明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1202)中東・トルコ・ロシア等々に広がる混乱を捉える-年頭に世界を俯瞰する2

2016年01月12日 19時00分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160112 19:00)

年末から京都市長選や大津市長選などでさまざまに動いていて「明日に向けて」の更新を怠ってしまいました。申し訳ありません。また頑張って書き綴っていきたいと思います。

さて前号で戦争と貧富の差の拡大の中で混迷を深める世界のあり方を俯瞰しました。
そして問題が、1970年代末期から猛威を振るい始めた新自由主義のもとで、世界の中の貧富の差が著しく開いており、社会的矛盾が蔓延していることにあること。
しかもアメリカが2000年代に入って、アフガン、イラク戦争など、その暴力的体質を全面化し、破滅的な戦争を続けてきた結果、中東が乱れに乱れ、その中で「イスラム主義武闘派」を自称する人々がさまざまに台頭してきたこと。
この構造化をベースに、ISなどへの欧米各国の空爆がエスカレートし、これに対する報復としての殺人攻撃もエスカレートしつつあること、これらが今起こっていることです。

さらにこうした暴力の全面化は、各国のいわば自制をかなぐり捨てた暴力化にもつながり、戦争参加がどんどん拡大されつつあります。
これも簡単に構造を観ていくと次のように整理することができます。
まず第一に2003年からの米英によるイラク侵略戦争によって、イラクの統治機構が崩壊してしまい、周辺地域の政治的安定性が失われ、武装勢力の群雄割拠状態ができてしまったこと。
その中でクローズアップされているのがIS(イスラム国)ですが、この地域への周辺各国の利害は必ずしも一様ではなく、思惑の違いもある中でISだけでなくさまざまな勢力がしのぎを削る状態になっていることです。

2015年前半まで、米英とこれに追従するアラブ各国のISへの空爆が攻防の軸となっていましたが、この中でシリアが国家的に崩壊し、膨大な難民が出てきてしまいました。難民の多くはヨーロッパ、とくにドイツに向かいました。
こうした中で昨年夏にトルコが新たに参戦しました。トルコはシリア情勢をめぐっては長らくアサド政権を批判して反政府武闘派を支持しつつも、ISをめぐる攻防については傍観的態度をとり続けていました。
しかしトルコ政府が長年にわたって独立運動を弾圧してきたクルド人の中の武闘派が、シリア国境付近でISとの対峙の先頭に立ち、アメリカからの支援を集めるなどの中で参戦し、ISばかりでなくクルド人武闘派への攻撃も始めたのでした。

これに対して親アサド政権のロシアもまた対ISでの参戦に踏み切りました。ロシアの直接的な利害は、地中海に自由にできいける冬に海が凍らない港を、長年にわたってアサド政権に借り受けていることにあります。
このためロシアとしてはアサド政権が倒れるのはまずい。そのため対IS攻撃を宣言しつつ、その実、シリアの反政府武闘派への攻撃を強めました。ちなみにこれらの反アサド政権の武闘派を支援しているのもアメリカです。
トルコとロシアはともに対ISを掲げつつ、実はアサド政権に対しては真逆の立場にあるわけですが、そのような中でトルコ上空への侵犯を理由に、トルコ軍機がロシア軍機を撃墜し、一気に両国の緊張関係が強まってしまいました。

ロシアの側から見ると二つの重要なポイントが見られます。というのはそもそもロシアはウクライナの同行をめぐって欧米との緊張関係の中に先に入っていたことです。
ウクライナは2000年代に入って、親ロシア派と親欧米派が政権交代を続ける不安定さを続けてきましたが、2014年になって親ロシア派政権を親欧米勢力がクーデタで打倒。新政権を打ち立てました。
するとロシアは迅速に軍事力を展開させ、黒海の北部にあるクリミアを選挙。住民投票によってロシアへの編入を決めさせてしまいました。さらに東部のドネツク周辺で親ロシア派を支援し、内戦状態にコミットを続けてきました。

この一連の流れをロシア側から分析すると、旧ソ連邦の崩壊以降、旧ソ連圏を欧米勢力によって次々と浸食されてきた流れを断ち切るような位置性を持っており、そのためにもクリミアの占領が行われたと言えます。
というのはクリミアは、ロシアとトルコの間で数百年の間に5回も行われた来た露土戦争の主戦場の地であり、ロシアにとって愛国心が発揚される位置性のある場でもあるからでした。
ロシアはこの行動において欧米との軋轢を覚悟し、実際に経済制裁を受けましたが、国内でのプーチン政権への支持率は高く、迅速な軍事行動に強い支持が集まりました。

2015年夏以降の、ロシアのイラク・シリアへの全面的軍事介入は、ロシアの軍事的意向を国内外にさらに示すものとしても行われたことをみておく必要があります。
このためにロシアは巡航ミサイルは最新鋭大型爆敵機などを惜しみなく戦線投入しました。というかおそらくは長らく待ち望んできた実践テストを兼ねての参戦だったと思われます。
このときロシアの計算の中に入っていたのは、実はクリミア半島占領のときもトルコが欧米の経済制裁に同調せず、静観を守っていたことにあっと思われます。実際、ロシアはトルコのエルドアン政権と原発輸出に合意し、建設を始めようとしていました。

トルコの側も、南の側でのISと諸勢力とのぶつかり合いにも、クリミアをめぐるロシアと欧米の対立にも不介入の姿勢を示し、国の南北での政情不安、軍事対立の激化に深入りしない戦略をとってきたのだと思われます。
しかしトルコの内側にも大きな位置性を持つクルド人勢力がISとの攻防でどんどん台頭し、支持を集めることになったことをみすえて、大きくかじ取りをかえ、軍事介入に踏み込みました。
踏み込んでしまうと実はトルコはシリアをめぐってはロシアと利害が反対の立場にあります。欧米との対立をかかえている上にさらにトルコとの対立激化をのぞんでいなかったはずのロシアの目論見が崩れてしまった。

一方でトルコの側からすると大変なパンドラの箱を開けてしまったのではないでしょうか。あの地域でトルコが関わることでさまざまな矛盾が均衡を失ってとめどない混乱の加速を産んでしまったのではないか。
もちろん、ロシアもトルコもIS支配地域に激しい爆撃も加えていますので、報復の対象となってしまってもいます。そのためロシアの旅客機がすでに爆弾を仕掛けて落とされて200人以上が死んでいます。
そんな中で不可解なことも起こっています。とくに謎なのは昨年10月3日にアンカラで起こった爆弾事件です。100名を越す死者が出ました。トルコ政府はすぐに「ISの犯行」と断定しましたが、それならISは自らの行為を誇るはずです。

しかし自らが行ったという声明は出ていない。では犯人は誰なのか?憶測が飛んでいますが、実はトルコ政府の側が仕組んだのではないかと言う分析もトルコの多くの方たちが語っています。
ともあれこの事件は、僕にはトルコが大変な混乱の中に踏み込んでしまったことの象徴の事件のように思えます。今後、さらなる事件が起こってしまうかもしれません。


・・・みなさま。なんていうことでしょう。ここまで書いていたら、つい先ほど、イスタンブールで爆弾がさく裂したという報道が飛び込んできました。本当になんていうことだ・・・。
詳細はまだ分かりませんが、すでに10人が犠牲になったと報じられています。ということはまだ犠牲者数が増えるのではないかと思われます。
イスタンブールには知り合った方たちもたくさんいます。でも知り合いであれ見知らぬ誰かであれ、僕は誰にも死んで欲しくないし傷ついて欲しくもない。でもまた死者が出てしまった・・・。

世界遺産のスルタンアフメットモスク(通称ブルーモスク)やアヤソフィア博物館がある旧市街の歴史地区だそうで、昨年春に僕が二日かけて一人で夢中になって歩いたところです。
宿泊はブルーモスクの裏手の安いホテルだった。あのとき、一人で興奮して歩き回ったあの街のどこかで爆弾が破裂し、そうしてあのとき目にした人々の誰かが亡くなったのかも知れません。

平和を!平和の道を探さなくてはいけない。そのためにこの事態と僕は向き合い続けます。
分析を続けます。

続く

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