明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1199)原発メーカー救済のための危険な原発再稼働と原発輸出を許してはならない!

2015年12月26日 11時30分00秒 | 明日に向けて(1101~1200)

守田です。(20151226 11:30)

この夏の川内原発再稼働に続く高浜原発再稼働容認の動きが、東芝の大苦境に象徴される原発メーカーの瓦解への救済策であることを前回明らかにしました。
今回は東芝の経営危機の日本経済全体にもたらす意味と、原発メーカーの救済の不可能性を明らかにしつつ、原発再稼働の流れを断ちきっていく展望を明らかにしたいと思います。

21日の記者会見で東芝は来年3月期で5500億円の赤字を計上すること。大幅なリストラや不採算部門の切り捨てなどで生き残りを図るものの、1兆840億円あった自己資本の6割を失い、4300億円にまで目減りすることを明らかにしました。
これを受けて、毎日新聞経済プレミア編集長が、この記者会見を「東芝の問題が単なる「不正会計」から、「経営危機」という別次元の段階に入った象徴的なもの」と評したことを昨日お伝えしましたが、これは日本経済全体にとっても大きなことです。
なぜなら東芝はかつては財界総理と言われる経団連会長を連続で排出し、その後も経団連副会長の座に常駐してきたリーディングカンパニーだからです。

歴代社長の在任期間とその後に財界でついた役職をみてみましょう。

 石坂泰三(1949~57)経団連会長
 土光敏夫(1965~72)経団連会長
 佐波正一(1980~86)経団連副会長
 青井舒一(1987~92)経団連副会長・経済同友会副代表幹事
 西村泰三(96~2000)経団連副会長・経団連評議会議長
 岡村 正(2000~05)日本商工会議所会頭・経団連副会長
 西田厚聰(2005~09)経団連副会長
 佐々木則夫(09~13)経団連副会長

 引用は以下の記事より
 東芝が失う「財界活動」の特別パスポート
 週刊東洋経済ビジネス 2015年07月28日 前田 佳子
 http://toyokeizai.net/articles/-/78449

このように一覧を見てみると東芝が常に日本の経済界のいわば「大番頭」を務めてきたことが分かりますが、その中でもより大きな位置を占めた人物は1965年から72年まで社長を務め、その後に経団連会長となった土光敏夫氏でした。
日本に原発を導入したのは政治家では元中曽根首相であったことに対し、経済界で積極的な旗振り役となったのが土光敏夫氏だったからです。実際に土光氏が社長時代に福島第一原発の建設に大きく関わりました。
福島第一原発1号機は、東海原発、敦賀原発、美浜原発につぐ日本で4番目の原発として1971年3月26日より運転開始。このときはGE社純正でしたが東芝は大きく技術を習得していきました。

土光氏は社長退任後に経団連会長となり、さらに原発建設を推進。東芝を強力に後押しし、福島第一原発2号機(74年7月18日運転開始)では付属設備を担わせ、3号機(76年3月27日運転開始)はついに東芝純正となりました。
ちなみに4号機(78年10月12日運転開始)は全面的に日立に担わせ、5号機(78年4月18日運転開始)は再び東芝純正。6号機(79年10月24日運転開始)は改良の必要が生じたためGEが製造し、再び付帯設備を東芝が担いました。
このようにまさに土光敏夫氏のもとで東芝がリーディングしつつ次々と作られていったのが福島第一原発だったのです。なお福島第二も1号機と3号機が東芝製、2号機と4号機が日立製です。

さらに1980年代にいたるや土光氏はこの国の方向性により決定的な役割を果たしました。世界的な新保守主義ないし新自由主義の台頭のもと、首相に登りつめた日本への原発導入者の中曽根康弘氏のもとで行財政改革に大きくコミットしたのです。
これを臨時行政調査会=臨調と呼びます。正確には第二臨調になるのですが、土光氏がリーディングしたことで土光臨調とも呼ばれました。何をしたのかというと国鉄、電電公社、専売公社など三公社の民営化などでした。
新自由主義のもと、すべてを市場経済の自由競争に任せれば良い、政府による社会保障サービスを減らし、人々を競争に追い込むべきたという考えに立った施策で、この下に国鉄労働組合が酷い方法で解体され、非正規雇用拡大の道が切り開かれました。

ちなみに僕は一貫して福島原発事故は、かつての戦争に大きくつながっていること、なかでもアジア侵略戦争の中で行われた軍隊「慰安婦」制度などとのつながりが深いことを指摘してきましたが、ここでは人物的なつながりも見いだせます。
まず原発と新自由主義を日本に導入した中曽根元首相こそ、軍隊の将校時代に「慰安所」建設を推し進めた張本人でした。本人の著書の中に書かれています。(ただし自分の作った「慰安所」が性奴隷施設であったことは否定)
さらに福島原発誘致を促進し、県の土地調査結果も踏み潰して建設独断的に採決した木村守江元福島県知事(任期1964~76)は南京大虐殺を行った「歩兵65連隊(福島会津若松)」の軍医で「聖戦の勇士」と呼ばれた人物でした。

木村軍医は南京戦に関するレポートを軍事郵便でこう書き綴っています。「捕虜二万余の始末に困った」「捕虜をどうしたかと言うことは軍司令官の令に由った丈で此処には書くことが出来ぬから御想像にまかせることにする」。
どうみても大量虐殺に直接に関与し、しかもそれを誇っているのです。そういう人物が中曽根氏のもとで導入された原発を福島の地で次々と建てされたのでした。(ただしもともとの誘致を行ったのは先任の佐藤善一郎知事)
この時、日本兵たちは各地で殺人ばかりでなくレイプや強奪を繰り返しました。これに手を焼いた軍部が南京虐殺の総括の上に作りだしたのが「慰安所」なのでした。主要目的はレイプを減らすことで、兵士が性病にかかり損耗することを防ぐことでした。
なお木村元知事が、南京大虐殺に関与した軍医であったことは以下に詳しく紹介されています。

 南京大虐殺の「勇士 木村守江」は福島原発導入の張本人だった!~レイバーネットTVで明らかに
 http://www.labornetjp.org/news/2015/1209shasin

土光敏夫氏自身は、戦中の多くを軍需産業の一員として国内で過ごしていたようですが、ともあれこうした戦前の流れが断ち切られないままにこの国に原発が導入され、なおかつ新自由主義が持ち込まれる中でその両者で力を発揮したのが彼だったのでした。
こうした産業界への大きな「功績」のもとに東芝はその後も経団連副会長の座に常についてきたのでした。その東芝が不正会計で信用を完全に失墜させ、さらに経営危機にまで陥っているのです。
僕にはこれはある意味でこの国の原子力産業と、新自由主義政策の末路の象徴であるようにも思えます。いやそうであるがゆえに東芝を支えることが、東芝のみならず日本経済界全体の問題として意識されているのではないでしょうか。

さてこのように現在の非正規雇用やブラックなあり方が状態化している日本産業界のあり方をリードしてきた東芝は、まさにそれゆえに内部においても企業倫理をどんどんと堕落させ、2008年から7年にもわたって不正会計を続けてしまいました。
アメリカでの原発建設での巻き返しに失敗して以降は、社内で「チャレンジ」と呼ばれる高い売り上げ目標の達成の強要が常態化し、要するにブラック企業化を深め、挙句の果てに内部告発が起こったのですが、そんな東芝の救済は可能なのでしょうか。
僕は不可能だと思います。倫理的に崩壊しているからです。その意味で東芝の崩壊は、原発と新自由主義導入の崩壊の象徴なのです。

しかし小泉政権時代からこの原発推進と新自由主義の徹底化を推し進めてきた安倍自民党政権は、事態を捉え返すことができないがゆえに、破産した事態をさまざまな言い逃れ、すり替え、無視などの連発で認めず、事態の強引な突破を試みています。
その大きな柱は原発輸出です。安倍政権とて国内で原発がもう新たに作れないことは認識しています。幾つかの原発を動かしたとしてもそれだけでは原子力産業の衰退は避けようがない。だからこそ輸出を行おうとしているのです。
そのためには国内を原発ゼロ状態においておくわけにはいかない。幾つかの原発が動かないといくらなんでも国際的信用が得られません。また原発メーカーにも点検料収入も入らない。

それだけではありません。原発を動かしていないと技術の継承もできない。さらにあらゆる機械は止めている期間が長ければ長いだけだめになっていきますから、その面でも早く原発を動かさないと既存の設備もダメになってしまう。
だからこそとにかく動かすこと、東芝が携わっている沸騰水型原発はすぐには動かせないとしても、まずは加圧水型原発を動かして、とにかく原子力産業を死滅から逃れさせ、延命させようとしているのです。
いやその加圧水型原発のメーカーである三菱重工も、蒸気発生器に大きな問題を抱えていて、アメリカのサンオノフレ原発で事故を起こし、廃炉に追い込まれてしまいました。そのため9800億円もの損害賠償を請求されています。

この上にもう一つ大きなことが重なっています。他ならぬ私たち民衆の力です。福島原発事故以降、とにかくものすごい数の原発反対デモが繰り広げられてきました。
絶対多数の議席を誇る安倍政権、与党内には誰も逆らうものなどいない王様状態でも、祖父の岸信介氏をデモで倒されている安倍首相は、このデモを恐れてなかなかに再稼働に踏み切ってはこれませんでした。
しかしそれで日本中の原発がとまってしまっていて、ユーゼックというウラン供給会社が倒産してしまいました。しかも世界4大会社の一つでした。日本民衆の力によって世界の原子力産業の衰退が加速されているのです。

まさにこのような事態の中で、土俵際に追い込まれたがゆえに、安倍政権も原子力村も、非常に苦しい中で再稼働に走り出したことを私たちは見ておく必要があります。
重要なことは二つです。一つに原発再稼働の流れはけして原子力村の側の攻勢ではないということ。原子力産業は行き詰まり、なおかつ追い詰められ、息も絶え絶えです。だから愚かな再稼働に走っています。この根本的な脆弱性をしっかりみすえましょう。
二つにしかしだからこそ大変危険なこと、自らの生き残りのために安全性を無視して走りだしたのですから、深刻な事故の可能性もまた高まっているといわざるを得ません。

ではどうするべきなのか。原子力産業にとって大きなボディーブローとなってきた私たちの反原発運動をさらに継続すること、力を増していくことが一つ。
もう一つはすでに川内で再稼働がなされてしまっている事実、今後高浜も動き出す可能性が否定できない点を見据えつつ、民衆サイドから原発事故への備えを逞しくしていくことです。またこの中で原発をめぐる社会的討論を拡大することです。
災害対策はとりあえず原発の是非は横に置いて行うことができるものです。そうであるがゆえに賛成派、推進派の人々とも同じテーブルにつけます。そうして客観的に事故対策を考えれば原発の危険性や実にくっきりと見えてきます。
だからこそ政府はこれまでまともな災害対策をとってこなかったし、この間も避難計画に関与しようとしないのです。大きな嘘がばれるからです。だとするならば今こそ民衆の側からこの領域に踏み込んでいく必要があります。

次回はこの点を掘り下げます。

続く

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