本年最後の小欄、昨年に続いて、落語でおなじみの「山号寺号」という言葉遊びで一年を振り返るとする。比叡山延暦寺というようにお寺の正式な名には山の名=山号が付く。これを借りた言葉遊びで笑っていただこうという試みだが、うまくまとまりますやら▼コロナ禍は今年も続き、<ウイルス拡散・止まらじ>。オミクロン株の拡大も気になるところで来年も<祈る退散・忍の一字>か▼政治の方は不人気だった菅さんがお辞めになり、岸田さんが首相に。顔を代えた効果か、総選挙で自民党は単独過半数を獲得。自民党にとってはホッと<衆院解散・政権無事>か。強引な政治は<目指さん・国民大事>と言ってほしい▼東京五輪・パラリンピックの一年でもあった。それにしてもお金がかかった。活躍した選手には拍手を送る一方、<さんざん・大赤字>と愚痴もこぼしたくなる▼海外スポーツで、日本勢の活躍が目立った年で<大谷さん・賛辞>。もう一つおまけに<松山さん・マスタージ>。失礼、優勝したのは米ゴルフメジャー大会の「マスターズ」▼国際情勢の心配は米中関係で、いがみ合う両国に<もうたくさん・意固地>と、言いたくもなる。この他、眞子さんと小室さんの<一目散・恋路>、人間国宝の死去に<おつかれさん・小三治>が浮かぶ。来年はどんな年になるか。小欄もこれにてお開き。よいお年を。
ある六歳の男の子。自分の父親が自慢だったそうだ。小学校の校長を務める、地元のリーダー。背が高く、ハンサムでもあった▼ある日、男の子は父親と買い物に出かけた。応対した店員は十代とおぼしき白人の女の子。女の子が父親に言った。「何? ボーイ」。黒人男性に対する侮蔑的表現を使った。自慢の父親が黒人というだけで見下された▼その少年も大人になる。三歳の娘と公園のそばを通った。娘は遊具ではしゃぐ子どもを見て自分も乗りたいと言った。できないと言うしかなかった。その公園は白人専用だった▼南アフリカで白人が黒人を差別するアパルトヘイト(人種隔離政策)の撤廃に尽力し、ノーベル平和賞を受賞したデズモンド・ツツ元大主教が亡くなった。九十歳▼父親を侮辱され、娘の願いをかなえられなかった人は反差別運動の先頭に立ち続け、一九九一年のアパルトヘイト撤廃に導いた。自由を求める長い旅の間、脅迫やいやがらせも受けたが、非暴力と寛容の心で立ち向かった。父親をボーイと呼んだ女の子にさえ、誰かにそう教えられてきたのだろうと理解を示す人だった▼憎しみではなく友好的に話し合えば必ず解決できる。そう信じ、それを現実のものとした。「人間は悪を善へと変える可能性を備えている」。人間の善を疑わなかった希望の人が旅立った。今ごろ、自慢の父親がほめている。
SEMIFINAL | Top 15 couples | Russian Championship Amateur Latin 2021
Austin Joson - Nino Dzneladze (USA) Cha Cha | WDC AL Assen
昨日からの大雪で町中は真っ白いです。夜遅く、工場から歩いて帰る道。男は雪の中に犬の足跡が続いているのを見つけました▼こんな雪の夜にどこの犬だろう。男は不思議に思い、足跡を追い掛けることにしました。川沿いの道をしばらく進むと足跡が止まり、雪が踏み荒らされたようになっています。うれしくて踊ったような跡です。「ここはやさしいおばあさんの家だ」。男は思い出しました▼足跡はまだ続いています。今度はずいぶんとはしゃいだようで雪が派手に乱れています。「ああ、ここはハナミズキの木の下だ」。春には白い花を咲かせ、秋には赤い実でみんなを楽しませてくれる。男は思い出しました▼足跡はこんな調子でときどき、立ち止まったり、うれしくて踊ったりしたような跡を残しながら、続いています。男もうれしくなって足跡を追い掛けていきます▼ついに足跡が終わった場所にたどりつきました。よほどうれしかったのでしょう。足跡は今までにないほど踊っています。跳び上がっています▼その足跡の持ち主が誰なのか、男ははっきりと知りました。そこは男の家の前でした。ドアの前にハナミズキの赤い実が置いてあります。つまみ上げると半年前に旅立った犬のにおいがしました。「ありがとう」。雪はまだ降っています。空を見上げると鈴の音と犬のうれしそうな声が確かに聞こえました。