Troels Bager - Ina Jeliazkova, USA | Disney 2018 - Professional LAT - F C
Troels Bager Ina Jeliazkova, USA | Disney 2018 - Professional LAT - F PD
なぜ、テロはなくならないのか。アフガニスタンで活動した医師の中村哲さんが、参考人として招かれた国会で発言している。「土壌、根っこの背景からなくしていかないと、ただ、たたけ、たたけというげんこつだけではテロはなくならない」。食えず、人々が追い詰められた状況でテロは起きてきた。なくすためには、「貧困の退治」であると▼一昨年、命を落とすまで、医療や衛生環境の整備などを通じて、長い間、地道にその「根っこ」に向きあった人の貴重な実感であろう。多数の死者を出す爆破テロが首都カブールで起きた。未解決な「土壌」の問題もあるのか、別の要因か。中村さんの言葉が聞きたくなる▼犠牲者には、市民も含まれている。国外を目指す多くの人々が集まった空港付近を狙う卑劣な犯行だった。犯行声明を出した過激派組織「イスラム国」系勢力はタリバンの敵であるらしい。米軍撤退による権力の空白を突き、混乱する国にいっそうの恐怖をもたらした。許しがたい▼米国では撤退の是非や時期などをめぐり、政権に批判が出ている。長年たたいていながら大きなテロが起きた。その動揺もあるかもしれない▼バイデン大統領は報復の意向を示した。米中枢同時テロの報復攻撃が始まり二十年。その出口でまた報復の指示だ▼テロのない国へと向かっているのか。アフガニスタンの道のりである。
東京パラリンピックが開幕した。オリンピックにあってパラリンピックにはないもの。選手へのブーイングもそのひとつではないか。障がいのある選手のドジや失敗を誰もからかったりはしない▼大変な困難の中でがんばっているのだから。そんな思いが「あたたかい目」になるのか。ブーイングや文句を口にする人はまずいない▼前回、六四年の東京パラリンピック開催を巡って「障がい者を見せ物にする気か」という批判が出たそうだ。これもある種の「あたたかい目」だろう。だが、その考え方が間違いだったことは、現在の障がい者スポーツの隆盛を見れば分かる▼ある選手が語っていた。「自分のことは新聞の社会面ではなく、運動面で書いてほしい」。美談の人ではなく競技者として扱って。同情も「あたたかい目」もいらない。そう考える選手がいる▼なるほど、「あたたかい目」はやさしいが、障がい者を特別視する目になっていないか。裏を返せば、障がいのないことが大前提となってしまっている社会の弁解じみた、やさしさなのかもしれぬ▼バリアフリー化が進まない現状がある。気まぐれな「あたたかい目」よりも、意識すべきは同じ人間という一点であろう。誰もが同じように不自由なく暮らせる。そういうあたりまえの社会が求められていることをパラリンピックを機に考えたい。さて、ゲームが始まる。
アイスクリームに食パン、ビールに牛鍋。いずれも日本における発祥の地は横浜である。一八五九年の開港以来、港・ヨコハマは異国文化の流入拠点であり、そこからさまざまなものが全国へと広がった▼横浜発祥のものの多さを自慢する横浜市民なれどカジノだけは「横浜発祥」とはしたくなかったか。横浜市長選。カジノを含む統合型リゾートの誘致に反対する野党系の山中竹春さんがカジノ推進派の現職を破って当選した▼これで横浜に日本初のカジノが来ることはなさそうだが、この地が別のものの「発祥地」となるかもしれない。いうまでもなく、「菅首相離れ」である▼首相が全面支援した自民党所属の小此木八郎さんは山中さんにまるで歯が立たなかった。首相のお膝元、横浜で知名度もある小此木さんが惨敗した事実を見れば、総選挙を控える自民党議員が動揺するのは当然のことだろう。効果を上げぬコロナ対策で不人気の菅さんが首相(自民党総裁)のままでは総選挙は戦えないと考えたくもなる▼一時は菅さんの無投票再選さえささやかれていた九月の自民党総裁選だが、この市長選の結果で潮目は完全に変わった▼<街の灯(あか)りがとてもきれいね>のご当地ソング「ブルー・ライト・ヨコハマ」。菅政権には美しいロマンチックなブルーではなく、危険を知らせる「レッド・ライト・ヨコハマ」がともっている。