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今日の筆洗

2019年05月04日 | Weblog

 評論家で詩人の吉本隆明さんにも執筆に行き詰まった時期があった。書くのをもうやめようかと悩んだときに、自らの音楽を追求し続けているある音楽家の演奏に感激し、翻意したそうだ▼一九九〇年代の逸話か。時代を代表する知識人の意欲を取り戻させた演奏の主が、遠藤ミチロウさんだ。日本のパンクロックの草分けである。バンド「ザ・スターリン」のリーダーでボーカルだった▼爆竹やブタの内臓や生ごみを客席に投げ付け、ステージで裸になって大暴れしている。デビューした八〇年代、めちゃくちゃなステージで名をはせた。ただ、スキャンダルだけの人ではなかった。攻撃的で重く、文学性も含んだ日本語の歌を組み合わせ、独自の世界をつくった▼特に吉本さんらが絶賛することになる詩は、評価が高い。福島県二本松市出身で、宮沢賢治や寺山修司ら東北の詩人たちの系譜に連なるという声もある▼バンド解散を経て、三十年以上活動してきた。地元が被災した東日本大震災で立ち上がっている。音楽家の大友良英さんらと復興支援の大イベントを成功させた。民謡に新境地も切り開いた。パンクを思わせる絶叫調の政治批判も聞くことができていた▼六十八歳で亡くなった。表舞台での活躍は少なかった人かもしれない。ネットにある後輩ミュージシャンらの言葉の数々に、影響力と哀惜の情の大きさが分かる。

 
 

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