明日に向けて

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明日に向けて(1262)熊本・九州地震発生から一月、災害対策の抜本的な見直しが必要だ!

2016年05月15日 12時00分00秒 | 明日に向けて(1201~1300)

守田です。(20160515 12:00)

熊本・九州地震から一月が経ちました。
昨日14日、地震発生の午後9時46分に、熊本県益城町では黙とうが行われたそうです。
今回の地震で亡くなられた方はこれまでに49人。あらためて深い哀悼の意を捧げたいと思います。

同時に今宵は今回の地震を振り返り、あらたに分かった知見をおさえ、災害対策の大きな見直しが必要とされていることを訴えたいと思います。
もちろん、あらためて川内原発を即時運転停止を訴えなくてはいけません。

まず14日ののちに「前震」と呼ばれた14日午後9時半過ぎに起こった地震を振り返ります。
ネットにアップされたNHKのリアルタイムのニュース映像をご紹介します。ニュース9放映中に地震報道が入ってきた時のものです。

 緊急地震速報 熊本県熊本地方 最大震度7 発生の瞬間
 https://www.youtube.com/watch?v=1vWdQOiLL44

この6:00ぐらいの画面をみてください。
この地震で九州島全体が揺れたこと、鹿児島県でも震度4を観測していたこと、震度3以上でなら山口県や四国も揺れていたことが分かります。
震源が熊本なので、この地震に「熊本」の名がつくのは間違いではありませんが、しかしこの図からもこの地震は九州全体を揺らしたもので、「熊本・九州地震」とでも呼ぶべきものであることがはっきりとしています。

さて今回の地震に特徴的なことは、過去に観測されたさまざまなデータを大きくうわまわる「想定外」の事態が相次いだことです。
このため原発の問題に限らず、この国の地震対策を、抜本的に見直さなければならないことが私たちに突きつけられることとなったと言えます。
極めて大きな危険性があらわとなったのです。だからこそまた原発はもう全廃すべきだと言えます。

まず地震総数から観ていきましょう。
4月14日から5月14日午後7時までに起こった震度1以上の地震の回数は1440回。
大変な数です。どう大変なのかというと昨年1年間に日本全体で起こった震度1以上に地震総数が1842回だったからです。なんとその約78.2%もの回数がこの一月に熊本・九州で起こったのです。
もちろんこれは観測史上初めてのことです。

さらに14日に震度7の地震が起こり、16日に震度7の地震が起こったこと、震度7の地震が連続したことも観測史上、初のことでした。
マグニチュードでは6.5と7.3と後者の方がはるかに大きかったため、14日の地震が「前震」、16日の地震が「本震」と呼ばれることとなりましたが、このようなことはこれまでなかったのです。

このため熊本では耐震強度の強い住宅も倒れました。現在の耐震設計基準は、震度7に耐えることを求めているものの、2回連続することなど想定してこなかったからです。
同じことがより人口が多いところで起これば、被害はもっと甚大になります。

さらに地震の周期の問題でも重要なことが分かったことが、昨日14日にNHKによって報道されました。

 非常に強い長周期地震動 熊本地震で観測
 NHK NWESWEB 5月14日 19時01分
 http://www3.nhk.or.jp/news/html/20160514/k10010521261000.html

ポイントがどこにあるのかというと、地震は「震度」と呼ばれる強さだけでなく、揺れ方によっても違う被害をもたらします。
この点で重要なのは地震の揺れの周期です。これが1~2秒だと木造家屋にダメージを与えるのですが、3~4秒に延びると、高層建築物に大きなダメージが生じるのです。
こうした揺れのあり方が長周期地震動と呼ばれているわけですが、これほど強い長周期の揺れが観測されたのはこれまた初めてだそうです。
今後、大都市圏などの活断層周辺では対策の検討が必要だと専門家が指摘しているとニュースは告げています。

しかも長周期地震動が140メートルもある29階建ての建築物に深刻なダメージをもたらすこと、高層ビルの倒壊につながる恐れすらあることが明らかにされています。
コンピューターシミュレーションが出てくるのでご覧になった欲しいですが、日本中の高層ビルが点検のし直しと耐震補強を必要としているのです。大変なことです。

また今回の地震は、現代科学では活断層の把握もまたまだまだ不正確にしかできていないこと、地震の発生予測もいたって不十分であることをあらためて私たちに突きつけました。
この点を4月21日の朝日新聞が報じています。

 活断層の長さ、想定以上 熊本地震、地表に「ずれ」
 朝日新聞 香取啓介、木村俊介、小宮山亮磨 瀬川茂子 2016年4月21日10時50分
 http://www.asahi.com/articles/ASJ4M6DZPJ4MULBJ022.html

少し記事を引用してみます。
「布田川区間について政府の地震調査委員会が予測していたのはM7・0の地震だった。調査委が想定していた断層の長さは19キロだったが、実際は30キロ近くが動き、M7・3になった。
 活断層は長いほど地震の規模は大きくなる。断層の東側は活断層の存在が不明だった阿蘇のカルデラ内に延び、西側は隣の区間とされた部分も動いていた。」
「区間を分ける位置は研究者間で議論になっていた。当初の予測はM7・2だったが、地下構造調査などを踏まえて2013年に区間を見直し、M7・0に引き下げられた。
一方、今後30年以内の地震発生確率は、ほぼ0%から0・9%に引き上げられていた。高野―白旗区間については、確率は「不明」とされていた。」

ようするに活断層の把握があまりに過小で、地震の規模もまた著しく過小に評価していたことが分かったのです。
一方で今回の地震で動いた断層帯の30年以内の地震発生確率は「ほぼ0%から0.9%」でした。
実はこれは「やや高い」に分類されるそうなのですが、しかしそれではこのような形での数字的予測に何の意味があるのかといわざるを得ません。数値の設定をも含めて「地震の予知」のあり方自体が問われていると言わざるを得ません。

これらを踏まえて東洋経済オンラインは「地震の予知などできないことを直視せよ」という論文を載せました。

 「地震は予知できない」という事実を直視せよ 国の地震予測地図はまったくアテにならない
 ロバート・ゲラー :東京大学 大学院理学系研究科 教授
 東洋経済オンライン2016年04月28日
 http://toyokeizai.net/articles/-/115836?page=3

ここではあえて3ページ目のアドレスを示しましたが、ここには国の機関である地震調査研究推進本部が、2014年に出した「全国地震動予想図」の上に実際に起こった地震の地点が記入されています。
端的にいって予想頻度が少ないところでばかり起こっていることが分かります。(1990年以降に死者10人以上をもたらした地震)

これらから言えることは、現代の科学水準では地震についてまだまだあまりに少ないことしか分かっていないと言うことです。
しかもこれまで蓄積してきたデータを超えることがこの間、次々と起こってしまっています。
一つに震度7の地震が続けて2度起こったこと。このためあらゆる建物の耐震設計の見直しが必要です。
その上、長周期地震動でもこれまでの観測を上回る揺れが観測されました。このことで高層ビルの耐震設計もまた見直さなければならないことがクローズアップされることとなっています。

この国の地震対策を根本から見直さなければなりません。
同時に地震が起こった時への備えももっと手厚くしなければなりません。
今回もエコノミー症候群で亡くなった方が続いていますが、これは「想定外」の地震被害が続いていながら、それへの備えを強化してこなかった政府の無策によるものでもあることを私たちは見ておく必要があります。

こんな状態なのですから、非常に危険な川内原発を停めるのは当たり前のことです。
いや停めるだけでも足りない。それぞれの原発の燃料プールから使用済み核燃料を降ろすことも急がなくてはなりません。

しかもそれだけでも足りないのです。原発以外にも危険なプラントはたくさんあるからです。
災害対策の抜本的な再編!
それこそがこの国にとって最も重視されなければならないことです。
熊本・九州から私たちが学びとらなければならないことはここにこそあります!

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守田敏也 MORITA Toshiya
[blog] http://blog.goo.ne.jp/tomorrow_2011
[website] http://toshikyoto.com/
[twitter] https://twitter.com/toshikyoto
[facebook] https://www.facebook.com/toshiya.morita.90

[著書]『原発からの命の守り方』(海象社)
http://www.kaizosha.co.jp/HTML/DEKaizo58.html
[共著]『内部被曝』(岩波ブックレット)
https://www.iwanami.co.jp/cgi-bin/isearch?isbn=ISBN978-4-00-270832-4

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1 コメント

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相変わらずいい加減 (mahlergstav)
2016-05-17 16:01:10
2013年6月15日に以下の出だしでコメントしています。
>暇ですね。 (mahlergstav)2013-06-15 11:38:102011
>年の11月か12月ころ、御HPにキュリュムの自発核>分裂についてコメントしたことがあります。


3.11からすでに5年。このコメントから、3年。色々勉強されていらっしゃうようですが、逆効果のようです。

ところで、放射線取扱主任者試験に合格されましたか。3回は、受験機会があったはず。それどころか、マジメに原子力関連の大学院に進学されたら、修了していても不思議ではない。

ATOMICA等、素人が見てわかるようなものではない。

もっと正当なアプローチをすべきです。

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