小林一茶の<痩蛙(やせがえる)まけるな一茶是(これ)に有(あり)>は一八一六(文化十三)年四月の句で前書きに<むさしの国竹の塚(現在の東京都足立区竹の塚)といふに、蛙たたかひ見ニまかる>とある。雌をめぐる雄の蛙合戦を見て弱そうなカエルを応援する一茶が優しい▼そのカエルの両生類は40%超が絶滅の危機にあるらしい。国連の科学者組織が六日に公表したショッキングな報告書である。これによると世界で百万種の動植物が絶滅の危機にひんしており、その速度は過去一千万年の平均と比較し数十倍から数百倍に上るそうだ▼百万種類の動植物を絶滅に追いやろうとする犯人はだれかといえば、もちろん、人間である。人間の活動が森を消し、陸地を変え、海に影響を与えた結果である。世界の陸地の75%が人間によって、改変された▼<一茶是に有>。自分がここにいて応援しているのだから、負けるな。この問題に関しては、人間<是に有>のせいで動植物を絶滅へと追いやっている。同じ一茶でも<親雀子をかくせとや猫をおふ>が浮かぶ。追い払われるべきは猫ではなく、人間か▼深刻な報告書にも光はある。それは今ならまだ間に合うということだ。そのためには社会、政治、経済などあらゆる分野での大変革が必要となろうが、ともかく手はある▼各国の抜本的な取り組みを期待する。解決のために、人間<是に有>を見せたい。