンコール曲の紹介」を見ると「武満徹作曲 雨の樹の素描1」となっていました.武満ってシェーンベルクそっくりジャンと思いました

休憩が終わり席に着くと,私の席の3つ前の左の席に,さっきまでシェーンベルクを弾いていた小菅優がGパン姿で座りました.小柄ながらかなり体格がいいようです

ロシア生まれの天才的な興行師ディアギレフはラヴェルにバレエ音楽を依頼しました.ラヴェルは,その依頼を受け,2~3世紀頃のギリシャの作家ロンゴスの恋愛物語に基づいた「ダフニスとクロエ」を作曲しました.全体は1幕3部からなり,第1部は聖なる森のはずれの草原,第2部は海賊ブリュアクシスの陣営,第3部は第1部と同じ場面になっています.ラヴェルはこれを抜粋して,第1組曲を完成し1911年4月に初演,1913年に第2組曲を作曲しました.このうち最も美しく感動的なのは第3部の冒頭に当たる「夜明け」でしょう.そして「無言劇」,最後の熱狂的な「全員の踊り」になだれ込みます

この曲は50分ほどかかる大曲で,途切れることなく音楽が続きますが,ジョナサン・ノットは流麗な指揮ぶりでオーケストラを歌わせます.全曲を通してフルートが活躍するのですが,首席の甲藤さちの演奏は指揮者の意図に100%応えた素晴らしい演奏でした 演奏後,ノットがソリストとして立たせたのは甲藤さちだけだったのも頷けます.また,新国立歌劇場合唱団の合唱も特筆に値します.終演後は惜しみない拍手とブラボーの嵐でした

      

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