守田です。(20140610 22:00)
福島原発に関する東京電力の発表です。
核燃料がメルトダウンし、一体どこにどうあるのか、よく分からなくなっている1号機から3号機の原子炉の中で、2号機の格納容器内に投入している冷却水の水位が、底部からおよそ30センチであることが分かりました。
これまでの想定は60センチ。水位では半分しか水が溜まっていなかったことになります。水は核燃料を冷却する要だから重大問題です。
ただしこのことが把握されたことでただちに原子炉の今すぐの危機が確認されたというわけではありません。内部の温度は35度であり、どこにあるかは分からないものの、核燃料が高熱化している兆候はつかまれてはいないからです。
ただし核燃料が水の中にすべて浸かっているのか、頭を出しているのか。あるいはそもそも本当に格納容器底部にあるのか、もっと潜ってしまっているのか、相変わらず把握できていないことも明らかにされています。
もう少し詳しく観ていきましょう。今回の発表は昨年8月に挿入しようとして失敗した監視計器の再設置作業の中で明らかになったものです。この計器は格納容器に外から差し込んで、下に垂らしていくものですが、昨年8月の投入時に途中で格子状の板にひっかかってしまったのでした。
それをいったん抜き取って再度、投入して下へ下へと送ったところ、格納容器底部まで届き、そこで初めて現在の水位が把握できたというのです。正確には下から15センチのところで水が感知され、35センチではされない。その間の30センチが水位として推定されています。
なぜ30センチなのかというと、格納容器下部には、ドーナツ状の圧力抑制室があり、格納容器からそこにむけたベント管が設置されています。その管の下部が底部から30センチの地点にあり、それより上のものはベント菅に流れて行ってしまうと考えられたということです。
東電より出された説明図を示しますのでご覧下さい。
福島第一原子力発電所2号機原子炉格納容器内 監視計器再設置作業結果
東京電力株式会社 2014年6月9日
http://www.tepco.co.jp//nu/fukushima-np/handouts/2014/images/handouts_140609_05-j.pdf
さて、これまでも述べてきましたが、このような情報に接する時に大事なのは「ああまたか!」と麻痺してしまわないことです。
というかこれだけ長きにわたって「新たにここが壊れていることが分かった」とか「60センチだと思っていたが30センチだった」とか繰り返し伝えられると、危機感が麻痺してしまって当然です。
けして東電がそれを狙ってこうした発表をしているのでなく、実際に、次々と分からなかった事実の判明が続いているのだと思いますが、これはこれからも続くことです。根本的なところでの事態の把握ができておらず、原発がまったくコントロールできていないからです。
ならばこういう情報にはどうやって接すれば良いのでしょうか。大事なのは時系列をきちんと追いかけること、歴史生成的に今、起こっていることを把握することです。そうすると事態が立体的に見えてきます。
福島2号機についてはどうか。まず水位が60センチと把握されていたときに戻る必要がある。この発表がなされたのは2012年3月26日です。そしてそれまではどれぐらいと考えらえていたのかと言うと、なんと3メートルから4メートルという把握だったのです。
このころ投入していた水量は1時間あたり8.8トン。ところがその水はほとんど思ったように溜まってはいなかった。核燃料を冷やしていると思われた水はまったく違うところに行っていた。
どこに行ってしまったのか。ベント管を通って圧力抑制室に流れ込んでいたのです。その先のどこからか漏れ出してしまっているために、水は3メートルも貯まらず、地下水を汚染し続けていたのです。
ところがここで不可解なことも出てくる。当時の東電の発表に基づくNHKニュース解説などを調べてみると、なぜ60センチとされたのかというと、内視鏡での観察が根拠であるとともに、それがベント管下部にあたるとされたからです。以下の記事をご参照ください。
解説:福島第一原発2号機に何が
NHK「かぶん」ブログ 2012年03月27日
http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/600/114583.html
当時のニュースや東電発表を調べてみたのですが、なぜここでベント管下部まで60センチと報道され、今回30センチと報道されたのかよく分かりませんでした。
あるいは単純ミスで後に訂正されているのかもしれませんが、ただ大きくつかんでおくべきことは、2号機はもともと事故から1年間は、水位が3メートルもあると思われていたのにまったくそうではなかったということです。
それで2年前に60センチであると訂正把握されたのですが、今回は30センチになってしまっていた。重要なのは、もしここに核燃料があるのだとしたら、あまりに少なすぎる水位だと思われる点です。
一部の人々が指摘しているように、核燃料はもっと地下にまで潜ってしまっている可能性が高いと言えるのはないでしょうか。反対に、だから30センチでも冷やせているのかもしれない。核燃料からは30センチではないのかもしれない。
しかしそうであれば核燃料はより危険な状態にあることも予測されます。格納容器という遮蔽物の外に出てしまっていることになるからです。
豊富な地下水の流れと接することはないのでしょうか。その場合、水蒸気爆発が起こる可能性はないのでしょうか。おそらく誰も確かなことなど言えないと思うのです。
これまでも述べてきたように、こうした事態を前に私たちは、原発がまったくコントロールなどできていないことをこそきちんと理解し、万が一の事態、事故の拡大、あるいは破局の進行にこそ備えるべきです。
やるべきことは、子どもたちの疎開をはじめ、あらかじめの避難を促進することであり、同時に広域の避難訓練を行うことです。
4号機の燃料棒の取り出しにおける不測な事態、大きな余震の発生・・・だけではなく想像もしないところから危機が起こってしまうかもしれないのです。
なにせ3メートルは水が溜まっていると思われた2号機が60センチしか水がなかった。それに気づいたのが2年前であったわけですが、今度はその水が30センチになっていたのですから。
格納容器は立方体ではないですから水量は容積でいうと半分などではまったくすまないでしょう。予想よりもっとずっと少なかった。それが核燃料を冷やす核心である冷却水の実情なのです。
あまりに多くのことが把握されていない。コントロールなどまったくされていない。だからこそ私たちは万が一の事態に備えるべきです。そのためにはこの危機を見据える胆力、人間的な力のまったくない首相を今すぐにも交代させる必要がある。危機を見つめられず、おそらくは一番最初に自分に嘘をついて事態をごまかし続けているこの首相の存在こそが、危機を何倍にもしている根拠でもあるのですから。
以下、NHKのニュースをご紹介しておきます。
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「2号機」格納容器内の水位は想定の半分
NHK 2014年6月10日 4時13分
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20140610/t10015099621000.html
東京電力福島第一原子力発電所2号機で、溶け落ちた核燃料があるとみられている格納容器内部の水位がおよそ30センチと、これまで考えられていた半分程度であることが分かりました。
東京電力は、内部の温度などから安定して冷却できているとしていますが、詳しい状況は分かっておらず、さらに調べることにしています。
福島第一原発2号機では、事故で溶けた核燃料が原子炉の底を突き破り、格納容器の下に落ちているとみられていますが、詳しい状況は分かっておらず、今月から水位計と温度計を入れる調査が行われています。
その結果、格納容器内部の水位は底からおよそ30センチと、おととしの内視鏡を使った調査から考えられていた60センチの半分程度であることが分かりました。
東京電力は内部の温度が35度前後であることから核燃料は安定して冷却できているとしていますが、すべて水につかっているかは分からないということです。
水位とほぼ同じ高さには、「ベント管」と呼ばれる大きな配管があり、東京電力は水はこの「ベント管」から、その先にある「圧力抑制室」というドーナツ状の設備に流れて行き、この圧力抑制室のどこかにある損傷箇所から建屋の地下などに流出しているとみています。
福島第一原発では、格納容器の損傷箇所を補修し、水を満たしたうえで、核燃料を取り出す計画で、東京電力は核燃料の状況や圧力抑制室の具体的な損傷箇所を詳しく調べることにしてます。
難航する格納容器調査
メルトダウンが起きた1号機から3号機では、汚染水が漏れ出している格納容器の損傷箇所がどこにあるかと、今後、取り出す溶け落ちた核燃料が、どのような状態で存在するかが重要な調査項目です。
このうち、損傷箇所については2号機では、格納容器の下部にあるドーナツ状の圧力抑制室のどこかにあると考えられますが見つかっておらず、1号機と3号機では、水が漏えいしている場所が見つかったものの、ほかにも損傷箇所がある可能性があります。
溶け落ちた核燃料については、3基とも、その一端すら捉えられておらず、カメラを搭載したロボットの投入など、さまざまな方法による調査の準備が進められています。