明日に向けて

福島原発事故・・・ゆっくりと、長く、大量に続く放射能漏れの中で、私たちはいかに生きればよいのか。共に考えましょう。

明日に向けて(1677)原爆と原発、被曝と命と医療の問題を考える(13日に京都市で講演します)

2019年04月09日 23時30分00秒 | 明日に向けて(1501~1700)

守田です(20190409 23:30)

統一地方選後半戦の最中ですが13日に京都市でタイトルに掲げた内容で講演します。 反核京都医師の会第39回定期総会においてです。会員以外でも参加できます。

場所は京都府保険医協会会議室。地下鉄四条、烏丸御池、阪急烏丸駅から徒歩3分です。 Facebookページによる案内を以下からご覧になれます。 https://www.facebook.com/348101998551016/photos/a.365171950177354/2507619805932547/?type=3&theater

● 原爆と原発はつながっている!

今回の講演で明らかにしたいのは第一に原爆と原発のつながりです。

そもそも原子力エネルギーは、原爆製造のために開発されたものです。けして発電のためではありません。 アメリカはウランによって作られた広島原爆とプルトニウムによって作られた長崎原爆を作りました。 いやこの言い方は正確ではない。二つのタイプの原爆を作ったので、最低二カ所は落とす必要があり、広島・長崎が選ばれたのでした。

なぜ二つのタイプを作ったのか。どちらの方が効率がよいか分からなかったからです。 天然界にあるウランは実はほとんど核分裂しません。するのはわずか0.7%のウラン235です。このためこの部分のウランをかき集めました。これを濃縮と言います。そして濃度を限りなく100%に近づけてウラン型原爆を作りました。 ウランに中性子を当てると核分裂と共に再び中性子が2つぐらい飛び出してくる。それが次のウラン235にあたり連鎖反応が一気に起こる。このためウラン235の濃度が高ければ高いだけ一気にすごい分裂の連鎖がおきます。

しかしこの「ウラン濃縮」のためには大変な労力と資金がかかる。どうにかならないかと検討しているうちに核分裂しない残りの99.3%のウラン238に中性子があたると新しい物質が生まれることが分かりました。プルトニウム239です。 プルトニウムはウランよりも核分裂性が高い。ではどうやってたくさん作るのかというと、数パーセントに濃縮したウラン235の核分裂をゆっくりと連鎖させればいい。濃縮といっても残りはウラン238なので次々プルトニウムが生まれる。 このために開発された装置が「原子炉」なのでした。そのため原子炉は「プルトニウム生産炉」とも呼ばれました。このように原発の中心をなす原子炉はもともと人間の大量殺りくを目指した兵器の製造装置なのです。発電用装置なのではありません。

広島・長崎原爆の構造 ネットより

● 最初に作られた原発は原子力潜水艦のモーター

プルトニウムを生産するために作られた原子炉がなぜ発電に使われるようになったのか。実はこれも核戦争体制の産物なのです。 原子炉内では核分裂したウランから中性子が出て次にぶつかるのですが、飛び出してくる中性子はスピードが速くてなかなか次にあたりにくい。そこでスピードを落とす必要があります。減速材が必要です。 同時に炉内では核分裂が連鎖しエネルギーが発生するためものすごい熱を産みだします。これを冷まさなくてはならない。そのために冷却材が必要です。

色々なものが試され、使われましたが、その中で水を使うと減速材にもなり冷却材にもなることが分かりました。しかも水は安価に大量に手に入る。 それで水を炉内に入れたところ当然ですが高温で沸騰し、大量の蒸気が発生するわけです。何かに使えないだろうかということでここにタービンを組み込んだら発電ができたというわけです。 ではこれを何に応用したのかと言うと原子力潜水艦なのです。なぜか。核戦争において重要なのは核兵器の発射装置をどこに置くかです。相手に察知されないことが重要でそのためには潜水艦に設置し、しかも長く潜らせることが重要だったのです。

このためわずかな核燃料で運転を続けられるモーターとして原子力発電装置が開発されました。 つまりこの時点でもプルトニウムを生産するために開発された原子炉は、核戦争を担う兵器のための発電装置として使われたのでしかなかったのでした。原発も人間の大量殺りくを目指した兵器の一部だったのです。 これらを開発しつつ、アメリカ、旧ソ連を軸とする核大国はその後に核実験を繰り返していきました。いかにすればより「効率的」に核分裂連鎖反応を進めるかの実験でそのたびに大量の放射能を地球上にばらまきました。


「コトバンク」より

● Atoms for Peaceという騙し!

こうした中で1954年3月にビキニ環礁で大規模な核実験が行われ、日本の第五福竜丸をはじめ大量の漁船が被曝しました。 このことでようやく日本を中心に核兵器反対、核実験反対の気運が高まり、世界に広がりました。これに危機感を頂いたアメリカは"Atoms for Peace"というスローガンのもと民生用の原子力発電の開発に乗り出しました。 もともと核兵器体系の一部でしかない原子炉と原子力発電を、あたかも核兵器と分離された平和的なエネルギーとして扱い出したのです。

しかし実はここでも軍事的な要請もあったのでした。というのはプルトニウムを作りだすための原子炉の運転には濃縮ウランが必要ですが、このための工場は行程がとても複雑でした。 このため立ち上げるのにとても時間がかかってしまうので、軍事的には稼働させ続け、常に核兵器を製造し続けられることが求められました。 しかしそうすると核兵器製造の必要性よりも多くの原子炉用の濃縮されたウランができてきてしまう。コストも膨大にかかる。このため次々とできてくるウラン燃料の供給先が必要だったのです。こうして作られたのが民生用の原発でした。

つまりAtoms for Peaceには、核兵器に対する批判をかわすために、原子力が平和のために活用できるエネルギーだという騙しを行う目的とともに、核兵器製造のためのコストを回収するためにも新たにウラン燃料の需要を作るための騙しの側面も持っていました。 しかしこれに核実験反対のすごい運動を巻き起こした日本の民衆は騙されてしまいました。社会全体が騙されたと言っていいですが、その象徴の一つが僕が大変尊敬する手塚治虫さんでした。 彼は『鉄腕アトム』という作品を書きました。主人公のアトムの妹はウランちゃん。お兄さんはコバルト君。実は放射性核分裂兄弟姉妹です。まさに「アトムズ・フォー・ピース」の申し子でした。


アトムの登場人物・ロボット ネットより

続く


 

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