明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日にむけて( 2 )あえて最悪のシナリオを考える (再送)

2011年03月29日 12時17分00秒 | 東北地方太平洋沖地震3月12~31日
守田です。
一部の方に、「明日にむけて(2)」が届いていなかったようなので
再送します。重複するから申し訳ありません。

**************************

守田です。(20110328 1:00)

最悪のシナリオを考える意義

3月25日に、「マル激トーク・オン・ディマント」という番組で
僕が尊敬する京大原子炉実験所の小出裕章さんが電話インタビューに
答えられました。
それをノートテークしたので、みなさんにご紹介したいと思います。

番組は、「あえて最悪のシナリオとその対処法を考える」と題して
行われました。政府は安全、安全と繰り返していますが、現場を見ている
と到底、そうは思えない事態が進んでいます。このような中では、むしろ
現実に何が起こっているのかを知ることのできないことの方が不安だ
と番組の主催者たちはいいます。

そのため、敢えて「最悪の場合」はどうなるのか、科学的な洞察を
行ってもらい、それを踏まえて、危機への対処の心構えを作って
いこうという趣旨で番組が構成されました。

僕はこの考え方に大賛成です。なぜかと言えば、僕もまたこれまで
原発をウォッチしてきて、最悪のケースが起こりうる危機が続いている
と感じているからです。にもかかわらず、それがまったく隠されている。
これでは人々は危機に無防備なまま晒されたままです。

私たちは、最悪の場合、どのようなことが起こりうるのかを知って
おかなければ、ただ、おろおろと戸惑い、慌てふためき、パニックに
陥るだけです。
そうではなくて、どれほど恐ろしくとも、最悪のケースが何かを
理解していれば、何らかの構えを作り出すこともできます。

また現にあるこうした危機の可能性を伏せたまま、安全を強調されても、
相次ぐ放射能漏れの中で、もはや誰もが納得することができず、不安
ばかりが高まっているのが現状です。このままではむしろこうした不安を
背景に、何かのはずみで違ったパニックが生じてしまう危険性が高まって
います。社会学者もパニックを防ぐに一番大事なことは、真実をきちんと
伝えることだと指摘しています。

その意味で、政府の安全だ、安全だという言説がことごとくはずれて、
放射線被ばくが拡大している現状の中では、むしろパニックを避ける
ためにも、起こりうる危機は何なのかということと、誰もがしっかりと
向かい合い、自分にはどのような選択肢があるのかどうかを
考えることが大切です。

この番組のノートテークとその紹介も、同様の観点から行おうと思います。
その意味で、これは私たちの未来=明日にむけて、とても大事な内容だと
思っています。
ただし、最悪の場合の予想には、ショッキングな内容も含みます。
どうか冷静になって、小出さんの説明と向かい合ってください。

番組の案内と、出演者は以下の通りです。
「マル激トーク・オン・ディマンド 第519回(2011年03月25日)」
特別番組 「あえて最悪のシナリオとその対処法を考える」
http://www.videonews.com/on-demand/511520/001784.php#profile_link

出演:
飯田哲也氏 (NPO環境エネルギー政策研究所所長)、
小出裕章氏 (京都大学原子炉実験所助教)
矢ヶ崎克馬氏(琉球大学名誉教授)
松井英介氏 (元岐阜大学医学部助教授)
青木理   (ジャーナリスト)
宮台真司  (社会学者、首都大学東京教授
神保哲生  (ビデオニュース・ドットコム代表)

(なおノートテークは、主に小出さんのインタビューを扱っています。
また時間がないので、細かくきちんと校正ができていません。
そのため、転送などの場合は、あくまで守田による聞き取りと
説明書きして下さい。これをそのまま、小出さんの発言としては
送らないでください。)


青木
-今の現状は

小出
放射性物質は、原子炉本体と、使用済み燃料プールから出ている。
プールは1号炉と3号炉はむき出しになっており、4号炉に外から
見えるので、水を入れることはできる。放射線の強いところでやらなければ
ならないので、大変だが、原子炉本体を冷やすことと比べるならば
楽だと思う。問題はやはり原子炉本体をこれからずっと冷やしていけるかにある。

-原子炉はどんな状態にすすみうるか。

原子炉と呼ばれているものには3種類ある。炉心、炉心を含んでいる
原子炉圧力容器、全体を包んでいる格納容器、用語の混乱がある。
原子炉が壊れているという報道がある。炉心の中は壊れているが、
私は原子炉圧力容器は壊れてないと思う。格納容器は1号機から
3号機までどれも一部損傷はあると思う。

-現段階で考えられる可能性は

原子力安全委員会が、30キロ圏内も避難した方がいいと言いだした。
その理由として「放射能のこれからの漏えいが続く可能性を否定でき
ない」という根拠だった。政府も東電も最悪の事態がありうると判断
しているのだと思われる。

私が恐れているのは、メルトダウンがおきて、水蒸気爆発がおきて、
圧力容器が破損するということだ。

炉内には冷やすために水を入れている。水が熱を奪うと水蒸気が出て、
圧力があがる。そのためにベントで意図的に水を外に出してきた。それは
もうどうしてもやらざるをえないなっている。しかしそれ以外に原子炉
格納容器自身があちこち壊れて、水が漏れている面もあると思う。

タービン建屋で作業員の被ばくが起こった。それは主蒸気隔離弁という
一番大きなバルブが損傷して漏れていると思う。原子炉で発生する蒸気は
タービンに送って発電する。事故がおこったときは、主蒸気隔離弁というものを
閉めて、蒸気がタービンの方にいかないようにする。それが壊れていると
思う。それで漏れたと推測される。

-それが通常の冷却水の1万倍の放射能と言われたものだろうか。

そうだ。原子炉の水は、それほど放射能が高い濃度ではないので、1万倍と
いうのは私はそれほど高くはないと思う。つまり原子炉の破壊がそれほど
高いものではないのではと思える。それでも通常の状態の1万倍で、それが
隔離弁の損傷で、タービン建屋に流れているというのが私の推測だ。

-3号機はMOXなので毒性が強いのだろうか。

そうだ。プルトニウムという元素は、人類が遭遇した物質のうちで最悪の毒性
があるいわれていて、生物学的には毒性は、ウランの20万倍ある。
しかし私はMOXだから特に危険度が上がるとは思っていない。もともと
原子炉というものがウランを核分裂させて、核分裂生成物を作ってしまう限り、
とてつもなく危険なのだ。その上にプルトニウムを使う危険が、なにがしか
上積みされるということだと私は思っている。

-最悪のシナリオは、メルトダウンして圧力容器に穴があいてしまうという
ことだろうか。そのときはどうなるのか。

中のものが爆発的に放出される。すでに溶けてしまったものが、水の上に
落下して水蒸気爆発を起こす可能性を私は捨てきれない。その場合に
格納容器が壊れてしまえば、爆発的に放射能が外部に放出される。

-そうなった場合に、チェルノブイリ以上の惨事になるだろうか。

もちろんだ。どれか1つがそうなったら、作業員が発電所にとどまれなくなる。
そうすると必死でやっている冷却ができなくなるので、みんな壊れる。

-現在から予想すると、周辺はどうなるだろうか。

多分だが、日本の法律に照らしていう限り、かなりの土地が、放射線管理区域
に指定しないといけなくなっている。法律に厳密に従うならば、その地域を
無人にしなければいけない。それが今でも発電所の敷地から40キロまで達して
いる。それをどう考えればいいか、途方にくれている。

-最善の可能性、これでなんとか冷却が行われた場合はどうなるのか。
朝日新聞に1カ月で冷温停止すればいいと発言されているがそんなにかかるのか。

ポンプがすぐに動けばそんなにはかからない。しかしすでに原子炉の中に、
海水を大量に投入している。塩分を含んでいるので、あちこちに塩が析出
していると思う。塩分は多分、ポンプが動くことにも、冷却にも障害になる。
それを考えると、ずいぶん長い時間がかかるのではないかと私は思う。

-1号機、3号機は水素爆発で建屋が吹っ飛んでいる。とても素人目に
ポンプが動かせるとは思えない。ましてや被ばくがある。ポンプを動かす
ことも相当悲観的だろうか。

被ばく環境でやらねばならないことが最大のネックだと思う。普通の状況では
のんびり作業をして動かすことはできる。今は、アラームメーターをもって
何分以内でという形でやらなければならない。大変な困難な作業だと思う。

-使用済み燃料プールの方も、割れているのではないかと言われているが。

割れている。水がどんどん流れ出して、それが海を汚染している。

飯田
-メルトダウンではない最悪のケースとして、管理できない状態がズルズル
続いて、放射能が漏れ続けるのではないか。水の循環にまで持ち込める
のだろうか。極めて長期化して、放射能が出続けるのではないか。

最悪のケースはメルトダウンによる水蒸気爆発だが、今の状態で収められる
としても、本当に長い間、放射能と格闘せざるをえないだろうし、たくさんの人が
被ばくせざるをえないと思う。本当になんと言えばいいか分からないような
仕事を、これからやらなければならないと思う。

-チェルノブイリのような石棺も今は不可能か。

熱を持っているので、不可能だ。使用済み燃料は外部に運び出す以外にない。
その上で、石棺を作るしかない。

青木
-3号機は、格納容器の中から漏れているのではないか。

私はそう推測している。

-今までは、出て来ている放射性物質は、ヨウ素とセシウムと言われているが、
他に漏れてくることは想定されるか。

外部で検出されているのは、ヨウ素、セシウム、テルルだった。揮発性のもので
ガスになりやすいものだった。私もいくつかのサンプルを検出した。
それ以外は検出されていない。比較的外部に逃げやすいものだ。それで内部の
大量の破壊はないと思ってきた。1から3まですべてだ。
ただし3号機の損傷が問題になってきて、タービン建屋の床下にバリウム、
ランタン、セリウムという放射性核種があることが分かった。揮発する核種では
ない。ペレットから逃げにくいものだ。ひょうとするとウランのペレットが
一部で溶けていると疑い出している。そうなると新たな放射性核種が出てくる
可能性がある。

-それはどう違うのか。

被ばくの量が増える。それが出て来ているのは、炉心の破壊が進行している
ことだから、より悪くなっていることを意味する。ペレットから漏れて、液体の
方にくるとは今まで考えてなかったが、それが起こって、タービン建屋に
きている。


神保
-最悪の場合はどれぐらいの放射能が出るのか

破壊の程度による。

-想定しうる範囲で、どれぐらいのものを覚悟しなければならないのか。

炉心に含まれていたもののかなりの部分が出てくる。チェルノブイリと
同じようなものになるだろうと危惧している。

-その場合、人間が住めなくなるのはどれぐらいか。

チェルノブイリではソ連当局は、初めに半径30キロの人たちを全員避難させた。
しかし3か月たってから、200キロ、ないし300キロ離れたところで、猛烈な
汚染地帯があることを発見した。放射能の雲が流れて雨が降ったところだった。
そこで住民を強制疎開させた。ところがその後、ソ連が崩壊してそれ以上の
ことができなくなった。

日本の場合の法律に照らして言えば、原発から700キロの地域まで、放射線
管理区域に指定しなければならなくなる。そこは普通の人は入ってはいけない。
ごく特殊な人間が仕事のために入る場で、そこでは飲食はしてはいけない、
寝てはいけないというのが放射線管理区域だ。
当然、汚染が分かる器具をもって入る。

700キロだと、大阪から北海道まで入るが、ただし風下だけになる。
政府はコンパスを使って円を書いているが、実際には風下に汚染が広がる
のであって、細かい対応が必要になる。今回でも40キロ離れた地域でも
もの凄く汚染が広がっている地域がある。多分、そこは無人にしなければ
いけなくなる。

-チェルノブイリでは黒煙の火災が続いて、それでの飛散が大きかった。
それとの違いは。

確かに炭がたくさん燃えて、大変な火事になった。このため上空1500メートル
まで吹きあがった。したがってかえって周辺は猛烈な被ばくを避け得た。
それが風に乗って流れて、近隣の地域を汚染した。
福島では、爆発で炉心と格納容器が壊れると、放射能が上空高く吹きあげ
られることはない。地面を沿って汚染が広がる。だから発電所の風下の近傍は
猛烈な汚染を受ける。

青木
-プルトニウムが出てくると最悪なのでは。

プルトニウムは、高温でないと飛散しないし、その場にとどまるものが多い。
もともと不揮発性のもの。その場にとどまりやすい。チェルノブイリはヨウ素は
8割、セシウムは4割でたが、プルトニウムは4%ぐらいだった。福島でも
最悪でも大量にはでないと思う。

-その場にとどまったら、対処できないということか。

半減期が2万年なので、なくならないと思った方が良い。

-圧力容器の圧力が上がっているという報道があるが。

昨日初めて保安院がデータを出した。それで1号機が冷却ができていなかった
ことがわかった。1時間2トン入れていたが、私の計算では5トン必要だった。
それで400度にもなっていたことをようやく気がついた。それで1時間18トン
入れた。それが良かったか分からない。急激に冷やしてダメージがある
可能性がある。ともあれそれで水蒸気が出て圧力があがった。

神保
-最初、5トン入れなけれはならないのに2トンだった。次にいきなり18トン入れた。
なぜこのような対応になるのか。

とてつもない混乱状態にあるからだと思う。私は安全なところで、計算できる。
現場は同時進行でもの凄い危機に対応している。しかも被ばく環境で働いて
いる。それほど危機的な状況の中で少数の人が対応している状態で、
あながち責められないと思う。

青木
-評価尺度は

レベル6は当たり前で、もはやレベル7と言わねばならないと思う。

飯田
-先ほどの5トンという計算はどこから。

崩壊熱から計算できる。1週間後、1月後と基本的なことは計算できる。
福島1号炉だったら、今、4000キロぐらいの発熱がある。4000個ぐらいの
伝熱器が発熱しているようなもの。それを水でひやさねばならない。
それを蒸気として格納容器から出すしかない。

-漏れているのか。

必ず蒸発してしまうので、どこかで逃がすしかない。意図的なベントか、
漏れているかは分からないが、必ず逃がすしかない。

-東京での汚染はどうなるか。

私は広がって欲しくないと思っている。しかし止められるという確証はない。
現場に頑張って欲しいが、炉心の破壊を止められなけれ、汚染は拡大する。

青木
-今、現在でも、冷やし続けなければならない。その間、漏れてしまうのは
やむを得ない状態にある。ポンプは使えるのだろうか。

分からない。なんとか動かして欲しいのだが。ポンプは、結構、重たい。
モーターは重量がある。原子炉のポンプは何トンの重さのポンプだ。それが
使えないとなると交換しなければいけないが、大変な作業になる。
被ばくをしながらそうした作業をしなければならなくなる。

-その間、放射性物質は漏れ続ける。そうなるとこの状態と向き合うしかないのか。

その通りだ。

-そうなるともっと放射能汚染が広がる可能性はあると思うが。

そうならないことを私は祈るが、そうならないと確信を持っていうことはできない。

神保
-今、アドバイスを求められたら、何をしろというか。

私は外から見るしかできない人間だ。必要なことは冷却だ。電源を復旧して
正常なポンプを動かさないといけない。大変な被ばくをしながら、仕事を
しないといけない。正常な形で冷却回路を回復させるしかない。

-被ばくがあった。かなりの放射能が強い冷却水が漏れているが、これも
ポンプをなおさないとなおらないか。

そうだ。主蒸気隔離弁が破損して漏れていると思っている。いったいどこで
破損しているかで、ポンプが動いてもそこから漏れてしまう。あちこちで
漏れているだろう。長い時間がかかる。手作業でなおすしかない。
大変な被ばくの中で、活動しなくてはならない。

青木
-今の政府、東電の発表についてどう思うか

事故がもの凄くて、東電自身が把握できてないと思う。いくら発表したくても
できないことが多いと思う。しかしパニックを避けるために隠していることも
ある。こういうときは、どういう方向に放射能が流れるのかが一番重要な
情報になる。そのために開発してきたのが、スピーディーだった。20年間
かけて開発してきている。

ところがそれが当初は一切、公表しなかった。2週間たって公表した。
それでは意味がない。パニックをおそれて政府がおさえたのだと思う。
このようなあり方は著しく不誠実だ。

神保
-学者が安心、安心と繰り返していることについてどう思うか。

感じるところは山ほどある。
非常に限られた情報しかない。そういう中でどういう危険があるかを予測
しなければならない。そのとき悲観的な予測も楽観的な予測もできる。
しかし防災のときは悲観的な予測が必要。安全だ、安全だと言われる
中で危機に直面するのは大変だ。

-学会で、危険を危険と言えない雰囲気があるのか。

それはある。原子力村では、いっかんして原子力は安全だと言ってきた。
常に楽観的な情報を流すしかないとなっている。

青木
-大阪の番組で熊取6人衆と紹介されていた。科学者の責任を語りあって
きたが、小出さんは白眼視されながら、誠実な発言をしてきた。
知識人や科学者の責任についてどう思うか。

私は科学に携わる者として、自分の責任を果たしてきた。1人1人の
人生に私は口出しをしたくない。

神保
-今後、われわれは何に気をつけてニュースなどを見ていればいいのか。

冷やすということだ。どんなことでも冷やさないといけない。消防車では
長期間は持たない。ポンプしかない。それが使えるかどうかを注意して
欲しい。それが使えないときに他の手段があれこれでてくるだろうが、
それが有効かどうかを見てほしい。

以上




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 明日にむけて( 6 )気仙沼か... | トップ | 明日にむけて( 7 )気仙沼か... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

東北地方太平洋沖地震3月12~31日」カテゴリの最新記事