守田です。(20110905 23:30)
2回にわたってお伝えしてきた福島第一原発で作業されていた方の
急性白血病死問題について、日本弁護士連合会の会長談話が発表
されました。概ね妥当なのではないかと思います。僕自身、まだ
学びを進めている最中ですが、重要な提言としてご紹介したいと
思います。
******************************
東京電力福島第一原子力発電所作業員の急性白血病による死亡に
関する会長談話
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2011/110902_2.html
東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)は、本年8月30
日、福島第一原子力発電所で復旧作業(以下「本件作業」という。)
を行っていた下請企業の40代の男性が急性白血病で死亡したと発
表した。東京電力の発表によると、本年8月上旬の7日間、休憩所
で作業員の放射線被ばくの管理に従事し、その後数日間のうちに体
調不良を訴え、死亡したとのことである。また、男性の7日間の
外部被ばく線量は0.5ミリシーベルト、内部被ばく線量は0ミリ
シーベルトとのことであり、厚生労働省の労働災害認定基準に該当
せず、医師の診断によっても本件作業と急性白血病との因果関係が
ないとされている。
しかし、急性白血病は遺伝などを原因とする例も見られるが、放射
線被ばくや一部の化学物質への曝露等に起因する例が多く、その原
因の特定は疾患の種類や遺伝性などの他の原因の有無なども含め慎重
に検討する必要がある。
しかし、東京電力による記者発表においては、この男性の3月11日
以降の居住歴も含めた全行動履歴が明らかでなく、また、福島第一
原子力発電所事故以前も含めた原子力発電所の作業歴の有無は明らか
でない。この男性が、福島第一原子力発電所周辺で生活していた期間
があれば、その生活そのものに起因した被ばくをしている可能性が
あり、また、以前から原子力発電所での作業に従事していたとすれば、
そこでの作業で放射線被ばくしていた可能性も十分にある。さらに、
事故収束作業現場の混乱状況からすれば、作業に起因した外部被ばく
及び内部被ばくの測定値そのものの正確性にも疑問が残る。しかも、
東京電力は、因果関係を否定する根拠について、このような不十分な
調査による事実関係を厚生労働省の労災認定基準に当てはめるだけで、
診察をした医師に因果関係を否定する具体的根拠を聴き取ってもいない。
このような十分な調査を経ているとはいい難い中で、本件作業と男性の
急性白血病との因果関係を断定的に否定することは性急に過ぎ、相当
ではない。
そもそも東京電力は作業を元請企業に発注しておきながら、その作業
員の急性白血病の発症について、元請企業からの報告を受けるだけで、
当該男性が何次下請の作業員かすら把握していない。事故が発生した
原子力発電所での作業員の管理体制としては無責任というほかない。
福島第一原子力発電所では、このような体制の下で250ミリシーベル
トを超えて被ばくしたとされる作業員が続出していることから、今後、
健康影響を訴える作業員が続出することも予想される。
福島第一原子力発電所事故は一日も早い収束が強く望まれているとこ
ろであり、そのためには、作業員の労働環境の適正さを確保することが
極めて重要である。
したがって、当連合会としては、東京電力に対し、男性の職歴、生活歴、
それから予想される被ばく線量を徹底的に調査し、男性の原子力発電所
での作業と事故後の生活に基づく被ばくを併せて考慮し、急性白血病と
の関係を慎重に検討した上で、プライバシーに配慮しつつその検討結果
を公開することによって、原子力発電所労働者の休憩時を含む労働環境
の適正さを確保することを求める。
そして、国に対しては、今後一層、東京電力に対する労働安全衛生指導
を強化し、原子力発電所労働による健康被害が起こることを防ぐととも
に、放射線による健康被害の危険性が確率的に高いと考えられる労働者
が安心して暮らすことができるよう、長期にわたって健康影響を調査し、
健康被害が発生したときには困難な立証を経ることなく手厚い保護を
受けることができる施策を実現することを求める。また、事故発生時に
福島第一原子力発電所付近に居住していた労働者については、労災認定
の判断に当たって、作業に起因する被ばくだけでなく、環境汚染地域に
おける生活に起因する被ばくも総合的に考慮してその判断を行うことと
すべきである。
2011年(平成23年)9月2日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児
2回にわたってお伝えしてきた福島第一原発で作業されていた方の
急性白血病死問題について、日本弁護士連合会の会長談話が発表
されました。概ね妥当なのではないかと思います。僕自身、まだ
学びを進めている最中ですが、重要な提言としてご紹介したいと
思います。
******************************
東京電力福島第一原子力発電所作業員の急性白血病による死亡に
関する会長談話
http://www.nichibenren.or.jp/activity/document/statement/year/2011/110902_2.html
東京電力株式会社(以下「東京電力」という。)は、本年8月30
日、福島第一原子力発電所で復旧作業(以下「本件作業」という。)
を行っていた下請企業の40代の男性が急性白血病で死亡したと発
表した。東京電力の発表によると、本年8月上旬の7日間、休憩所
で作業員の放射線被ばくの管理に従事し、その後数日間のうちに体
調不良を訴え、死亡したとのことである。また、男性の7日間の
外部被ばく線量は0.5ミリシーベルト、内部被ばく線量は0ミリ
シーベルトとのことであり、厚生労働省の労働災害認定基準に該当
せず、医師の診断によっても本件作業と急性白血病との因果関係が
ないとされている。
しかし、急性白血病は遺伝などを原因とする例も見られるが、放射
線被ばくや一部の化学物質への曝露等に起因する例が多く、その原
因の特定は疾患の種類や遺伝性などの他の原因の有無なども含め慎重
に検討する必要がある。
しかし、東京電力による記者発表においては、この男性の3月11日
以降の居住歴も含めた全行動履歴が明らかでなく、また、福島第一
原子力発電所事故以前も含めた原子力発電所の作業歴の有無は明らか
でない。この男性が、福島第一原子力発電所周辺で生活していた期間
があれば、その生活そのものに起因した被ばくをしている可能性が
あり、また、以前から原子力発電所での作業に従事していたとすれば、
そこでの作業で放射線被ばくしていた可能性も十分にある。さらに、
事故収束作業現場の混乱状況からすれば、作業に起因した外部被ばく
及び内部被ばくの測定値そのものの正確性にも疑問が残る。しかも、
東京電力は、因果関係を否定する根拠について、このような不十分な
調査による事実関係を厚生労働省の労災認定基準に当てはめるだけで、
診察をした医師に因果関係を否定する具体的根拠を聴き取ってもいない。
このような十分な調査を経ているとはいい難い中で、本件作業と男性の
急性白血病との因果関係を断定的に否定することは性急に過ぎ、相当
ではない。
そもそも東京電力は作業を元請企業に発注しておきながら、その作業
員の急性白血病の発症について、元請企業からの報告を受けるだけで、
当該男性が何次下請の作業員かすら把握していない。事故が発生した
原子力発電所での作業員の管理体制としては無責任というほかない。
福島第一原子力発電所では、このような体制の下で250ミリシーベル
トを超えて被ばくしたとされる作業員が続出していることから、今後、
健康影響を訴える作業員が続出することも予想される。
福島第一原子力発電所事故は一日も早い収束が強く望まれているとこ
ろであり、そのためには、作業員の労働環境の適正さを確保することが
極めて重要である。
したがって、当連合会としては、東京電力に対し、男性の職歴、生活歴、
それから予想される被ばく線量を徹底的に調査し、男性の原子力発電所
での作業と事故後の生活に基づく被ばくを併せて考慮し、急性白血病と
の関係を慎重に検討した上で、プライバシーに配慮しつつその検討結果
を公開することによって、原子力発電所労働者の休憩時を含む労働環境
の適正さを確保することを求める。
そして、国に対しては、今後一層、東京電力に対する労働安全衛生指導
を強化し、原子力発電所労働による健康被害が起こることを防ぐととも
に、放射線による健康被害の危険性が確率的に高いと考えられる労働者
が安心して暮らすことができるよう、長期にわたって健康影響を調査し、
健康被害が発生したときには困難な立証を経ることなく手厚い保護を
受けることができる施策を実現することを求める。また、事故発生時に
福島第一原子力発電所付近に居住していた労働者については、労災認定
の判断に当たって、作業に起因する被ばくだけでなく、環境汚染地域に
おける生活に起因する被ばくも総合的に考慮してその判断を行うことと
すべきである。
2011年(平成23年)9月2日
日本弁護士連合会
会長 宇都宮 健児
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