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今日の筆洗

2016年05月31日 | Weblog

 米国の著名な微生物学者ブレイザー博士の好著『失われてゆく、我々の内なる細菌』(山本太郎訳)によると、ヒトの体はおおよそ三十兆個の細胞からなる。では、その体に、どれほどの微生物がすみ着いているか▼何と、百兆個だそうだ。つまり私たちの体は、自前の細胞よりも、はるかに多い微生物で成り立っている。その微生物の多様性は驚くべきもので、遺伝子の総数はヒト遺伝子の百倍以上になるという▼生命のめぐりが幾重にも積み重なり、絡み合う。私たち一人一人の体内には、そういう熱帯雨林のような複雑で豊かな生態系がある、とブレイザー博士は指摘する。しかし、その生態系が危機に瀕(ひん)している、と▼人類が抗生物質を発見して、八十八年。抗生物質は結核なども治す「奇跡の薬」として無数の命を救ってきた。だが今や豚や牛など家畜の成長促進にも使われ、そうした過剰な使用が生態系に異変を起こしている▼抗生物質も効かぬ薬剤耐性菌が次々生まれ、英国で発表された最新の報告書は、このままだと二〇五〇年には強力な耐性菌のため世界で三秒に一人の命が失われるようになると警鐘を鳴らした▼注目は集めなかったが、伊勢志摩サミットでは、抗生物質の使用抑制のための協力強化も確認された。「自分の内なる熱帯雨林」を守るために何ができるか。一人一人が問われる時代が来たのだろう。


今日の筆洗

2016年05月30日 | Weblog

 ある夫婦。夫がある日、自宅の改築計画を持ってきた。今の平屋を三階建てに改築したいという。二、三階をアパートにして家賃収入で将来に備えたい。どうしてもやると意気込んでいる▼余裕がないから、またにしましょうよと妻がなだめると、こんなアイデアを出してきた。ひとまず二階部分を増築する。そのうち景気も良くなって、給料も増えるので、来年四月、三階部分を建設する▼了承したが、二階の増築だけでも家計は苦しい。その上、景気は期待に反して上向かない。このまま三階の建設となれば、わが家は破産する危険もある。妻の涙に仕方がない、三階は当分あきらめるか。そう夫が宣言したとき、あなたが妻ならなんとおっしゃるか▼「その判断は正しいわ。三階の建設を先送りしてくれてありがとう。これでラクになるわね」か。それは相当にお優しい。大概は「あんたの計画がそもそもおかしいのよ」ではないか。皿の一、二枚投げるかもしれない▼安倍首相が二十八日夜、来年四月に予定していた消費税10%への引き上げ時期を二〇一九年十月まで二年半延期する方針を麻生太郎副総理兼財務相らに伝えた。二度目の延期である▼さて心に浮かぶせりふはどれか。「消費税率は来年上がらない。ありがとう」「見事な英断である」か。それとも、「そもそもあなたの経済政策と見通しがおかしいのよ」か。