「天才バカボン」などの赤塚不二夫さんは昭和四十年代、スタッフと編集者による合議制でアイデアを出し合って描いていたそうだ。漫画界に新風をとその結束は固かった▼赤塚さんは締め切りを守る人だったが、なぜか入稿は締め切りギリギリになっていたそうだ。遅らせたのは編集者。斬新な内容で編集長に見せたら描き直しを求められるかもしれぬ。そのため、直したら間に合わない時間まで原稿を手元に置いておいた▼編集者の熱や配慮が作品の新しさの秘密だろうが、こっちはどうも怪しき時間稼ぎか。日米間の貿易協定交渉である。日米首脳会談では議論を加速させることで一致したそうだが、発表は八月になるらしい▼ひっかかるのはトランプ米大統領の「参院選まで待つ」というツイート。日本にとっては厳しい内容になりそうな新協定である。その批判を政府・与党が警戒し、公表を参院選後の八月にしてもらうということだとすれば、それはずるい時間稼ぎである▼交渉の方向性が見えているのなら国民に一刻も早く説明し理解を求める。それが筋である。交渉中を装い、選挙後までは黙っている。それは結婚式の後に実は多額の借金があると、お相手に告白するようなやり方だろう▼大統領への厚遇も参院選後まで待ってもらうためではあるまいな。「シェー!」で「レレレ」で「サンセイのハンタイなのだ」。