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今日の筆洗

2019年05月29日 | Weblog

時刻には特有のイメージがある。そう書いても伝わらぬか。こういうことである。たとえば「午後七時」なら家族のにぎやかな夕食を思い浮かべ、「午前一時」なら静けさの中、かすかに聞こえるラジオの深夜放送を想像する。無論、人によって異なるだろうが、その時刻の持つ印象や感触のようなものがある▼「午前七時四十分」を想像してみる。朝の光。すがすがしい空気。通学や通勤の時間帯でもある。「いってらっしゃい」「いってきます」。さて今日はどんな一日になるんだろう。悲しいイメージは浮かばぬ。そういう時刻である▼「午前七時四十分」。悲劇はその時刻に起きた。川崎市でのやりきれぬ事件である。小学校に向かうスクールバスのバス停にいた児童らを男が次々と包丁で刺した▼小学六年生の女の子と、その子とは別の児童の父親一人が亡くなったほか、児童ら十七人がけがを負った▼襲われた子どもたちはそれぞれの家庭で、「いってらっしゃい」「いってきます」を終えて、バス停にいたのだろう。普段ならきっと明るい「午前七時四十分」。それが踏みにじられた▼刺した男も死亡している。何があったのか分からぬ。分かっている残酷な事実は亡くなったその二人には「いってらっしゃい」「いってきます」の朝の時刻も、「おかえり」「ただいま」の夕焼けの時刻も来ないことである。たまらぬ。

 
 

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