守田です。(20140423 08:00)
3月30日に奈良市民放射能測定所の開設1周年記念企画でお話した内容の起こしの7回目です。
今回も市民測定所の役割についての考察ですが、測定所を「食の安全全般を目指すセンターに」ということの続きです。前回は肥満の問題を論じましたが、今回は食べ物を産業面から捉え返すことの重要性なども話しました。
さらに測定所を科学的な知識を実践的に身につけるべき場にして欲しいということも語りました。以上で、市民測定所の新たな役割についての考察は終わります。
なおこの講演録は、奈良市民放射能測定所のブログにも掲載されています。前半後半10回ずつ分割し、読みやすく工夫して一括掲載してくださっています。
作業をしてくださった方の適切で温かいコメント載っています。ぜひこちらもご覧下さい。
守田敏也さん帰国後初講演録(奈良市民放射能測定所ブログより)
http://naracrms.wordpress.com/2014/04/08/%e3%81%8a%e5%be%85%e3%81%9f%e3%81%9b%e3%81%97%e3%81%be%e3%81%97%e3%81%9f%ef%bc%81%e5%ae%88%e7%94%b0%e6%95%8f%e4%b9%9f%e3%81%95%e3%82%93%e5%b8%b0%e5%9b%bd%e5%be%8c%e5%88%9d%e8%ac%9b%e6%bc%94%e3%81%ae/
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「原発事故から3年 広がる放射能被害と市民測定所の役割 チェルノブイリとフクシマをむすんで」
(奈良市民放射能測定所講演録 2014年3月30日―その7)
Ⅱ.市民放射能測定所に求められることとは? ~提案として~
【食べ物を産業面から捉え返すことの重要性】
食べ物の安全というと、すぐにマクロビオティックなどに目が行きやすいですよね。マクロビはマクロビで一つの優秀な体系を持っていて、学ぶべきことはたくさんあると思いますが、もう一つ、食べ物のことに踏み込んだときに、食べ物産業のありかたに関する視点を持たないと見えてこないことがあります。
例えばマクドナルドのことで説明してきたようなな商品戦略などもその一つです。その中には大脳がいかに刺激されるのかの研究の応用などもあります。
どういうことかというと、食品産業がイメージカラー戦略を持っているのです。マクドナルドで言えば、赤と黄のシンボルカラーにしていて、それを子どもに刷り込んでいるのだそうです。そうすると子どもは、マクドナルドと発音できる前からマクドナルドを憶えるのだそうです。
実は今、OECDの国々などの中で、子どもが一家の購買を決めるのにすごく大きな力を持っていると言われています。車のディーラーなども、実は子どもを狙っているのですよ。子どもにこの車を欲しいと言わせることによって、一家の購入する車が決まるという傾向が強くなっているからだそうです。
そのために子どもの能に、いかに商品のイメージを刷り込むのかという研究が、脳科学などを応用して行われている。そういう産業的なありかたをも見据えつつ、どうやって私たちが私たちの身体、子どもの身体を守っていくのかということが非常に重要になってきています。
ちなみにこの領域は、学問の分野でもまだほとんどカバーされていない。私たちが自力で学んで切り開いていかなくてはいけない領域です。
【危険なヤマザキのパン】
先ほど、子どもに「ヤマザキパンは食べるな」という言うことをお話しましたが、だいたいこれで会場は大騒ぎになるのですよ。多くの子どもたちが食べた経験があるからなのです。
僕は「一番食べてはいけないのはランチパックだよ」と言ってます。一番の売れ筋商品ですが、今日来たみなさんも食べていますか?ぜひ商品を手に取って添加物の項目を見て下さい。非常にたくさんのものが入っていることがわかります。
そのランチパックの中でもこれだけは止めようと言っているのがタマゴのランチパックです。
コンビニに行って見てください。およそタマゴの入ってる商品は、冷えたところに置かれていますよね。常温の棚にタマゴの入った製品が置かれているのはランチパックだけです。なんで常温の場所に置けるかのかというと、当然にも防腐剤がいっぱい入ってるからですよね。
琵琶湖のキャンプで子どもにこうした防腐剤の話したら、実験してくれた子がいました。なんと半年以上たってもマクドナルドのハンバーガーが腐らなかったそうです。恐ろしいですね。そんなものを平気でどんどん食べて、身体にいいはずがないですよね。
添加物の例では、ヤマザキの「ハムマヨネーズパン」というものの添加物をあげています。とにかくたくさんの種類の添加物が使われています。子どもたちにはとにかく全部読もうと教えています。内容が分からなくてもよいから読もうと。それで添加物がたくさん入ってるものは買わないほうがいいよと話しています。
これは第一段階です。業者の側でもこういう知識に対抗して、添加物のすべてを書かないで済む方式をとっているところもあります。たとえば醤油が使われていると書くと、その醤油の中に何が入っているかは書かなくてよくなってしまうのです。
だから必ずしも添加物の表示が少なかったら安全だということにはならないのですが、それでも添加物が多いものは避けた方がいいのは確実なので、そういうことを話しています。
僕はそういう話を福島から来る子どもたちに熱心に話しています。なぜかというと、子どもが自分の身を自分で守れる一番やりやすい方法だと思うからです。白砂糖を避ける。マクドナルドに行かない。ヤマザキのパンを避ける。こういうことは子どもにもできるし、効果が高いわけです。
これに対して例えば小学校低学年の子どもが放射能の入ってないものを市場に行って探して買ってきて食べるというのはあまりに難しい。だから食べ物のリスク全体を下げることを通じて、全体として身体を守って欲しいと思うのですが、僕はぜひともこのような情報発信を、どんどんする場に測定所が発展していって欲しいと思うのです。
こちらの方が話としても入りやすいです。食べ物の安全性全体の話をしながら、そこに放射能の話も入れていくと、僕の経験では、放射能への関心が薄い人にも、内容を聞いてもらえます。
なぜかというと、食べ物全般に関する不信は、特に子育て世代の女性たちの中ですごく高まっているからです。それ自身は良いことですよね。そのため、食べ物の安全に関する幅広い話をしながら、放射能の問題も話していくと、入りやすいし、話しやすいです。
そうした点も押さえて、ぜひ食べ物の安全性を全体として考え、人々の身体と命を守る内容をどんどん発信して行く場所になっていって欲しいです。
【その3。科学的知識を身につける場に~放射能を測るとはどういうことなのかを知り、科学を自らの手に取り戻す~】
三つ目に市民自らが科学をする場として、測定所を確立していいって欲しいですね。その中で放射能を「見える化」していって欲しい。とくに、ぜひ、多くの方に、放射線測定では、「インチキ」がいくらでもできるのだということをしっかりと教えてあげてください。
僕が忘れられない経験なのですが、京都で保育園給食の安全性を守ろうということで、頑張っているお母さんたちと一緒になって、京都大学の技官だった方を訪ね、保育園の給食を測定してもらったことがありました。
そうしたらその方がにやにやしながら「それでどうしたいの?出したいの、出したくないの?」っておっしゃるのですよ(笑)。
「えっ、どういう意味ですか」と聞くと、要するに「測定の仕方によって放射能を検出することもできるし検出しないこともできるのだよ、測定というのはそもそもそういうもんなんだよ」とおっしゃる。
測定している方はご存知ですが、チェルノブイリ原発事故の影響や、大気中の核実験などを含めれば、地球上のどこでも徹底して測定を行えば、なにがしかの放射能が出てきてしまうのが現状なのです。
だから徹底して測定して、「放射能が出た、危ない」と人に思わせたいならそのような測定ができるし、反対に「そんなに危なくない、安全だよ」と思わせたいのだったら、そういう測定もできるというのが、実際の測定の現実なわけです。
これは測定する時の時間をどれぐらいにするのか、検体の量をどれぐらいにするのか、検出限界をどれぐらいにするのかなどに左右されることです。
また測定するときの温度や検体の水分の含有量の違いなどでも、数値は大きく変わってきます。他にも機械への自然界からの放射線の遮断をどれだけ行っているかなど、さまざまな要因が測定に影響します。
だから、測定に関するそういう知識をきちんと教えて、行政が安全だと言いたいがために行っている検出限界の高い測定だとか、あるいはすごく短い時間での測定、それこそホールボディーカウンターにちょっと座っただけで、「はい大丈夫です」いかいうものに、騙されないようになってもらうことが大切なのです。
その点で、放射線測定とは何かということを体験しながら、基礎的な科学的知識をを身につける場として測定所を設定していくことが非常に大事だと思うのです。
「数値が出ました」で終わらせずに、その数値はどのような条件下でできてたものなのか、その場合、時間を延ばすとどうなるのかなどということを、ぜひわかりやすく教えてあげてください。
特に科学の深い知識のある方は、往々にしてその知識が市民の方への説明に邪魔になってしまうことがありますので、いかに科学の深い知識を、生活的な言葉に翻訳し、相手にわかりやすく伝えるかという点に心を砕いてみてください。そこは市民が科学と取り戻していくうえで、とても大事なポイントだと思います。
奥森さんなどは、きっと説明が上手だと思うのですが、科学の深い知識を持たれている方の中には、質問すればするだけ、より答えが分からなくなっていくという傾向がある方もあります(笑)
僕も最初、ずいぶん苦労しました。科学者で喜んで協力してくれる方は多いのですけれども、例えば「セシウム」とか言ってくれない。ぜんぶアルファベットで言う。あとは、何十万ベクレルとか言ってくれない。ぜんぶ10の何乗とか言う。13乗とか15乗とか、それが皮膚感覚のようになっているのですが、こっちはぜんぜんその感覚がわからないのですね。
だからかえって市民感覚を持っている人がそばにいて、どうすればより人に理解してもらえるかを一緒になって考えていくと良いと思うし、そういう会話の中で思わぬ発見をすることもあります。
僕も矢ヶ崎さんとの対話の中で結構、大きなことを発見したのですが、そういうことを重ねながら、市民が科学的知識を身に付けて行こうとする過程そのものが、私たちが政府や御用学者から私たちの手に科学を取り戻していく過程になると思うのです。ぜひその実践的な場として測定所を育てて下さい。
以上三つ言いました。
一つは、もっと低線量被曝の危険性そのものをきっちりと出していく場に測定所が発展していくこと。
もう一つは、食べ物全体の安全性、健康全体を考える場に測定所が発展していくこと。
三つ目は、科学をみんなで取り戻し、放射線とは何かを学んでいく場として測定所が発展していくことです。
この三つのうちでウェイトとしては特に二番目を厚くするとより多くの拡がりができると思います。
多くの方々が、今、感じている食べ物への不信感、何をこどもに食べさせたらいいのだろう、どうしたらわが子をアトピーの苦しみから救うことができるんだろう、そういうことで悩み、苦しんでいる方もたくさんいますから、この領域は間口がすごく広いのです。
その中で、放射線の危険性のことをきちんと入れていけば、今はまだ対象にならないような方たちを仲間にしていくことが可能だし、僕はそこに新たな発展の道があるのではないかなと思うのです。
以上そんなことをみなさんに提案したいと思います。
続く
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