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今日の筆洗

2019年07月27日 | Weblog

 日本の女子スポーツ選手の道を切り開いた陸上競技の人見絹枝は、自伝や手紙の中に、レースに向けた思いを書き残している。<涙と血を以(もっ)て練習しました…死をかけて、働いてみます><神様!…ただ一回でよろしゅうございます。私の体に、どうか明日一回走る力を与えてくださいませ…あとはどうなってもかまいません>▼昭和初期に短い生涯を終えた人である。走りを直接見たことはもちろんないが、目にすれば、きっと心動かされたはずである。この身はここで砕けても、勝ちたい、期待に応えたい-。そんな決意を胸にした選手なら、現代でも見る人を感動させるだろう▼こちらは高校野球で驚きの試合である。夏の甲子園を目指す岩手大会決勝で大船渡高が敗れた。高校生レベルをこえた剛速球を投げる三年生、佐々木朗希(ろうき)投手を温存しての敗退だ▼投げすぎによる故障を防ぐためという監督の決断である。あとはどうなっても-と投げるのは今ではないという判断だろう。深く考えさせられ、うなずかされるところは大きい▼高校時代がピークだったかもしれないと思える逸材はいる。自身の夢をえがき、多くの人に喜んでもらえる舞台が米大リーグに及ぶ昨今でもある▼別のやり方があったのではないかという声も上がっている。正解を出すのは容易でない。ルール作りへの大きな一石を投じることになりそうだ。

 
 

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今日の筆洗

2019年07月25日 | Weblog

 シギとハマグリがけんかしているのをさいわいに、漁師が苦もなく両方をつかまえる。中国の故事に由来する「漁夫の利」であるが、イタリアの「二人が争えば、三人目が喜ぶ」のように、似たことわざは、世界のあちこちに存在するという。対立あるところ、利益を狙う三人目が登場するのは、東西を問わず、世の常だからであろうか▼「二匹のタカが争うと、カラスが獲物をもらう」というのも聞いたことがある。旧ソ連のどこかのことわざと記憶している▼土地の領有を主張して、対立する二国をみると、にらみ合う二匹のタカやシギとハマグリを想像してしまう国があるのかもしれない。ロシア軍機が島根県の竹島、韓国名・独島(トクト)周辺で領空侵犯をしたとして韓国軍が警告射撃を行った▼ロシアが狙う利益はなんなのかはっきりしないが、徴用工問題などで日韓の緊張関係がいつになく高まっている時である。両国の対立をあおり、地域の安全保障体制そのものを動揺させたかったといった見方やこの地域でのロシアの存在を示す意図があるとの分析もあるようだ▼三百数十発の警告射撃という異常事態である。日本はロシアと韓国に抗議し、韓国は反発した。狙い通りかは不明ながら、緊張は確かに高まった▼機器の誤作動が原因などとロシア側は韓国に説明したという。首をかしげつつ、無垢(むく)なカラスであることを願う。

 
 

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今日の筆洗

2019年07月19日 | Weblog

人間のものと思えない悲惨な事件はどうしてなくならないのか。ギリシャの神話は、獣をつくりすぎた神が一部を人間につくりかえたため、獣の心を持つ人が存在するようになったのだと説明する。しかし、獣も同じ種の命をこれほど大量に奪おうとはしないだろう。獣に劣る犯罪がまた起きた▼京都アニメーションの放火事件は、被害が大きくなるばかりだ。犠牲者の数は増え続けて、平成以降最悪となってしまったという▼火を付けたと思われる男は、下層で犯行に及んだとみられる。逃げ道をふさぐような手口である。犠牲を大きくするために見える▼下請けを起点に、アニメづくりの世界で、地道に歩んできたのが、京都アニメーションである。時間をかけて技術の高さで定評を築き、若者らの心をとらえた。今日の日本アニメの顔をなすスタジオのひとつでもあるだろう▼アニメーションという言葉には、もともと生命や元気を与えるといった意味がある。平面の世界に生命を吹き込み、物語を通じて人の心に活力を届けるのが、アニメ制作であろうか。昨日も作品に新たな命を吹き込む仕事があの建物の中で行われていたはずだと思うと、また胸が締め付けられる▼犯人と会社の関係の有無さえ不明である。分からないことばかりだが、世の中に想像を超えた蛮行をためらわない人間が、やはりいるという事実が今は重い。

 
 

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